真夏の夜の夢 #深夜のこっそり話 #1019

パリから戻ってきました。今回は、オートクチュールファッションウィークの取材。なんとも華やかに聞こえますが、実際はあまりの暑さに溶けそうになりながら、石畳を駆けずり回っていました。

さて、オートクチュールといえば、店頭で購入出来るプレタポルテと異なり、顧客の要望のもと、フルオーダーで制作される、言わばファッションのルーツであり最高峰。その値段は、ブランドによって異なるものの、手の込んだイヴニングドレスともなれば、1着で都心のマンションが買えるほどの値がつくものも。もちろんメインの顧客は、各国のロイヤルファミリー、大富豪、そして貴族家系の人たちなのですが、一般庶民の私からすると、彼ら、彼女たちが普段どんな生活を送っているのか、想像すらつきません。ただひとつ確かなのは、オートクチュールは決して博物館で飾られるためのものではないということ。クリエイティブディレクター、デザイナー、アトリエで働くお針子さんたち。彼ら、彼女たちのたゆまぬ努力の先には、それを待ち焦がれるブランドのファン、そして実際にオーダーしてガラパーティーで着用する顧客がいるということです。

オートクチュールと同じ週には、ハイジュエリーの発表会も行われます。今回取材させて頂いたブランドの多くは、発表と同時にその多くが売約済みだったとのこと。担当の方々は、喜びにも、安堵にも、はたまたジャーナリストたちに紹介できる作品が減ってしまったことへの申し訳なさともつかない表情で、そのことを教えてくれました。3億円のジュエリーを即決出来るなんて、羨ましいを通り越して、夢物語みたいですね。

別の日、アルマーニ プリヴェのショールームに行った時のこと。アルマーニのオートクチュールにあたる、アルマーニ プリヴェは、クチュールメゾンの中でも、顧客との距離が極めて近いことで知られているのですが、ショーの翌日に開催された展示会では、顧客の方々が、一点一点丁寧に吟味。担当者曰く、顧客の方の中には、何シーズンか前のパンツに、最新のジャケットを合わせたいとオーダーする人もいるとのこと。消費財としてだけでなく、文化としてファッションを謳歌する。そんな顧客の方々を眺めながら、あぁ、ファッションてなんて素敵なんだろう、と余韻に耽りながら、カメラロールに収めたドレスの動画を見返すのです。