初夏は自宅で、幸せな一杯を。ベランダでアペロ

新緑に誘われて、少し開放的な気分でグラスを傾けたくなる季節。自宅のベランダで、風を感じながら過ごす至福の時間にぴったりのお酒とアペロのひと皿を、SPUR連載でもおなじみのフードコーディネーター・長尾智子さんが提案

Profile
長尾智子

ながお ともこ●フードコーディネーター。SPUR料理連載では、2019年から2年間、アペロをテーマに展開。今年からはテーマが保存食に変わり、連載継続中。「アペロと保存食は意外と共通点が多いもの。保存食かつお酒に合う料理もよく登場するので、ぜひ毎号の連載もチェックしてみてください」

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フランス語のアペリティフ(食前酒)が変化して、「一杯、どう?」というような気分を表す言葉として定着しつつある"アペロ"。「軽い一杯を楽しむための料理なら、酸味やスパイスをきかせつつ、手間をかけずにシンプルなものを。ボリュームもあえて小ぶりにして何皿か並べると気分が盛り上がります。ベランダがなければ、近くの公園でピクニックのアペロでも」。初夏の澄んだ空気は何よりのごちそう。アペロのもたらす幸福をぜひ味わって。

 

スプリッツァーでアペロ

木漏れ日の下のアペロは、お酒も料理もぐっと軽やかに。「作り置きもしやすく、外でのアペロにおすすめのメニュー」

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1.グリーンオリーブのケークサレ

「牛乳の代わりにアーモンドミルクで軽い食感に。紙の型を使うとより手軽です」

材料(17×7.5×6㎝のパウンド型1台分)
薄力粉…250g、ベーキングパウダー…10g、グリーンオリーブ(種抜き)…約80g、くるみ…約50g、粉チーズ…20g、アーモンドミルク(無糖)…300㎖、オリーブ油…大さじ2 、てん菜糖…大さじ1 、塩…小さじ1/4、サワークリーム・ドライブルーベリー…各適宜

作り方
❶薄力粉とベーキングパウダーは合わせてふるい、ボウルに入れる。グリーンオリーブは1個を3等分する。くるみは粗みじんに刻む。
❷アーモンドミルクにオリーブ油、てん菜糖、塩を加えて混ぜ合わせる。
❸①の粉のボウルに粉チーズを加えて混ぜる。②を加えてゴムべらで手早くまとめ、粉気がなくなったら、①のオリーブとくるみを散らして混ぜ合わせる。オーブンを180℃に温める。
❹型に合わせてベーキングシートを敷き、③の生地を詰める。表面を軽くならしてオーブンへ。約40分ほどこんがりと焼き、型からはずして粗熱を取る。カットして、サワークリーム、ドライブルーベリーを添える。

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2.きゅうりとズッキーニの浅漬け

ハーブの香る洋風浅漬け。「一日たつと塩味がしっかりついてそれもおいしい」

材料(約750㎖の保存瓶1個分)
きゅうり… 2 本、ズッキーニ(黄)…小さめ1 本、ディル… 3 本、水…800㎖、塩…15g

作り方
❶鍋に水を入れ、煮立ったら塩を入れて混ぜながら煮溶かす。火からおろして粗熱を取る。
❷きゅうりは両端を切り落とし、ピーラーで筋状に皮をむく。長さを4 等分し、さらに縦に2
等分する。
❸ズッキーニは両端を落とし、1 ㎝くらいの輪切りにする。ディルは適当にちぎる。清潔なガラスなどの耐熱容器にきゅうりとズッキーニ、ディルをバランスよく詰める。そこに①の塩水を注ぎ、蓋をして3時間以上おく。

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3.トマトとアンチョビソースのサラダ

「トマトは切るだけ。アンチョビやパセリ、松の実のソースをかけて」。ワインが進む!

