香水をプレゼントするための、最高の方法

昨年、母が還暦を迎えました。教師としてまだまだ現役で元気に働いている母のために、何かちょうどいい誕生日プレゼントはないかしら、と考えていたんです。服装にはわりとうるさい母だから、洋服やアクセサリーは失敗する可能性があるし、食器は実家にたくさんあるし、旅行は「そんな暇ないわよ」と言われてしまうし……。と悩んでいたところ、ふと何年か前、母が自宅に遊びにきたときに、棚に置いてあった香水、エルメッセンスのサンタル マソイアを手に取ってひと吹きし、「あら、すっごくいい匂いね。だいたいの香水は頭が痛くなってしまうけど、この香りは透明感があっていい!」と言っていたのを思い出したのです。それだ!と思い、早速エルメスのお店へ向かいました。

ショップスタッフの方に事情を話してみると、こんな答えが返ってきました。「香水は実際に肌に触れて時間が経つにつれ変化していくものなので、つけてみると『思っていた香りと違う』ということもありえます。普段あまり香水をつけないお母さまならば、こういうものはいかがでしょうか?」。提案してくださったのが、15mlずつの小瓶が4本セットになったタイプ。

「お好みの4種類を自由に選ぶことができます。その日の気分にあわせてつけることができますし、後日4つの中から気に入った種類の100mlタイプを改めて買いに来られるお客さまもいらっしゃいます」とのこと。確かに、香水こそ好みがあるからプレゼントには注意が必要ですが、この方法ならば相手に負担をかけることなく渡すことができますよね。値段も4種類入っているわりには¥20,736と、お手頃です。

それに、エルメッセンスはオード トワレで、どれも爽やかな香り立ちのため、つけていてもほのかに感じる程度。職場や食事の席でも安心なんです。とはいえきちんと奥行を感じさせるノートの構成は、さすが! 今回はなるべく幅広く選ぼうと思い、まずは繊細で純粋なスズランの香り、ミュゲ ポースレン(右中)をチョイス。次に手に取ったのはローズ イケバナ(左)。普通のローズってこってり官能的すぎるきらいがありますが、こちらは透明感があって嫌味がないんです。「ちょっと個性的な香りはありますか?」と聞いたところお勧めされたのがベチバー トンカ(左中)。土っぽさのあるベチバーに、トンカビーンの甘みが加わって、ユニークだけれど何度もかぎたくなるんです。最後に母が以前気に入っていたサンタル マソイア(右)を。こちらは白檀のウッディノートに、ドライフルーツのざくっとした感触が加わった、奥の深い香り。母のふだんの服装や嗜好を思い浮かべながら、じっくり時間をかけて選びました。

4本の小瓶はひとつひとつこのような布袋に入ってセットされています。手渡した相手が袋を開けて、香りについてひとつひとつ説明するまでが(スタッフの方の受けうりですが)、ギフトタイム! 

なくてもいいけれど、あると生活がぐぐっと豊かになって、見たことのない景色が広がるのが香りだと思います。60歳になった母に、まだまだ新しいことに向かって突き進んでもらえたら、という気持ちをこめて。包みを開けるときにほころんだ頬が、いつもよりちょっと若々しくみえました。

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エディターITAGAKI

ファッション、ビューティ担当。音楽担当になったので耳を鍛えてます。好きなものは、色石、茄子、牧歌的な風景。