
From flowers to bottle.
専属農園で栽培、収穫されたグラースのジャスミンは隣接する工場ですぐに抽出され、香料となる。高品質の原料から偉大な名香シャネル N°5は作られる。
タイムレスな
魅力を放ち続ける
シャネル N°5 という香り
シャネル N°5が登場したのは1921年。グラースのジャスミンとローズ ドゥ メを中心に80種以上の天然香料と、それらを引き立てまとめる、合成香料「アルデヒド」を初めて大胆に加えた革新的な調香で、瞬く間に世の女性を魅了した。以来100年以上にわたり、愛され続けているフレグランスだ。
いうまでもなく、原料となる花は自然の産物。オリジナルの香りを忠実に再現するという作業は、新しい香りを生み出す以上に、実は調香師にとって労力を要する。栽培・収穫された花のクオリティから調合までのすべてを管理するのが、シャネルの専属調香師オリヴィエ ポルジュだ。先代である父ジャック ポルジュ同様、彼もまたN°5に欠かせないローズ ドゥ メとジャスミンの品質を維持するために、グラースへ足を運ぶ。


「調香師にとって、グラースは真のサヴォアフェールがある場所です」と語るシャネル専属調香師、オリヴィエ ポルジュ
彼は言う。「栽培と収穫はミュル家と確立したパートナーシップがあるので信頼して任せつつ、すべての現状を把握できるように密に連絡を取っています。それにより品質はコントロール可能ですが、変動が大きいのは収穫量です。収穫量が少ない場合も見越して、耕作面積を拡大しました。最近、工場を拡大したのも、そのためです」。
原料のアブソリュートができるまで
-
ジャスミンの花を揮発性溶剤に浸し、上澄み液のみを取り出す
-
これを繰り返しながら蒸留すると、香りを含んだほぼ個体の“コンクリート”(粗抽出物)が得られる
-
“コンクリート”をアルコールに浸して冷却し、それをろ過すると“アブソリュート”(精製品)が抽出される

1kgのアブソリュート(植物から抽出した純度の高い香油)を得るためには、ジャスミンの花700kgが必要。手摘みのため、熟練者でも1日に1.5~2kgを収穫するのがやっとというほど、大変な作業だ