ウズベキスタンと、旅した気持ちになれる本

最近は子連れ旅ばかりで全くご無沙汰ですが、昔はたまにひとり旅していました。行き先は、チベット、アイスランド、ウズベキスタンなどなど……というとものすごいひとりっぷ上級者のように聞こえますが、単にマイナーな土地すぎて同行者が見つからなかった、という消極的な理由でです。出張でひとりNYとかだったら全然平気なんですが、未知の場所だけに行くまでは不安で、出発まで「行きたい」と「行きたくない」が心の中でせめぎ合いまくる日々。空港で生ビールをぐびぐび飲んで、ようやく覚悟が決まるような有様でした。でも、こんなザ・小心者でも、行ってみるとひとり旅って本当に楽しいんですよね。いい思い出ばかりです。

ウズベキスタンに行ったのは2009年の秋でした。きっかけは作家・武田泰淳の妻で随筆家の武田百合子さんが出した『犬が星見た』という本。昭和40年代の旧ソ連を夫とその友人と旅した様子を綴った一冊です。その中で記されている現・ウズベキスタンの描写が好きで、いつか行ってみたいなーと思っていたのでした。もちろん、旅にはこの本を持参。ベタすぎてお恥ずかしい限りですが「本に出てくる街で、その部分の描写を読む」っての、やりましたとも! おかげで、ボロボロになった本は、今でも開くたびにあの日の高い青空や乾いた空気を運んできてくれます。

で、本日の本題はこちらです。料理家でもあり、文筆家でもある高山なおみさんが『ロシア日記』と『ウズベキスタン日記』という2冊の本を最近出されました。これが本当にいい。ご本人も『犬が星見た』が大好きで、それを巡る旅を本にまとめたとのことですが、こりゃ武田百合子現代版じゃないの!?というぐらい、淡々とした日記の中に子供のようにピュアな視線と、ちょっとしたユーモアと、濃密な旅の空気がパックされています。
本は、自分をまだ見ぬどこかに連れて行ってくれるもの。そんな言葉を久しぶりに思い出しました。エアコンの効いた室内でもできる旅体験、いかがでしょうか?
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エディターOKUDA

ミニマリストに憧れながらも、己の物欲と食欲から逃れられません。好物は生ビールと生牡蠣と生肉、そして大きなイヤリング。

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