材料(2人分)
アンチョビ… 4枚、パセリ… 2本、松の実…大さじ山盛り1 、オリーブ油…100㎖、塩…少々、フルーツトマト… 2個、レモン…1/4個

作り方
❶ソースを作る。まな板にアンチョビとパセリの葉をのせ、細かくなるまで包丁でたたく。ボウルに入れ、松の実、オリーブ油と塩を加えてよく混ぜておく。
❷トマトは小さめのナイフでヘタの部分をくり抜き、横に4等分くらいにスライスする。器にトマトを並べ、①のソースを適宜のせる。好みでレモンを搾りかける。

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4.シチリアのロゼワインのスプリッツァ-

ルビー色の爽やかなロゼワインを炭酸で割って、より口当たりよくフレッシュに

スプリッツァーは、ワインをトニックウォーターや炭酸水で割ったカクテル。アルコール度数も低く、軽いアペロのおともにぴったり。「少し贅沢だけれど、いいワインで作ると飲みやすくなるだけでなく、味わいも深くてやっぱりおいしい」。今回選んだのはイタリアのロゼワイン、ラモレスカ・ロザート。「酸味のある野菜料理や軽いケークサレによく合います。1杯目は食前酒としてスプリッツァーで、2杯目は料理と合わせてそのままでも」。トニックウォーターは、ナチュラルメイドなフィーバーツリーのもの。

 

ビールでアペロ

最近は輸入品を中心に、作り手のこだわりが感じられるクラフトビールにも注目が集まっている。「個性に合わせて、料理との相性を楽しんで」

フルーティなホワイトビールと

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仏・ロワール地方のブラッセリー・ド・ラ・ピジョンネールの自然派白ビール、ビエール・ブランシュ ビエール・デュ・シャモー3.5%。「アルコール度数が低くフルーティで、シードルのような風味も」

シードルやフルーツカクテル感覚で飲める白ビールはクリーミーな味つけと相性抜群。

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マッシュルームのクリームサラダ

「多めのオリーブオイルが味の決め手。食べる直前にさっと作るのがおいしい」

材料(2人分)
マッシュルーム…約10個、オリーブ油…大さじ2 強、塩…少々、生クリーム…100㎖、レモン汁…小さじ1 、パセリのみじん切り…少々

作り方
❶マッシュルームは土を刷毛ではらい落とし、軸をつけたまま縦に薄切りし、ボウルに入れる。
❷①にオリーブ油を回しかけ、塩をふってオイルを全体にからめるように手早く混ぜ合わせる。生クリームとレモン汁を回しかけ、パセリのみじん切りを加え、一緒にからめる。

 

鶏胸肉のマスタードバター

マスタードバターの辛味とコクが鶏胸肉と好相性。「ゆで汁はこしてスープにしても」

材料(2~3人分)
鶏胸肉…小さめ1 枚、塩…少々、砂糖…少々、白ワイン…50㎖、無塩バター…大さじ3 、練りマスタード…大さじ1 、粗塩・黒こしょう…各少々

作り方
❶鶏肉は皮や余分な脂を除き、塩、砂糖を軽くふって10分おく。鶏肉から水気が出たら洗い流す。
❷鍋にたっぷりの湯を沸かして白ワインを入れ、①の鶏肉をゆでる。鶏肉にキッチンペーパーをかぶせて表面が乾かないようにし、軽く煮立つ程度の火加減で12~13分ゆでる。竹串を刺してすんなり通ればゆで上がり(指で押して柔らかければ、ゆで足りない)。粗熱を取り、端から薄切りにし、食べる分を皿に盛る。
❸室温において柔らかくしたバターに練りマスタードを加え、よく練り合わせる。②の鶏肉にのせ、粗塩、黒こしょうふりかける。残った鶏肉はゆで汁につけて冷蔵し、1週間程度で食べ切る。

ジャスミン茶入りビールと

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米・ポートランド発、ギルガメッシュブルーイングのジャスミン茶入りビール、DJ JAZZY HEF。「ナンプラーや唐辛子をきかせた料理と合わせてアジア風のアペロに」

珍しいジャスミン茶入りのクラフトビールにはエスニックなひと皿を合わせて

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ヤリイカとハーブのサラダ

酸味や辛味、ハーブの香りでお酒が進むサラダ。「イカはゆですぎないのがコツ」

材料(2~3人分)
ヤリイカ… 2杯、米酢…大さじ3、てん菜糖…小さじ2、ナンプラー…小さじ1、塩…少々、香菜… 2~3株、ディル… 3~4本、ペパーミント… 1 パック、ごま油…小さじ1、赤唐辛子粉…ひとつまみ

