時代をつくるふたりの“ジッケントーク”

先週末、とある面白いイベントにいってきました。Yahoo! JAPANに設置されたコワーキングスペース「LODGE」と、スイスの家具ブランド、Vitraが共同主催する「ジッケンオフィス」という取り組みの一環として行われたトークショー。異業種のゲストや、参加者を交えることで新しい発想や関係、イノベーションが起きるのでは?という考えのもと行われています。

左から、横石さん・森永さん・山口さん/すべてphoto by Ko Tsuchiya

この日は、TOKYO WORK DESIGN WEEKの運営を行う横石崇さんナビゲートのもと、アンリアレイジのデザイナー森永邦彦さんと、サカナクションの山口一郎さんがトークに参加。パリコレクションを舞台にコラボレートされているお二人により、ファッションや音楽をはじめとし、生活空間や店舗やオフィスの設計環境、音楽界を取り巻く現状、テクノロジーについて……などなど幅広いトピックでトークが展開されます。森永さんはゆっくりと言葉を選びながらお話されていて、山口さんはどんな質問にも明快に受け答え。お二人の頭の回転や言葉選び、トーク力に圧倒されるばかりでした。

和やかなムードでトークが進みます
和やかなムードでイベントが進みます

当日、印象的だった言葉やトピックを(とっても主観的に)抜粋いたしますと……。たとえば、今の日本では文化事業に対してどれくらい投資する環境が整っているのか。世界に向けて日本のカルチャーを発信していきたい今、経済が文化によりお金をかけていく体制や意識がまだ整いきっていないのでは?という懸念について。その後「そうして日本が世界にアピールすべき点はなんでしょうか?」という質問に対して(という趣旨だったと記憶していますが)の、山口さんの「それは“情緒”であると思う」という答えも印象的でした。日本独特の美意識だったり、間はやはり他の国にはなく私たちが伝えていくべきものですよね、と再認識。

山口さんはアンリアレイジのショーをはじめ、サカナクションというグループの枠組みを超えて個人でも幅広く音にまつわる活動をされていますが、いまだに「新しい曲を作ってCDをリリースしてくほしい」など、“ロックバンドたるもの”的な論調があるそうで(きっとファンの方も新曲を心待ちにされているのだと思いますが)。そんなミュージシャンという職業の活動について「ロックバンドが描く夢もアップデートしたい」と語ります。どういう意味だ?と思って聞いてゆくと、CDを出してライブして売上を出して……というわかりやすい夢の形ではなく、アートに携わったり、まったく別のフィールドに飛び込んでみたり、多様な未来図を提示したいということだそう。そうして正解の形を定めずに選択肢を広げていくことは、私たちの働き方、しいては生き方を考えるうえでも、避けられない問題だと思うのです。

また、アンリアレイジのショーについてもその独特な発表方法やテクノロジーのもつ意味合いについて語られました。歴代のランウェイを改めて振り返っても、どれも発想力と現代の知恵が融合した賜物なのです。たとえば、スマートフォンを専用のアプリを通してかざすと、AR技術でそのアイテムに応じた音楽がデバイスから流れる服。ショーのBGMとしてではない、新しい服と音楽の関係性を生み出しました。

スマートフォンにかざすと音が流れます。実演中
こちらは6月に発売したオニツカタイガーとのコラボレーションスニーカー「ANREALAGE MONTE Z」。こちらもかざすと山口さんが手掛けた音楽が流れます。実演中

お二人が挑んでいるのは、物事の新しい側面であったり今ある枠組みを崩すようなことばかり。既成概念や、当たり前を軽やかに打ち砕きつづけています。そのことがバラエティ豊かなトピックから、随所に感じられました。ちなみに、現在池袋のパルコミュージアムでは「光」をテーマにしたアンリアレイジの展覧会「A LIGHT UN LIGHT」が開催中です。26日までなので、ぜひその表現の真髄を味わいに訪れてみてください。ちなみに、サカナクションは個人的にも大好きで「三日月サンセット」から地道に追いかけています。普段は聞くことのできない話の数々に、とても刺激を受ける楽しいひとときでした。

エディターSAKURABAプロフィール画像
エディターSAKURABA

好きな服は、タートルネックのニットと極太パンツ。いつも厚底靴で身長をごまかしています。

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