ただ静かに、炎を燃やす。眞栄田郷敦 夢の続きを……

2年前、2020年4月号でSPURに登場した俳優・眞栄田郷敦。当時語っていた夢の続きを尋ねるべく、再びインタビューを試みる。どこまでも続いていきそうな草原に置かれたベッド。彼が見る夢の中へと入っていこう――

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ある朝目覚めたら……

ある朝起きたら広大な草原に置かれたベッドの上だった……という今回の撮影の設定を見事に表現した眞栄田さん。2021年はドラマ8本、映画2本に出演し、その活躍ぶりから雑誌『日経トレンディ』が選ぶ 「来年の顔」に選ばれた。忙しい日々を送っているであろう彼に、リフレッシュ方法を聞くと「ひたすらボーッとすることですね。オフの日は、日課のワークアウトなど必要最低限のこと以外、何もせずにゆっくり過ごしています」と答える。

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何度だって、立ち上がれる

地上波の連続ドラマ初主演作となる「カナカナ」が、5月16日に放送スタート。眞栄田さんが演じる主人公の日暮正直は、純粋で穏やかな心を持つ元不良の青年。自身との共通点を聞くと、「ポジティブなところかな」という予想外の答えが。「言うたびに驚かれますが、僕は意外と楽観主義なんです。将来のことなど悩んでも仕方がないことは、どうにかなるだろう!と割り切るし、失敗したときも後悔するより次に生かそう!と潔く切り替えています」。

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一歩一歩、自分のペースで

プライベートで遊ぶのはもっぱら中高時代の友人。撮影現場での談笑に積極的に参加できず、同業の友人もごく限られているそう。「撮影現場で自分から雑談に交わることは少ないですね。決して、話したくないわけではなくて! 仕事では集中していないと不安で……おしゃべりを楽しむ余裕がないんです(汗)。親交を深めるのも大事だとは思いつつ、そこに注力できるレベルに達することができていないのが現状。もう少し余裕ができたら挑戦してみます!」。

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雨はいつか必ず上がる

撮影現場では、できるだけ多くを吸収するために「一秒たりとも気を抜かないよう意識している」という眞栄田さん。「もちろん疲れますよ(笑)。でもそれが報われた瞬間、ストレスもフラストレーションもきれいさっぱり発散されるんです。スタッフの気分が高揚するのを感じたり、満足する芝居ができたり……。僕にとっては仕事で達成感を得ることが、最高のご褒美。その快感がつらさを上回って、次のモチベーションへとつながっています」。

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心も体も、軽やかにいたい

インタビューではこちらの言葉にしっかりと耳を傾け、一語一句を丁寧に選びながら答える様子が印象的な眞栄田さん。幼少期を過ごした街、LAが恋しくないかと尋ねると、「まったくです」と即答。そして「世界中で一番日本が好きなんです」と断言した。「個人的な印象ですが、街がきれいですよね。それに、人間関係が円滑! 日本人特有のマイルドな主張とか、意見を真っ向から否定しないところとか……本音で相手を傷つけるよりも建前を使えるほうが美徳だと思う」。

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心満ちる、そのときまで

ドラマ「カナカナ」は眞栄田さん演じる元不良の日暮正直と、人の心が読める少女・佳奈花が織りなすハートフルコメディ。佳奈花のように、特殊能力を手に入れられるとしたら? 「えー! 自分で選べるなら……勉強からスポーツまで、学んだことを瞬時に吸収する能力かな。応用が利きそうじゃないですか?(笑) 僕は不器用で、一度にひとつのことしかできないタイプだから、マルチに活躍する人に憧れます」。

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INTERVIEW / GORDON MAEDA
夢を追わなければ感じない痛みもある。それでも夢を追いたい

役者としての自分を世界に証明したい

「ありがとうございました!」。撮影を終えてロケバスに戻った眞栄田さんは、朗らかに微笑んだ。ヘアメイクを終えると早々にロケバスを後にし、黙々とストレッチに勤しんでいた朝の姿とはまるで別人のよう。そう伝えると、少し照れたような表情を浮かべた。

