ランバンのジージャン ― いちばん好きな服 ―

 「東京へおいでよ!」。社会人になって3年目の春先、大学時代の懐かしい友人から連絡があった。私と彼は大学のセミナーで出会い、服が好きだというきっかけですぐに打ち解けることができた。夜通しお互いの服について語りあったり、100円単位で食費を切り詰めて服を買っていたりした、当時のことをとても懐かしく思い、私はふたつ返事で東京行きを決意した。誘いがあった2日後の始発で東京へ行き、彼と再会をした。

 当時と変わらず服の話をしながら行きつけのセレクトショップや古着屋を散策していると、ある店が私の目の前に現れた。「ランバン ブティック銀座店」。とても厳格な雰囲気で中に入るには勇気がいったが、せっかく東京まで来たから、と友人を巻き込み入店!  華やかな衣服が並ぶなか、真っ先に私の目に留まったアイテムがジージャンだった。

 一見して普通のジージャンに見えるが、フロントがボタンとジップで閉じられる2WAY仕様なのに加え、何種類かのデニム素材を用いた再構築感、クラシックな形のなかに遊びがあるところ、どれもが私の好みだった。私のなかでは即決できるほどの価格でもなく、店内で何回も何回も試着をして迷っている私に、友人は「そんなに気にいっているなら買わないと絶対後悔するよ」と言った。

 その一言が決め手になり購入を決意!  普段カードを持ち歩かない私は、急いでコンビニのATMへ向かってお金を下ろし、閉店間際の店に走った!  現金での買い物は多い方だが、実際の会計時こんなにハラハラするのは今までの買い物で間違いなく、トップ5に入る!  そんな会計の時間でした。1週間後の休日、袖丈のお直しが終わり、我が家にジージャンが届いた。

 東京ぶりに再会するそいつは、もちろん想像以上の格好良さだったが、同時に初めて東京へ行った感動、久しぶりに再会した友人の懐かしさ、買い物時の高揚感、全てを思い出させてくれるスペシャルな一着になっていた。友人へ。あの時背中を押してくれてありがとう。春になり、コートが脱げる季節になったら、今度はこれを着て東京へ遊びに行きます。

(愛知県 24歳 ビンちゃん)

※この企画は毎週日曜日20時に公開していきます。次回は4月9日(日)20時公開予定です

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