全米が望んでいたスーパーウーマン! 初の女性副大統領カマラ・ハリスの軌跡

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インド出身の母とジャマイカ出身の父を持つ、移民二世のアメリカ人として育ったハリス氏。「母は自分と妹のマヤが自信を持って、誇り高き黒人女性に成長するよう心がけていた」と語る通り、幼少期から黒人バプテスト教会に通いつつ、もう一つのルーツであるヒンズー教寺院の礼拝にも参加。母の出身地であるインドにも度々行くなど、多様な文化に触れて育った。
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名前の「カマラ」は、母の母国インドで“神秘的な花”として讃えられる蓮を意味し、富と繁栄を象徴するヒンドゥー教の女神ラクシュミーの別名でもある。ミドルネームであるデヴィ(Devi)も同じくヒンドゥー教では女神の意味を持ち、自然の繁栄をもたらす壮大な女性を象徴。母シャマラ(享年70)の、「パワフルな女性を女神として称える文化をカマラの中に育てたい」という願いが込められているそう。
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「私の祖父母は偉大。祖父はインドの独立のために戦い、祖母はインドの貧困地を回り、避妊の仕方など性教育を教えてきた。彼らの情熱が私たちの未来をより良いものにし、今の私に導いてくれたわ」とハリス氏。そんな祖父母からの勧めもあり、成長するにつれ、自然と公職を目指すように。
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がん研究者である母と、経済学者である父ドナルド(82)の出会いは、大学で行われた公民権運動に関する研究がきっかけ。「両親はアフリカ系アメリカ人公民権運動の活動家でもあり、私は彼らの活動を見て育った。だから幼い頃から、この国の可能性を信じ、行動しなくてはいけないと思っていたわ。様々な年齢、肌色、宗教、バックグラウンドの人が戦う姿を見てきたから」と、両親の意思を受け継いでいることを明らかに。
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カリフォルニア州オークランドで育ったハリス氏が幼い頃憧れていたのは、サーグッド・マーシャル(享年84)、コンスタンス・ベイカー・モトリー、チャールズ・ハミルトン・ヒューストン(享年54)ら、市民運動に声をあげたリーダーたち。彼らの姿から、自分、そして人を守るために声を上げることを恐れない姿勢を学んだそう。
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政治学と経済学を学ぶため、全米屈指の名門黒人大学であるハワード大学へ。学校生活では女友達と政治やファッション、ゴシップについてディベートするのが日課で、学内のディベートチームにも参加するように。大多数の男子生徒が大きな身振りで主張をする中、彼女は全く怯みもせず、自身の主張を続けたそう。どんな相手でも動じない、お得意のディベートスタイルは、この時代に培われた賜物!
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「法律家は、弱者や声を上げられない人の代わりに声を上げる能力と責任をあわせもつ」と考え、法律家の道へ進むためカリフォルニア大学ヘイスティングス・ロースクールに入学。二度目の挑戦で、見事、司法試験に合格!
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弁護士資格を得た後は、カリフォルニア州アラメダ郡地方検事事務所で働き始める。地方検事のアシスタント時代は子供への性的虐待問題に取り組み、地方検事として独り立ちした際は殺人事件や強盗事件を担当。ギャングによる抗争やドラッグ・トラフィッキング、性暴力を多数取り締まったことで、「タフな女性」として注目されることに。
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2003年には黒人女性初となるサンフランシスコ地方検事に就任。2004年に起きたサンフランシスコ市警の警官殉職事件では、死刑制度に反対する姿勢から、死刑を求刑しないことを宣言。自身を「進歩的な検察官」と表現するように、最初の3年間でサンフランシスコ地域の有罪判決率を52%から67%に上昇させ、ドラッグ使用者に高校のディプロマと就職斡旋のプログラムを提供するなど、独自の政策を打ち出す。
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2011年、女性初、アフリカ系およびインド系としても初のカリフォルニア州司法長官になるという快挙を達成。2012年には、サブプライム住宅ローン危機でマイホームを失った人たちのため、全米の司法長官らと協力し、大手銀行や住宅ローン会社に立ち向かって多額の賠償金を勝ち取ることに成功。さらに同性婚を禁止するカリフォルニア州法を修正するなど、LGBTQ+コミュニティのサポートにも大きく貢献をした。
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2014年、企業向けの弁護士を務めるダグラス・エムホフ氏(56)と結婚。同時に、ダグラス氏と前妻の息子コール(25)&娘エラ(21)の継母に。しかしハリス氏も子どもたちも「ステップマム(義理のお母さん)」という呼び名がしっくりこず、「ママ」+「カマラ」=「ママラ」という愛称が誕生! またカマラ氏は夫の前パートナーであり、子どもたちの母であるカースティン氏とも仲が良いそう。エラが出場するスポーツ大会も一緒に観戦するなど、現代らしい家族の在り方を体現。
