『Lautashi(ラウタシー)』デザイナー鈴木えみの思い ──「服が売れない」時代だからこそ


interview&text:Chiharu Masukawa  photography:mitograph(Emi Suzuki)

この秋、東京発の新ブランド『ラウタシー』がデビューする。デザイナーは、鈴木えみ。長年モデルとして活躍してきた彼女が、作り手の世界へと飛び込んだのだ。デザインのみならず、全プロセスに彼女自身の息がかかっているということも、注目を集めているゆえん。コレクションの世界観やクリエイティブ面にまつわることから、ブランドをスタートしたきっかけ、そして今この時代に服を作るということまで、じっくり話を聞いた。

Profile
鈴木えみ 1985年、京都府生まれ。10代からモデルとして支持を集め、『SEVENTEEN』や『PINKY』などで活躍。プライベートのファッションにもファンが多く、過去には2冊のスタイルブックもリリースしている。

 

ファーストコレクションがいよいよリリース

まず気になるのが、『ラウタシー』という名前。その由来はどこから? 「日本発のブランドなので和の要素がほしいと思いながら言葉を探していて、『枕草子』の中で“らうたし”という単語を見つけたんです。意味は、かわいいとか愛おしいとか。ブランド名はあまり意味がわからないものがいいという意図もあったので、この言葉を選びました」。

ファーストコレクションに並ぶのは、全22型のアイテム。シーズンテーマについて尋ねると、「特に設けていないんです」という答えが返ってきた。「服って、着る人によって見え方が違うし、合わせるアイテムによっても雰囲気が変わってくるものだと思うから、イメージを決めすぎたくないという思いがあって。だから、手に取ってくださる方々に自由に楽しんでいただけたらうれしいですね」。ラインナップには、アウターやワンピース、パンツ、ブラウス、ニットなどが揃っており、シンプルなデザインもあればインパクトのある柄物も見つかる。さまざまな要素が混在していて、コーディネートが楽しくなるような内容だ。

 

シルエットやディテールに、独自のアイデアを注入

コレクションは、日常のシーンで着ることを前提にしながら、自身が欲しいと思うものをデザインしている。普段からアンテナを張って書き留めているというインスピレーションをもとにするほか、プライベートでもファッションが大好きという彼女ならではの発想からアイテムが生まれることも。「例えば、フロントを2重仕立てにしたMA-1ジャケットは、サイズの違う2着のMA-1を何気なく着て鏡の前に立ってみたらかわいかったという、偶然の発見をデザインに生かしました。それから、フード付きのコートは何にでも合わせやすいようにシンプルに作りましたが、中に着こんでいても腕が上げやすいとか、ウエスト周りをほどよく絞ったシルエットにしてもたつかないように見せるなどといった小さな工夫をしています。だから、実際に体を通してみてほしい! 私自身もそうなのですが、絶妙なフィット感や落ち感、動いた時の揺れ方などがキレイだと、気分があがりますよね。そういう高揚感を、日常の中で味わってもらえるような服を作っていきたい。着た時にその人だけの発見がある服を目指しているんです」

 

服作りという長年の夢に、全力投球でチャレンジ

自身のファッション哲学を思う存分詰め込んだこのブランドでは、素材選びに始まり、デザイン画のスケッチや生産の現場での打ち合わせ、サンプルチェックまで、全て彼女が目を通している。その仕事ぶりは、まさにフル回転。モデルというキャリアの延長線上にあるファッションブランドではない、本気の意気込みが伝わってくる。「いつか服を作りたいという気持ちはずっとあって、周りからも『ブランドをやる予定はないの?』なんて声もあがっていました。でも、やるならば自分の思いを形にできる環境でやりたかった。もともと、何事も一から取り組みたい性格なんです。そういうわけで、企業などのサポートを受ける形ではなく、100%個人出資でスタートしました」。30歳を過ぎた年ごろというタイミングも後押しに。「モデルの仕事もそうですが、もう一歩踏み込んだ仕事をしたいと、30代になって思うようになりました。自分の思い入れが強くて、後に残るものを……と」。

