語り合うことで拓ける未来「わたしと彼が、生理の"ホント"を語るなら」CASE: 1

男性にも知ってもらいたい、生理のこと。思いきって身近な男性と語り合うことで、お互いの関係性もいっそう深まるはず。子育て中のモデル&ヘアスタイリスト夫婦、アスリートカップル、同じ会社で働くチームメイト同士の3組が、生理をテーマにトーク!

 

CASE : 1
モデル --- 畠山 千明さん
ヘアスタイリスト --- 畠山 遥さん 

明るい色に染めたバズカットで人気を博した千明さんは、現在は黒髪を少しだけ伸ばしている。「といっても、もとが短すぎたから、伸ばしたという気がしないんだけど」と軽やかに笑う。遥さんは「普段から、彼女に頼まれた生理用ナプキンを買って帰ることも多いですよ」と穏やかに話す。

5歳の娘にも、生理について話します。自分の体の大切さを知ってほしいから

――モデルの畠山千明さんと、その夫でヘアスタイリストの遥さん。結婚7年目のふたりは、5歳になる娘の希花ちゃんを育てながら、日々それぞれの仕事に邁進している。業界屈指のスタイリッシュなカップルであるふたりに、千明さんの妊娠・出産を経て変化した生理とのつき合い方から、性教育まで、改めて語ってもらった。

出産後にひどくなったPMS。今は心構えができるように

遥さん(以下H) 生理について話すようになったのは、結婚してからだね。
千明さん(以下C) つき合っているときはあまり話さなかったね。私のほうでも、生理の話は女性とするものだというイメージがあったし、出産前はすごく生理不順だったから、あまり生理としっかり向き合ってこなかった。子どもを産んでからは順調に生理が来るようになったけど、今の悩みは、出産後の3年でPMS(月経前症候群)が本当にひどくなっちゃったこと。そういえば、遥はよく生理前の私を見て、「顔がヤバいよ」って言うよね。
H いや、ヤバいとまでは言ってないはずだよ(笑)。これは距離感が近い夫婦という関係だからわかることだと思うけど、不調が表情に出ているときがある。たとえば、SNS用の写真を撮っていると、不機嫌そうに写ってしまうときがあるよね。なんというか、口角のあたりの表情がいつもと違う。
C そうだね。自覚はあるかな。
H PMSの期間に入ると、普段だったら円滑に進むやりとりが、急にうまくいかなくなるよね。理不尽な怒りを向けられることもあって、ちょっとこちらとしても納得がいかなかったり。でもその時期が過ぎると、たぶん頭の中で絡まっていた感情の糸がちょっとずつほどけてくるんだろうな、いつもの千明に戻る。これを毎月のように繰り返しているね。
C それはもう、自分でもすごく反省してるんだよね。いつもだったら何でもないようなことにイラっとしちゃって、家族の雰囲気が悪くなるじゃない? 「私のせいだな」って、痛いほど感じるんだよね。でもコントロールできないときもあるから、それに対してさらに落ち込む。あとは、これといった理由もなくじわじわと気持ちが沈んでいって、「この先、何かあったらどうしよう?」「仕事ができなくなったらどうしよう?」と暗いことばかり考え始めたりとか。毎回、反省してます。
H 大丈夫。ずっと一緒に過ごすなかで、「千明も、自分でもどうにかしたいという気持ちはあるんだよな」ってわかるようになったから。こちらも気持ちに余裕のないときは言い返しちゃったりするけど、毎日続くわけじゃないから、不調の時期はこちらがのみ込んであげることも必要だと思うようになった。だって千明も千明で、自分を抑えようと頑張っているんだから、そこに対する気遣いはしたいよね。
C そうね、コントロールしようとは思っている。出産後、急に私のPMSがひどくなった時期があったじゃない? あの頃は生理に関する遥の理解もまだ深くなくて、イライラしてふたりで言い争いになっちゃった。そうしたらまだ3歳くらいの希花に「ケンカしてるの?」って聞かれて、これは本当によくないなと心から思った。子どもの前ではケンカしないように、いつも気をつけていたのにね。あれがきっかけで、遥に生理前のイライラについて説明するようになったと思う。
H おかげで、「この時期の千明は不調なんだな」って心構えができるようになった。なるべく察するようにしているけど、察しきれないときもある。だから言ってもらったほうがこちらとしてもラクだし、助かるよ。あと、PMSがあまりひどくないときは、お互い「今月はいい感じだったね」と話し合うこともできるしね。
C 「私、今月はうまくコントロールできてたよね?」って話したりするね。

 

不調のときは伝えてほしい。心構えができると、コミュニケーションも変わるから

感情的になるのはNG。相手との違いを楽しむ!