「仕事の前は頭の中でいろいろとイメージしているので、無意識に表情が硬くなっているのかも。でも今は、やりきった!と心地いい達成感に包まれています。素敵な写真が撮れたことはもちろんですが、カットを重ねるごとに、スタッフのみなさんのテンションが上がっているのを感じられて。一緒に物作りをしている人たちの、そういう姿を見るのが大好きなんですよ。僕にできる、一番の恩返しだから」

本誌に初めて登場したのは、デビュー半年後の2020年4月号。当時はただがむしゃらに努力していたが、次第に「楽しい、好きだから頑張ろう」と意識が変化したと言う。

「1年くらい前まではまったく余裕がなくて、自分がやるべきことを最大限にこなすことで精一杯でした。そんななかで『プロミス・シンデレラ』で二階堂ふみさんと共演して。”自分はこうしたい”という意見がしっかりあって、それを監督やプロデューサー、共演者にぶつけながら、みんなで作品を作り上げる。そんな二階堂さんの姿を目の当たりにして、役者としての意識が変わったし、作品という物作りの面白さに気づかせてもらいました」

役者になる前の夢は、プロのサックス奏者。台本のない芝居に体当たりで挑んだドキュメンタリードラマ「キン肉マン THE LOST LEGEND」では、主題歌の演奏も担当した。

「台詞がないぶん、よりなりきって会話をしなくてはならず、おかげで、役として生きる感覚を初めて体験。役作りも鍛えられました。サックス演奏は、シンプルに楽しかった! プロを目指していた時期は”うまく吹かなきゃ”というプレッシャーがありましたが、のびのびと自由に演奏するのは本当に気持ちがよく、やっぱり好きだ!と再認識。そんな気持ちの表れか、高校の先輩から前よりうまくなったと褒められました。ジャズを題材にした漫画『BLUE GIANT』が実写化される暁には絶対に参加したい!と、密かに野望を抱いています(笑)」

そんな眞栄田さんの次なる挑戦は、地上波の連続ドラマ初主演。同題の漫画が原作の「カナカナ」で、主人公の日暮正直を演じる。

「役作りでもっとも大切にしているのは、役の人物像を徹底的に理解すること。あらゆる場面を想像して、その役だったらどう反応するか、パッとイメージできるまで研究します。漫画原作の場合はまず、キャラクターと同じ髪型に変えるところからスタート。外見を寄せるだけで、不思議とイメージが膨らみやすくなるんですよ。それでも毎回、再現度とリアリティのバランスには頭を抱えます。不自然にならない程度に、ほどよく忠実に演じるのが難しくて……なりきれない自分の力不足を痛感。いつか観た人がドキュメンタリーと勘違いするくらい、リアルな芝居をできるようになるのが目標です」

20歳の誕生日直後に行われた前回のインタビューでは、20代を「役者としてのスタートラインに立つための10年間」にすると宣言。丸2年を経た今、達成する自信のほどを聞いてみた。

「仕事を重ねるたびに成長を実感できているので、後退はしていないかな、と。実力はまだまだ足りませんが、あと8年もあるんで……必ず達成してみせます! この2年で役者の仕事への向き合い方は変わったけど、ゴールの夢は同じ。世界規模で活躍して、結果を残すことです。役者という正解のない仕事をしているからこそ、賞なり作品なり、頑張ってきた証しを形にしたい。役者としての自分を世に証明したいんです。正直、好きなことをしてお金が稼げている今の生活は十分幸せだし、夢を追わなければ感じない痛みがたくさんあります。でも僕は、その先にある景色が見てみたい。夢がある限り、追わずにはいられないんです」

GORDON MAEDA
まえだ ごうどん●2000年1月9日、LA生まれ。2019年5月、映画『小さな恋のうた』でデビュー。代表作に、映画『東京リベンジャーズ』、ドラマ「プロミス・シンデレラ」など。5月16日より、地上波ドラマ初主演作となる「カナカナ」(NHK総合・月〜木曜22時45分〜)が放送スタート。

SOURCE:SPUR 2022年6月号「眞栄田郷敦 夢の続きを……」
model: Gordon Maeda photography: Toshio Ohno 〈L MANAGEMENT〉 styling: So Matsukawa hair & make-up: Taro Yoshida 〈W〉 interview & text: Ayano Nakanishi

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