現場で出会ったクリエイティブな刺激

「13歳からモデルをスタートし、さまざまな服に出会い、プライベートではいわゆる“ギャル服”やステューシーのようなボーイズライクなファッション、キットソンやジューシー·クチュールなどのLAカジュアル……と、振り返ると本当にいろんな格好をしてきました。仕事のほうではいつしか、ファッション誌で連載も持たせていただくようになり、そういう場面で何を好きか尋ねられることが増えるにつれて私らしいスタイルがはっきりと見えてきて、同時にクリエイティブな仕事にも興味が出てきたんです。それで、雑誌を出版してみることにしました。雑誌作りでは、全てを決断して進めていくということを初めてやってみたのですが、自分が決めたことに結果も全部ついてくるんですよね。服作りには、さらに細かい決断がたくさんあって、例えばステッチの幅ひとつ、ファスナーの金具ひとつについても決める必要がある。まるで、一軒の家を建てるのに『壁紙に使う糊は何がいいですか?』とか『この柱に使う釘はどれがいいですか?』と尋ねられているような感覚でした(笑)」。

 

伝えていきたいのは、一歩先にあるファッションの楽しさ

試行錯誤しながらたどり着いたファーストシーズンがお披露目となり、バイヤーからの評判も上々。とは言っても、「マーケットが飽和状態、服が売れない」と叫ばれている時代。ブランドの未来を、どんなふうに見ているのだろう? 「現状は変化していくものだと思っています。ただ、今は情報も選択肢もたくさんあるけれど、若い世代は憧れのブランドなどを知らないまま、身の回りで手に入るもので満足しているという印象。それはもしかしたら、インスピレーションをくれる大人が減ってしまったからかもしれないし、世の中に“このシチュエーションではこれを着るべき”なんて答えや説明が多すぎるからかもしれないですね。

デートに着ていく服やモテるためのファッションといった見方には以前から疑問を抱いており、それこそがファッションを自由に楽しむイマジネーションを奪っているような気がします。だから『ラウタシー』では、次世代が身の回りから一歩先に手を伸ばして、自分をランクアップしてくれるものを掴む楽しみを伝えていきたいです。私自身がそうだったように、自分らしいスタイルというのは、さまざまなファッションを試して刺激を受けて、たどり着くものだと思うから」。

 

Lautashi(ラウタシー)
https://lautashi.com/
03-3797-3673 (ブランドニュース)

 

EVENT INFORMATION

9月20日から、2店舗でポップアップストア開催!


Lautashiの2017年秋冬コレクションを、伊勢丹新宿店とイセタン クローゼット ルクア イーレ/大阪のポップアップ・ストアの2店舗限定で販売。コレクションはLautashiのeコマースでも購入できるが、実店舗でのお披露目はこの期間限定ストアが初。実際に手にとり、服に触れる貴重な機会だ。Tシャツやポーチなど実店舗限定のアイテムもあり。伊勢丹新宿店は9月20日から9月25日まで、ルクア イーレは9月20日から9月26日までの開催となる。

伊勢丹新宿店 本館3階=センターパーク/ザ・ステージ#3 
TEL: (代表) 03-3352-1111
ルクア イーレ 4階 イセタン クローゼット/ザ・ステージ
TEL: (直通) 06-4301-3825

1/20
『Lautashi(ラウタシー)』デザイの画像_1
2/20
『Lautashi(ラウタシー)』デザイの画像_2
3/20
『Lautashi(ラウタシー)』デザイの画像_3
4/20
『Lautashi(ラウタシー)』デザイの画像_4
5/20
『Lautashi(ラウタシー)』デザイの画像_5
6/20
『Lautashi(ラウタシー)』デザイの画像_6
7/20
『Lautashi(ラウタシー)』デザイの画像_7
8/20
『Lautashi(ラウタシー)』デザイの画像_8
9/20
『Lautashi(ラウタシー)』デザイの画像_9
10/20
『Lautashi(ラウタシー)』デザイの画像_10
11/20
『Lautashi(ラウタシー)』デザイの画像_11
12/20
『Lautashi(ラウタシー)』デザイの画像_12
13/20
『Lautashi(ラウタシー)』デザイの画像_13
14/20
『Lautashi(ラウタシー)』デザイの画像_14
15/20
『Lautashi(ラウタシー)』デザイの画像_15
16/20
『Lautashi(ラウタシー)』デザイの画像_16
17/20
『Lautashi(ラウタシー)』デザイの画像_17
18/20
『Lautashi(ラウタシー)』デザイの画像_18
19/20
『Lautashi(ラウタシー)』デザイの画像_19
20/20
『Lautashi(ラウタシー)』デザイの画像_20
FEATURE
HELLO...!