C 遥は、私の経血の量まで、だいたい把握してくれているよね。恥ずかしい話だけど、経血がもれてボトムスが汚れちゃったりするじゃない?
H 「ああ、今はかなり量が多いんだね」って普通に話すよね。
C 隠すようなことじゃないし、どうしてももれてしまうことはある。それをわかってくれているから、「ズボン洗わなきゃ、面倒くさいな」っていう愚痴も言える。助かっています。娘も小さいし、生理がつらいときは遥のサポートがないと本当にやっていけないので。だからつらいときは、「私はこんなにつらいのに、なんでわかってくれないの!?」って感情ばかりをぶつけるんじゃなくて、「つらくてもう無理なのでちょっと寝てきます、よろしく」って言葉を選んで伝えるようにしている。普段から、お互い感情的にならないように気をつけているよね。
H 基本的に、どんなに親しい人であっても、自分とはまったく違う人間だと思っていて。だから誰かと意見が対立したときも、「なんでそんなふうに考えるんだ!」と不愉快になるんじゃなくて、「こんな捉え方もあるんだ、面白いな」と思うようにしているかな。特に千明に関しては、あまりにも自分と違いすぎて「逆に面白い」と思うことが多い(笑)。
C 確かに、私も遥に対して「この人、面白いな」と思っているかも(笑)。最終的に、笑いに着地するのはすごく大事。笑うと場もなごむしね!

生理用ナプキンを男性が買うCMが見たい!

H わが家は、娘の前でも生理についてオープンに話してるよね。
C そうね、私の生理中は、希花のお風呂は基本的に遥が担当してくれるけど、私とお風呂に入って経血を見ることもあるからね。そういうときは、「今日はお母さんは『血の日』だけど、あなたにもいずれ来るんだよ。それはお腹の中に赤ちゃんを迎える準備ができているということで、あなたもお母さんのお腹の中にいたんだよ」って伝えている。自分に初めて生理が来たときはびっくりしたし、すごく怖かったんだよね。だから娘には今から伝えておきたいと思って。
H 今はよくわからなくても、年がたって大人になったとき、知っているのと知らないのでは全然違うから、しっかり向き合って伝えていく必要がある。
C 私は、ちゃんとした性教育をすることが大事だと思う。それが、「自分の体は自分のもの。だからたとえ相手が好きな人であっても、嫌なことをされたら嫌だと言っていい」というメッセージにつながっていくと思うから。
H そうだね。自分も保健体育の授業で簡単に教わっただけだから、しっかりした性教育は男女ともに大切だと思う。男子としても、女子の体にどんなことが起こるかわかっていたら、彼女や女友達への接し方がちょっと変わってくるんじゃないかな。
C 知識は大事だよね。女性だけの問題じゃないから、女性は生理についてもっとパートナーと話し合っていくべきだなと思う。どんな問題でもそうだけど、言葉にしないと伝わらないから。
H だからこの企画はすごくいい企画だなって思う(笑)。こういう記事をきっかけに、いろんな人が家族や恋人と話し合って、認識をアップデートする機会になったらすごくいいと思う。そういう機会がいろんな世代、いろんなシーンで生まれていくと、少しずつ社会が変わっていくんじゃないかな。
C そういう意味では、生理用ナプキンのCMをTVで放送しているのはすごくいいことだと思うんだよね。男性にも、生理のつらさやナプキンの存在を認識してもらえるから。
H 今、思いついたんだけど、店頭で男性がナプキンを手にしてレジに持っていくCMがあってもいいよね。
C すごくいい! 女性が生理痛でつらそうにしていて、彼氏と一緒に気軽にお店に買いに行く、とかね。
H 男性にも関係するものなんだよって、伝わりやすくなると思う。誰か、企画してくれないかな?(笑)


Profile
(右)はたけやま ちあき●モデル。人気古着店のスタッフとして働いていた頃、そのスタイリッシュな私服姿が話題になり、読者モデルとして脚光を浴びる。現在はプロモデルとして、子育てと両立しながらランウェイショーや雑誌撮影で活躍中。

はたけやま はるか●ヘアスタイリスト。現在は、明治神宮前のヘアサロン兼コーヒー&サンドイッチスタンド「whyte(ホワイト)」に所属。カルチャーを感じさせるスタイリングが得意。千明さんと夫婦でファッションショーに出演することも。

SOURCE:SPUR 2021年9月号「わたしと彼が、生理の"ホント"を語るなら」
photography: Kae Homma  interview & text: Chiharu Itagaki 

FEATURE