“レオ様再来”俳優の怪演も! “わからないが面白い”、サイコスリラーの新作ドラマ『リーシーの物語』の見どころを紹介

映画・ドラマともに多様化するスリラー作品。Apple TV+のオリジナルドラマとして、6月4日より配信がはじまった、『リーシーの物語』も、その独特の世界観で異彩を放っています。スティーブン・キングの作品のなかでも最も難解といわれ、実写化は難しいと言われた原作が、どのような仕立てとなっているのか。スリラー映画に欠かせない悪役を、かつて“レオ様の再来”といわれた、デイン・デハーンが快演するなど、その見どころを紹介します。物語は毎週金曜更新で現在第5話まで配信済み。今からでも十分“リアタイ”で楽しめます!

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STORY
スティーブン・キング原作のスリラー。未亡人のリーシー(ジュリアン・ムーア)が遭遇する不穏な出来事の数々が、作家だった亡き夫スコット(クライブ・オーウェン)との結婚生活の記憶と、彼を苦しめていた闇を蘇らせる。

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一日の終わりを、ワインとショコラとドラマで締めくくるのが愉悦のとき。“SATC”よりゴシップガール派。映像美と緻密な脚本ものが好物。最近は動画配信サービスのオリジナル作品のチェックに余念がない。作品でいうと、Netflix『ザ・クラウン』、Apple TV+ 『ザ・モーニングショー』などがお気に入り。ドラマに出てきた名台詞をコツコツとしたためていて、いつかどこかでアウトプットするのがささやかな目標。

スティーブン・キングの最難解小説を、一流スタッフが映像化

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『リーシーの物語(原題:Lisey’s Story)』は、スティーブン・キングの作品のなかでも、最も難解といわれる作品。その実写化に、Apple TV+が踏み切り話題に。『ジャッキー/ファーストレディ 最後の使命』のパブロ・ララインを監督に迎え、主演はアカデミー賞俳優のジュリアン・ムーア、制作総指揮は『スター・ウォーズ』でおなじみ、ハリウッドのヒットメーカー J・J・エイブラムスが務めるという贅沢仕様。さらに、スティーブン・キング自らが脚本を執筆(あまりの難解さに自身が書くしかなかったとの噂も!?)。映像化が難しいと言われた物語の世界観を再現しながら、味わい深いサイコスリラーに仕立てています。

超難解といわれる原作、私は未読ですが、個人的な感想としては実写になってもよくわかりません(笑)。この“わからない感じ”が、独特で風変わりなサイコスリラー作品の恐怖感を底上げるするスパイスなのかもしれず、そしてそれが作品の最大の魅力です。

悪役を演じるのは、“レオ様の再来”デイン・デハーン

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このドラマを観るトリガーとなったのは、悪役をデイン・デハーンが演じること。“レオ様の再来”といわれる、ブロンドヘアとブルーアイが、「THE・美少年」といえる見た目で一躍人気に。ファッション好きなら、「あれ、どこかで見たような」と思う人もいるでしょう。そう、過去にプラダのメンズモデルとして、アンニュイで引き込まれるような美貌を放っていました。

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こちらで石川三千花さんも述べているように、“デハーンのデコっぱち問題”ですが、本作では、何かふっきれたのか、惜しげもないオールバックで登場します(笑)。

肝心の演技のほうもおでこの広さに比例して(?)上々。亡き夫で作家スコットを崇拝する狂信的なファンとして、その妻で主人公のリーシーを追い詰める悪役ジムを演じるのですが、常軌を逸した怪演がはまりにはまってます。リーシーを軟禁しはじめたあたりから救いようのない恐怖が押し寄せ、観る者の心をしっかり摩耗させます。美しい人がおかしくなるのはある種のホラーだなと、半目で(残忍なシーンなので)観ながら思いました。ちなみに、デイン・デハーンのインスタグラムは、家族愛に満ちた写真であふれています。「あれは演技、フィクションの世界」と心を落ち着けることができますよ(笑)。

