鹿の角を持つ少年が辿る、パンデミック後の世界。Netflixで話題の新作ドラマ『スイート・トゥース』の面白さを検証!

2021年6月4日に配信開始、瞬く間に話題となったNetflixオリジナルの新作ドラマ『スイート・トゥース: 鹿の角を持つ少年』。動物と人間のハイブリッドの主人公が可愛い!と見た目に惹きつけられるも、描かれる世界はパンデミック後の終末世界……。様々な感情を揺さぶられる濃密なドラマが詰まったシーズン1をいち早くレビュー。

原作は、ジェフ・レミアによるDCコミックス。ワーナー・ブラザース制作で、ロバート・ダウニー・Jrとスーザン・ダウニー夫妻が制作総指揮と、豪華な布陣。絶賛配信中のシーズン1より見どころをピックアップしてお届けします。作品と併せてぜひチェックを!
※ネタバレありなので注意!※

Netflixオリジナルシリーズ『スイート・トゥース: 鹿の角を持つ少年』独占配信中


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主人公ガスが、どこまでもチャーミング!

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主人公ガスを演じるのは、クリスチャン・コンヴェリー​​。ブロンドのカーリーヘアに愛くるしい表情がたまらなくキュート! 鹿と人間の「ハイブリッド」という設定で、鹿の角と耳が。でもその姿は、恐ろしいというより、精霊のようなオーラがあります。

神話に出てきそうなこの美しさはティモシー・シャラメとかぶるなと思っていたら、『ビューティフル・ボーイ』でティモシーが演じる主人公の弟役として出演していました!

最近Netflixの公式YouTubeチェンネルで公開されたNG集でも、お茶目でキュートなクリスチャンを見ることができます。なお、感情の起伏によって上下にゆれるガスの耳。作中では、ガスの感情を表現する大事な演出ですが、CGではないとのことにびっくり。クリスチャンのインスタグラムにもオフショットが盛りだくさんで、こちらももれなくキュート!

主人公ガスは、約10年もの間、森の中で隠れて暮らしていたこともあり、無邪気でわがままな側面も。好奇心旺盛で勝手に行動するなど、道中に幾度も旅の仲間を危険にさらして、「おい!」とツッコみたくなる場面が多々ありますが、愛嬌満点の笑顔がすべてをリカバーしてくれます(笑)。今年のハロウィンは、ガスに扮するキッズセレブが見られるかも? いまから期待大です。

序章に過ぎない、シーズン1

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シーズン1の概要を一言で表すと、主人公ガスによる『母をたずねて三千里』(笑)。元はハイブリッドを捕獲していたビッグマンと、ハイブリッドを人間から守ろうとしていた武装集団でリーダーをしていたベアが擦った揉んだのあとに仲間入り。ガスと3人で、ガスの母がいたというコロラドの地までの旅路が主な軸です。

それとは別に、いくつかのサイドストーリーが展開されます。豚と人間のハイブリッドの少女ウェンディと彼女を匿う母親代わりのエイミー。アボット将軍率いる、ハイブリッドを駆逐しようとする軍組織。Sick(作中で「H5G9ウイルス」と呼ばれる伝染病)を患ってしまった妻を助けるため、ハイブリッドの人体実験に関わりそうになる医師、シン。

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それら複数の物語がシーズン1のクライマックス、7・8話あたりで徐々に結びついてきます。さらに、主人公ガスのまさかの出自も明かされるなど、怒濤の展開。だれることなく足早に駆け抜けたシーズン1。この作品を通して伝えたいメッセージやハイライトはもっと先にありそうで、そのための序章に過ぎないんだというような終わり方。シーズン2の配信は明らかになっていませんが、すでに待ちきれません!