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2017年からカリフォルニア州選出の上院議員に。黒人女性がアメリカで連邦上院議員になるのは、史上二人目であり、インド系アメリカ人としては初。就任するや否や、検事時代に培われた鋭い弁舌でラインジングスターと期待され、同年行われたロシア疑惑を巡っての公聴会で早速本領発揮。元ジェフ・セッションズ司法長官(73)に向かって間髪入れずに鋭い質問を投げかけ、動揺させた動画がSNSで大人気となり、ハリス氏の名が一気にアメリカ全土に知れ渡ることに。
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どれだけ地位と名声が上がっても、自分のルーツである“声を上げる”ことをやめないカマラ氏。2017年のドナルド・トランプ大統領(74)の就任翌日に行われたウィメンズマーチではスピーチを行い、イスラム圏出身者の入国を制限する“ムスリム・バン”に対してはデモに参加するだけでなく、多数メディアに出演してその不当性を世界に訴求。また、2020年には白人警官が黒人男性を暴行死させた事件で広がった抗議運動「ブラック・ライヴズ・マター(Black Lives Matter=黒人の命は大切だ)」にも参加し、警察組織の改革の必要性を何度も主張している。
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妹のマヤ・ハリス(53)もスタンフォード大学で法律を学び、29歳の時にはカリフォルニアにあるロースクール「Lincoln Law School」の校長に任命されたという異例の経歴の持ち主。そんなマヤの娘、ミーナ・ハリス(36)は、「望むことは何でもできるということを教えてくれた」と伯母であるカマラ氏をロールモデルとして大尊敬。ミーナはハリス氏同様、法曹界に身を置きながら、人権活動を行ったり、2020年6月にはカマラとマヤの生い立ちを絵本にした『Kamala and Maya's Big Idea』を出版したり、8月はアパレルブランドを立ち上げるなど、マルチに活躍。
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2019年1月には、子ども向けのイラスト入り書籍『Superheroes Are Everywhere』と、自身のこれまでの人生を語った回顧録『The Truths We Hold: An American Journey』を発売。2020年11月に副大統領就任が決定すると、この2冊を含め、彼女に関連する書籍が4冊も米国アマゾンのベストセラーランキング入り。出版界にもセンセーションを巻き起こした。
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2019年1月、翌年の大統領選挙に立候補することを発表。これまで出身や肌の色で政策やすべきことが決められていた政治の在り方に対し、「私は私。(私をカテゴリーにはめたい人は)迷うかもしれないけれど、私はそんなこと気にしない」と選挙キャンペーンも自身のやり方と意思を貫くことを宣言。
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民主党の大統領候補予備選の第一回討論会では、人種隔離政策をなくすために行われた生徒のバス通学について、批判的な態度を見せたバイデン氏を攻撃。彼をあたふたさせたことで、改めて、彼女の有能ぶりと強さを世界中に知らしめる事に成功。残念ながら大統領候補から外れるも、彼女の能力と人々を思う熱意が伝わり、2020年8月には大統領候補になったバイデン氏から、副大統領候補として指名されることに。
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多くの女性議員がハイヒールを履く中で、選挙キャンペーンであろうと舞台であろうと、自身の大好きなスニーカースタイルを死守。特にお気に入りは「黒もレザーも、白も、紐ありも紐なしもあるし、暑い日用、寒い日用、パンツスーツに合うウェッジソールも持ってる」と語るほどのコレクションを誇るコンバースのチャックテイラー。決して気取らず、誰もが身近に感じられるファッションも、彼女のこだわりのひとつ。
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2020年11月7日(現地時間)、バイデン氏の当選が確実となり、ハリス氏も女性として初、またアフリカ系・アジア系としても初の副大統領に就任することが確実に。そして勝利確定の演説では「私が最初の女性の副大統領になるかもしれませんが、最後ではありません。これを見ている全ての幼き女の子たちが、この国は可能性に満ちた国だと理解するからです」と明言。改めて、女性やあるゆる人種、貧困層など、助けを必要とする全ての人たちのために政策に取り組むことを約束した。
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2020年12月に米経済誌『フォーブス』が発表した、2020年の「世界で最も影響力のある女性100人」ランキングにて、昨年のランク外から一気に3位に躍り出たハリス氏。その理由は、上院議員から女性初の次期米副大統領と政界を急速に駆け上がった業績のみならず、常に女性を鼓舞してきた姿に対する高い評価も。 特に副大統領候補討論会で、自身の発言を遮ろうとしたマイク・ペンス副大統領(61)に対し、「私が発言中です」とピシャリ。これまで、あらゆる場面で沈黙させられていた女性たちに大きな勇気を与えた。そんなタフさ、実力、そして自信たっぷりのハリス氏だからこそ、4年後は必ず、もうひとつの“ガラスの天井”=大統領選を破ると信じる人々が後を絶たない。

text : Mariko Peeling

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