心の耐性を求められる、生々しくリアルな暴力シーン

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物語は、リーシーの夫で作家のスコットが、何物かに狙撃されるところから始まります。その犯人に立ち向かうリーシーの凶器はスコップ(!)と地味ですが、目を覆いたくなる反撃シーンが繰り広げられます。幻覚におびえるリーシーの姉アマンダが繰り返す自傷行為も、詳細の記述は避けますが、冷や汗指数高めのシーン。さらに、フラッシュバックのように差し込まれるリーシーの夫スコットの子供時代、暴力的な父親から受ける虐待シーンも壮絶なことこのうえない。

今作品の暴力シーンは、冒頭のスコップでの顔面攻撃然り、コップを割って素手で握りつぶしたり、窓ガラスを素手で割ったりするなど、どれも生々しくてリアル。暴力描写は直接的だったり、視聴者の想像力に委ねたり。とてつもなくしんどくて、何かを試されているようです(笑)。追い打ちをかけるのは、美しきデイン・デハーンが演じる美しき悪人ジム。彼が、リーシーを軟禁し、ピザカッターを手に持ったときはもう嫌な予感しかしませんでした。どう使われたのかは、第3話にて……。

Don't think, feel. 映像から感じよう

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現在と異世界。現在と過去が、何の前触れもなくスクランブルされていく本作。ときには主人公リーシーの、あるときにはリーシーの夫スコットの、またあるときにはリーシーの姉のといった具合で、登場人物ごとに現在と過去、現実と異世界があり、それが何の伏線もフラグもなく、突如差し込まれたり切り替わったりするものだから、最初はついていくのに大変でした。はい。かなり不親切です。

実のところ、2話まで観てわけがわからなすぎて、もう観るのをやめようと思ったんですよね。ついてこられるやつだけついてこいといった具合で不親切に感じてしまったんです。ところが2話が終わって、自動再生がオンになっていて3話がはじまり惰性で観ていたら、ぐんぐん引き込まれていきました。3話目あたりから、いわゆる点と点が結びついてきます。

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謎めいた台詞も多く物語の展開もややこしいので、理解に苦しみ最初はちょくちょく巻き戻しながら観ていましたがある程度の段階で察しました。この作品は、小説としてでななく、映像作品として楽しむものだと。頭で考えるのではなく感じる映画なのだと。きっと制作陣もこの独特の幻想的な世界観を映像化することに力を注いでいるはず。視覚情報から得られるものをシンプルに感じてみようと思ってからは、より深く作品を楽しめるようになったと思います。

スティーブン・キングが「私が好きなのは、ある日突然人生が一変し、困難に直面する善良な人々を描いた物語だ」と、Apple TV+で述べているのを思い出し、その真髄が体感できるのが本作だと思います。

“初見組”ならではの、鑑賞の醍醐味を味わえる

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2021年6月4日に放映開始し、毎週金曜更新。現在(2021年7月1日)、第5話まで配信済みです。大きなプロモーション活動も特になく、まだそれほど話題になっていないというのが正直なところ。その分、SNSなどで発信されるレビューに振り回されることなく、難解な作品と自分ならではのペースで向き合えるというメリットも。

初見組として盛り上がりたいときは、投稿数の多い英語のレビューサイトやコミュニティがおすすめです。自分では気がつかなかった思わぬ伏線や、それぞれの解釈を知るのは、ドラマ鑑賞のアフターとしての楽しみ。謎が多い作品だけに、みなの発想も枠に囚われることがなく豊かです。

この感じ、何だか懐かしいなと思い出したのは、私が海外ドラマを好きになるきっかけとなった作品『ツイン・ピークス』。作品の奇抜さはもちろん、共通するのはその“わからなさ”。その分、視聴者の解釈や見解、謎解きの解説なども多様に富み、それらを知ることでひとつの作品を多角的に楽しめてハマりました。今後の盛り上がりに期待したいです!

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