コロナ禍に撮影されたパンデミック映画が、教えてくれること

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この作品が撮影されたのはコロナ禍の、2020年。住民がマスク(医療用ではなく、バリエーション豊富なのがリアル)を携帯していたり、ソーシャル・ディスタンスを促す看板があったりと、演出もどことなく「今」を彷彿とさせます。集団的損失の後に訪れるリスクを如実につきだす絵面は、コロナ以前だったらここまで感情移入して観ることもなかったような気がします。パンデミック後の社会に訪れるかもしれない、人間としてのバランスを欠いた危うさ、脆さを予言するかのような物語でもあり、そこが一番観ていて恐怖を感じました。

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主人公ガスの物語のほかに、パラレルで進む幾多の物語は、ハイブリッドを守る側と、追う側にわけることができます。前者は異なる生物同士で信頼関係を構築していく一方、後者は人間同士で嫌疑をかけ合っていく……。

作中にちりばめられる、「信じる」「家族」といったキーワード。その真意と解釈を今一度、自身に問いかける機会になった作品です。

やさしくも恐ろしい、パンデミック後の世界の描き方

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終末世界、パンデミック後の世界を描いた作品といえば、『ウォーキング・デッド』シリーズや、以前こちらで紹介した『スタンド』がありますが、この作品のムードは独特。

全体にストーリーブック仕立てで(ジェームズ・ブローリンのナレーションが最高すぎます!)、ガスをとりまく世界は、終末物語ながらエッジが削られソフト。一方、ガスが登場しないサイドストーリーのほうは、ハイブリッドが人体実験にさらされたり、アボット将軍率いる集団が暴力にものをいわせるなど、観ていてカラダが硬直してしまうシーンが多々あるのですが、直接的に描写されません。

子供でも観られる作品にしあげたかったという意図があるのでは?という意見をレビューサイトで見ましたが、痛々しいシーンを観るのが苦手な人(私のような)には救い。ただ、断片的な情報に留まり想像を視聴者に委ねる分、かえって恐怖が増しました。

何よりも身の毛がよだったのが、生き残った人たちが住む街でのシーン。感染を疑われた人物がその場で大きなラップみたいなものでぐるぐる巻きにされ、家ごと焼き殺される場面です。それが人間たちの「ルール」として、ごく当たり前のように行われる様は、フィクションとはいえ、さまざまな示唆を感じずにはいられませんでした。パニックになったとき、何を軸に自分を保てばいいのか、いろいろ考えるきっかけになります。

ワーナー作品は裏切らない

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このドラマを観るにあたり、大きく興味をひかれたのは、ワーナー・ブラザース制作だということ。ワーナーといえば、『ハリー・ポッター』や『ワンダーウーマン』『バットマン』など、ファンタジー小説やコミックの実写版で定評があります。ワーナー ブラザース ジャパンにおいては、『るろうに剣心』シリーズ、『銀魂』シリーズも制作していますね。

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今作品の舞台はアメリカですが、撮影はニュージーランドで行われたようです。本作品も、映画さながらのスケールを感じます。ファンタジー要素も多いなか、非現実的な衣装やCGなどを用いても決してチープにならないのがワーナークオリティ。

全くの余談ですが、『クリント・イーストウッドが語る ワーナー映画の歴史』というドキュメンタリーがありまして、そのなかでワーナーの関係者が「テレビでは観られないものを映画で創る」といった思いを述べてことを思いだしました。配信ドラマがひとつのメディアとして確立した今、ドラマをフィールドにワーナーが何を仕掛けていくのか。そのような視点で今作品を観るのもまた面白いですよ。

STORY
鹿と人間のハイブリッドの少年ガスは、父親に連れられ、森の奥深くで密かに暮らしていた。ある日、父親が疫病により命を落とす。フェンスを超えて森から出るなとの父親との約束を守り、一人で暮らしていたガスだったが、外の世界からやってきたビッグマン、ジェパードと知り合い、母親探しの旅に出ることになるが……。

【海外ドラマ ナビゲーター】
エディターR

一日の終わりを、ワインとショコラとドラマで締めくくるのが愉悦のとき。“SATC”よりゴシップガール派。映像美と緻密な脚本ものが好物。最近は動画配信サービスのオリジナル作品のチェックに余念がない。作品でいうと、Netflix『ザ・クラウン』、Apple TV+ 『ザ・モーニングショー』などがお気に入り。ドラマに出てきた名台詞をコツコツとしたためていて、いつかどこかでアウトプットするのがささやかな目標。

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