『バトル・オブ・ザ・セクシーズ』は、いまも続く女性の闘い

(C)2018 Twentieth Century Fox
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連日、ワールドカップ漬けです。でもウィンブルドンも見たいなー、両方見てたら仕事ができなくなってしまう……と悩んだりも。チーム競技、個人競技の違いはあれど、サッカーもテニスもメンタル面がはっきりわかるところが好き。強いアスリートは、メンタルが強いのです。ビリー・ジーン・キング、日本では「キング夫人」として知られた彼女は、ウィンブルドンで20タイトルの最多記録を持つテニス選手。映画『バトル・オブ・ザ・セクシーズ』は、1973年のある試合をめぐって彼女がいかに闘ったのかを追うドラマです。

この試合については最初、2013年に公開された同名のドキュメンタリーで知って驚きました。当時世界王者だった彼女に、元世界王者のボビー・リッグスが「男と女、どっちが強いか」に決着をつけるため試合を申し込んだというもの。ただそんな表舞台の筋書きよりも興味深かったのが、70年代のウーマン・リブを背景にした全米テニス協会との争いや、ビリー・ジーン・キングの私生活で起きていたこと。映画ではその部分を掘り下げ、彼女が女性との恋に悩み、ほかの女性プロ選手と共闘する姿をていねいに描いています。ビリー・ジーンを演じるのはエマ・ストーン。

この出来事がきっかけでさまざまなことが変わり、各大会で男女の賞金が同額になったりもしたのですが、私が思い出したのは昨年のウィンブルドンでの騒動。BBC放送で試合の解説をしていた元男子王者、ジョン・マッケンローが女子テニス界のスーパースター、セリーナ・ウィリアムズがもし男子ツアーに参加したら、「世界ランキングは700位くらいだろう」と発言したのです。さらにはBBCがジョン・マッケンローに支払ったギャラが、やはり解説者の元女子王者、マルチナ・ナブラチロワの10倍だったことが発覚。現代でも、まったく同じようなことが起きていた。

73年にはボビー・リッグスが、今回はジョン・マッケンローがメディアの槍玉に挙がったものの、本当の問題がもっと大きく、深いところにあるのは明らか。ビリー・ジーンが彼女自身とほかの女性のために闘ったように、いまも誰もが目の前にあることと闘いつづけなければいけない。エンパワメントである以上に、そのモチベーションが上がる映画です。




『バトル・オブ・ザ・セクシーズ』
監督/ジョナサン・デイトン、ヴァレリー・ファリス
出演/エマ・ストーン、スティーヴ・カレル
7月6日、全国順次ロードショー

映画ライター 萩原麻理プロフィール画像
映画ライター 萩原麻理

本誌で映画のレビューを手がける。ライター、エディター、翻訳もこなす。趣味は散歩と、猫と遊ぶこと、フットボールを見ること。

 

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