作り方
❶イカは皮をむき、内臓を引き抜く。足の部分を切り分け、胴体はさっと洗って細めの輪切りにする。鍋に湯を沸かし、沸騰したら2~3回に分けて湯通し程度にイカを軽くゆでる。流水で急冷し、水気をきってボウルに入れる。
❷米酢、てん菜糖、ナンプラー、塩を合わせ、①のイカにかけてマリネし、冷やしておく。
❸香菜、ディル、ペパーミントは葉を摘む。香菜の茎を1㎝強に刻み、葉と合わせて大きめのボウルに入れる。②のイカの水気を軽くきって加え、残った漬け汁も適宜加えてあえる。器に盛り、軽くごま油を回しかけ、赤唐辛子粉をふる。

 

ラム肉のサテ

「お肉は串が見える程度に残して刺すと、見た目も量もアペロらしいバランスに」

材料(6本分)
ラム焼肉用薄切り…約250g、クミンパウダー…約小さじ1/4、塩…少々、植物油(米油、太白ごま油など)…約小さじ1/2、赤唐辛子粉…適量

作り方
❶ラム肉は大きければ2~3等分し、竹串にジグザグに刺して計6本にする。バットに並べ、クミンパウダーと塩を表裏全体にふりかけておく。
❷フライパンに植物油を温め、①の串を並べ入れ、強火で途中上下を返して焼き、器に並べる。仕上げに赤唐辛子粉を多めにふりかける。

 

赤ワインでアペロ

「気温が上がるこの季節は赤ワインもよく冷やして。スパイスや野菜で爽やかさを添えた、重すぎないチーズ料理と合わせるのが気分」

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仏・ローヌ地方の赤ワイン、ル・マゼル ブリオン。「野いちごなど赤いフルーツの果実味と酸味が感じられ、軽やかな口当たり。この季節、冷やして飲むのもおすすめの赤」

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スパイス風味のチーズとゆで野菜

チーズにスパイスをまぶすだけで洒落た一品に。「クミンシードやキャラウェイでもおいしい」

材料(2~3人分)
カマンベールチーズ… 1 個、粗挽き黒こしょう…約小さじ1/2、フェンネルシード…約小さじ1、そら豆…約100g、アスパラガス… 3本、塩…適宜

作り方
❶カマンベールチーズは10等分程度に切り分ける。黒こしょう、フェンネルシードを混ぜてバットに散らし、チーズの切り口を軽く押しつける(まだらにつくくらいでOK)。いったん冷蔵庫へ。
❷そら豆はさやから出す。アスパラガスは根元の皮をむいて3等分に切り分ける。鍋に湯を沸かして塩少々を加え、そら豆とアスパラガスを2分くらいゆで、軽く塩をふって冷ます。①のチーズと一緒に盛りつける。

 

ブルーチーズのスクランブルエッグ

「卵は弱火で、ゆるく固めるのがコツ」。とろけたブルーチーズの風味がたまらない!

材料(2人分)
卵… 2個、塩…少々、牛乳…大さじ1 、オリーブ油…小さじ1 、ブルーチーズ…約50g

作り方
❶卵をボウルに割り入れ、塩と牛乳を加えて泡立て器でほぐす。フライパンにオリーブ油を温め、弱火にして卵を流し入れる。弱火のまま、火が通りすぎないように気をつけながら菜箸でゆっくりと混ぜ、ゆるく固まってきたら器に移す。
❷温かいうちにブルーチーズをちぎって散らし、好みのパン(分量外)を添える。

 

COLUMN  自宅で作れる!カクテルレシピ

長尾さんからのリクエストを受け、カクテル作りが趣味のフォトグラファーSが自宅で気軽に作れるとっておきのカクテルを伝授!

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みょうがのジントニック

愛らしいピンク色の正体はなんとみょうが。キリッと爽やかな口当たり。

作り方
みょうが2〜3個を粗く刻み、ボウルに入れてライム1/4個の搾り汁とともに棒などでつぶし、こして搾り汁を取る。ジン45㎖をグラスに入れてトニックウォーター100㎖で割り、みょうがの搾り汁を加えてステアする。

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カモミールティーと柑橘のカクテル

カモミールティーの代わりに緑茶やレモングラスティーを使ってもおいしいそう。

作り方
お茶を通常の2倍の濃さに抽出し、冷やしておく。グラスにコアントロー40㎖、グレープフルーツジュース20㎖、カモミールティー30㎖、トニックウォーター40㎖を入れ、ライムの搾り汁1/4個分を加えてステアし、セージを飾る。

SOURCE:SPUR 2021年6月号「初夏は自宅で、幸せな一杯を ベランダでアペロ」
photography: Masahiro Sambe styling: Miwako Tanaka edit: Kaori Okuda