SCENE
香りの印象で選ぶ? それとも好きな都市で選ぶ? 新作をはじめ、魅力あふれる5つの都市のフレグランスをピックアップして、それぞれの香りのインスピレーションをご紹介。さまざまなシーンで自分に寄り添う香りのイメージをふくらませて。
CORIANDRE 39City:Mexico City
今年、新たにコレクションに加わった「コリアンドル 39」。それはメキシコ最大の都市であるメキシコシティの明るく陽気な空気感を閉じ込めた香り。主役となるのは、メキシコ料理に欠かせないハーブ「シラントロ」、つまりコリアンダーだ。日差しが照りつける日中、木陰で冷たいドリンクを飲みながら、のんびりと涼を楽しむ。そんなリラクシングなひとときを映し出すのは、コリアンダーとライムが織りなす、フレッシュで爽快にしてハッピーな気分を誘う香り。やがてグリーンなニュアンスが顔をのぞかせ、チルなムードを高めていく。ゆったりと過ごしたい休日の朝、あるいはストレスフルでこわばりがちな心を解きほぐしたいと感じたときは、この幸福な香りを味方につけて。
CEDRAT 37City:Berlin
ジューシーでわずかに苦みを感じるセドラと、ピリッとしたジンジャーが弾けるオープニング。すがすがしくキリッとした香り立ちに少し遅れて、フルーティでやみつきになるような甘さを感じさせる、繊細なバランスが秀逸な「セドラ 37」。ル ラボならではの、センシュアルな調香の技を駆使して、奥底から次第にウッド、パウダリーなムスク、そして豊かなアンバーグリスのノートが湧き上がってくる。激動の20世紀を経て、ヨーロッパのアートシーンを牽引するクリエイティビティにあふれる、自由なベルリンの情景が脳裏を駆け巡る。喜びに満ち、たとえ雨が降っていようとも、さんさんと輝くばかりに自由に。心を軽やかに解放したいなら、この香りをまとって出かけてみては。凛とした最初の香り立ちは、1日の始まりに背中を押してポジティブに導き、温かみのある余韻は「自分らしくいればいいんだよ」とささやいてくれるはず。
MOUSSE DE CHENE 30City:Amsterdam
本来は湿り気のあるモスと重たい印象のパチュリをベースに響かせながら、気負わず透明感すらある印象なのは、そのふたつを際立たせる「合成ブースター」、クリスタルモスとクリアウッドのなせる業。さらにシナモン、ピメントベイオイル、ピンクペッパーをスパイスとして効かせることで、タイムレスなエレガンスを薫らせて。「ムース ド シェーヌ 30」のクラシカルかつ進歩的なネオシプレーのノートは、歴史を感じさせる風景と、偏見のないリベラルな思想・文化をもつ都市、アムステルダムそのもの。市の中心部にはハウスボートが浮かぶ運河が張り巡らされ、三角屋根の細長い家が建ち並ぶ、その独特の光が思い浮かぶ。伝統に裏付けられた安心感と、サプライズや緊張感をあわせもつその香りには、クセになる不思議な吸引力が秘められている。この香りをつけこなせば、仕事もプライベートも、モードなスタイルでさらりとこなす、スマートで知的な自分を演出できるはず。
POIVRE 23City:London
第二次世界大戦後、英国の旧植民地から多くの移民が集まってきたロンドン。それゆえに美味しいインド料理店なども多く、スパイスはロンドンっ子たちの日常に根づいているといえる。そんなロンドンのために生まれた「ポアブル 23」は、ル ラボの「スパイスの中のスパイスであるペッパーに、その価値にふさわしく注目を集めるようなポジションを与えたい」という想いを昇華させた香り。スプレーした瞬間、ペッパーの刺激的な香りが広がる。それに続くのは、オリエンタルで温かみのあるインセンスのような香りで、次第にウッディなニュアンスを強めていく。わずかにスパイスのニュアンスも残しながら、奥で存在感を強めていくのが、まろやかで甘いバニラを感じる芳醇なアンバーノートだ。魅惑的で、肌と溶け合うとひときわ薫り高く移ろい、持続力も長い「ポアブル 23」は、今回紹介する香りの中でもっともセンシュアル。少しずつ夜が長くなる夏から秋へ、季節の変化とともに香りの変化も楽しみたい。
GAIAC 10City:Tokyo
けぶるようなウッディノートとともに、まずふっと立ち上るのはほのかな甘み。とても硬質な樹木で、原産地では「神聖な木」とも呼ばれるガイアック ウッドを核として、4種のムスクのあたたかく柔らかな甘さに、ほのかなシダーとオリバナムをプラス。計10種の香料で構成された、シンプルで緊張感のあるフォーミュラの「ガイアック 10」。この香りは東京という種々雑多なものが入り混じる都市の、どこを切り取ったのだろう? と考えてしまうが、実はその印象が、人によって大きく変わるのも「ガイアック 10」の魅力のひとつ。実態がつかみにくいこの都市のために生まれた香りは、穏やかでやわらかくも、凛としてクールにも、まとう人によってその印象を変える。「これをつけると、なんだか自分をハグしたくなる」と言った人がいたけれど、肌とひとつになって身近に感じるこの香りは、まさに自分自身のために。朝から夜まで、どんな気分、どんなシーンでも寄り添ってくれる。自分のシグネチャー フレグランスにふさわしい一本。