[vol.7] 紫色の熱波、紫色のレジェンド、プリンスよForever!  私をハッピーにしてくれて、ありがとう!

プリンスが突然、あの世に逝ってしまった。なんてことだ!横浜スタジアムでの初来日ライブで、椅子の上に立って踊った私と、それを注意する警備員がいたちごっこをした日。ロンドンの映画館で親友たちと大笑いしながら『パープル・レイン』を観たあの日。楽しくてドキドキと高揚したプリンスの日々が脳裏をよぎる。

プリンスを真のカリスマに仕立て上げた、音楽をクリエイトする才能やそのプレースタイルはもちろんだが、私は殿下のファッションに、いつでも興味津々だった。最近ではセクシー路線は控え目になり、以前よりずっとシンプルになったが、あのエロいけれどいたずらっこのようでもあり、クドいがどこかピュアな面影を宿した強烈な顔面と、生涯履き続けたハイヒールで、決してありきたりにはなり得なかったプリンス。160センチもなかった小柄で華奢な彼が、誰よりも目立って限界まで攻めてくれたその出で立ちは、美しいとか洗練されたといったモードな世界観とは別次元。まさに、エグさ全開。ぶっ飛びだった!


ハイウエスト(脚が長く見える)のぴっちりパンツに、上半身ハダカ。黒ビキニの海パンいっちょう。クドい顔と胸毛効果で、卑猥さと気持ち悪さとおかしさが一緒くたになり、もう目をそらさずにはいられなくなる殿下のイリュージョン。

WHEN DOVES CRY』という曲のPVでは、殿下が紫の花が散乱したバスルームの床を、ハダカで這いずるシーンがあり必見だ。そうかと思うと、アマデウスばりのヒラヒラなブラウスに紫色のジャケットで、装飾過剰な暑苦しい格好も好み、すべてが限界ギリギリなのだ。80年代の初期、才能をスパークさせて飛ぶ鳥を落とす勢いだった殿下が懐かしい。
私はこれらのプリンスを、愛するがゆえにげらげら笑いながら見ていた訳だが、笑わせてくれるとは、楽しませてハッピーにしてくれるということ。これこそがエンターテインメントであり、真のスター!才能に裏打ちされた芸を堪能させてくれたプリンスの紫色の熱波を、もう生でこの身に受けられないと思うと、本当に哀しくなる。

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イラストレーター&エッセイスト 石川三千花

映画、ファッションを独自の視点からイラスト+エッセイで斬る!著書に『石川三千花の勝手にシネマ』、『勝手にオスカー』など。

https://twitter.com/michikaishikawa

 

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