人生を重ねるエモーショナル・ジュエリー。三林京子 その涙は、宝石

朝の連続テレビ小説での存在感ある演技も記憶に新しい、ベテラン女優・三林京子。生まれて初めて感情を揺さぶられたという映画『ローマの休日』(’53)に、自身の芳醇な人生の物語を重ねて。年月を経ても色あせない至極のジュエリーが、エモーショナルな結晶となって輝く。

※この特集中、以下の表記は略号になります。WG(ホワイトゴールド)、YG(イエローゴールド)、RG(ローズゴールド)

人生を重ねるエモーショナル・ジュエリー。の画像_1
“クラスター・シャンデリア・イヤリング”〈プラチナ、ダイヤモンド〉¥10,200,000/ハリー・ウィンストン クライアント インフォメーション(ハリー・ウィンストン) ニット¥180,000/ウールン商会(コロンボ)

初めて『ローマの休日』を観たとき、若い王女なのになんて大人やのって感動した。小学生やったけど余韻に浸ったのを覚えてる。

幼い三林さんが『ローマの休日』を初めて観て感じた高揚感を、計8カラット以上ものダイヤモンドが視線を奪うシャンデリア・イヤリングに託して。キラキラした気持ちを表現するのは、ハリー・ウィンストンが誇るペアシェイプ、マーキース、ラウンド型のダイヤモンド。それらを立体的に組み合わせることで、あらゆる角度から光を取り込めるデザインに。極細のプラチナワイヤーを使った画期的なセッティングで、宝石を肌の上に直接飾っているようなリッチなムードを楽しみたい。

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“ディーヴァドリーム”ネックレス〈WG、ルベライト、ダイヤモンド〉¥8,700,000・同 リング〈WG、ダイヤモンド〉¥954,000/ブルガリ ジャパン(ブルガリ) ジャケット¥50,000/H3O ファッションビュロー(チャンス)

アン王女にとっての初デート、何やっても楽しいわなぁ。グレゴリー・ペックが演じた記者には誰でも惚れてしまうやろ(笑)

アン王女と新聞記者のジョーがお忍びで繰り広げるたった一日のデート。イタリアの「ドルチェ・ヴィータ」を体現するブルガリの“ディーヴァドリーム”コレクションがそのワクワク感を表現する。着想源はローマの古代遺跡、カラカラ浴場の床を彩る扇形のモザイク画。グラマラスな扇形アイコンを、フェミニンかつ気品あふれるルベライトが彩る。リングでもラグジュアリーな輝きをリフレイン。存在感たっぷりのジュエリーが、自らの人生を謳歌する情熱的なヒロインにふさわしい輝きを放つ。

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ブローチ“プリュム ドゥ シャネル”〈WG、ダイヤモンド〉¥4,887,500(参考価格)/シャネル

どこで恋に落ちたかはわからないけど、気がついたら好きになってたんやろね。自制心も飛び越えて。

今まで経験したことのない自由やときめきに興奮しつつ、それが刹那的であることも自覚していたアン王女。その気高さに寄り添うのは、「翼を持たずに生まれてきたとしても、自分の翼が育つのを妨げてはならない」というガブリエル シャネルの言葉。プリュム(羽根)モチーフは、今も昔もメゾンにとって大切なインスピレーションのひとつ。彼女の自立心あふれるエスプリにオマージュを捧げ、優美なブローチが誕生した。当時のデザインの革新性はそのまま、羽根ならではの軽やかさ、繊細さ、そして自由な精神をモダンに。胸元にはもちろん、髪飾りとしても煌めきを添えてくれる。そのしなやかな曲線美に、見果てぬ夢と希望を託して。

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ブレスレット“ナクレアス ハンドカフ”〈K18WG、あこや真珠、南洋真珠、白蝶、ダイヤモンド、イエローサファイア〉¥7,400,000/TASAKI(TASAKI Atelier) ドレス¥180,000/ブラミンク

初めて他人を愛した、つまり生まれて初めて他人に心を許したってこと。現実を考えたら苦しいなあ。

楽しくて幸せだけど、苦しい。さまざまな感情が交錯し物思いにふける夜は、“真珠層のような”という意味を持つ“ナクレアス”を手に取って。幾重にも巻かれた真珠層の乱反射が、パールならではの艶やかで神秘的な虹色を手もとにもたらす。多面的な魅力に満ちたこの上なくエレガントな輝きは、オーガニックな流線形のラインで大胆にマッシュアップ。ダイヤモンドとイエローサファイアの存在感が、パールの持つ静謐な美しさを引き立てる。モダンなハンドカフブレスレットには、本物だけが放つことのできる真実の煌めきが。

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ペンダント〈YG、イエローダイヤモンド〉¥16,000,000/グラフダイヤモンズジャパン(グラフ) シャツ¥23,000/サザビーリーグ(ユニオンランチ)

きっと相思相愛やのにふたりは離れ離れになるなんて……。今思うと義務感に縛られすぎてる。

絶対的な現実の前に、別々の道を歩むことを決意するふたり。相手への思いと敬意が、稀少なイエローダイヤモンドの涙となってあふれ出す。カラーダイヤモンドはカッティングによって色彩が大きく変化するため、グラフでは自社工房で専門の熟練したカッターが原石のポテンシャルを最大限に引き出している。華やかな太陽を思わせるイエローのカラートーンは統一しつつ、ペア、オーバル、ラウンドのそれぞれが放つ個性的な煌めきに酔いしれて。胸元につけると3つのダイヤモンドがまっすぐに凛と並ぶペンダントは、高潔な愛の物語にふさわしい。

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“ブトン ドール”ネックレス¥9,360,000・同 イヤリング¥2,604,000〈ともにRG、マザーオブパール、ダイヤモンド、カーネリアン〉/ヴァン クリーフ&アーペルル デスク(ヴァン クリーフ&アーペル) タートルニット¥55,000/ブラミンク

今この年になって改めて映画を観ると、王女も記者もカメラマンも、みんな崇高なまでにプロフェッショナルやったなって感心する。

悲恋に終わるけれど、この映画の指し示す未来はどこかポジティブ。何十年たっても色あせることのない本作の魅力を、スパンコールを連ねたようなグラフィカルなデザインの“ブトンドール”に重ねた。光をやさしく反射するローズゴールドが、マザーオブパールの繊細な光沢と生命を象徴するカーネリアンを包み込む。仕上げには高貴に輝くダイヤモンドをセッティング。さまざまなピースが奏でるプレイフルなシンフォニー。これこそが人生の醍醐味なのかもしれない。

みつばやし きょうこ/Kyoko Mitsubayashi女優。大阪府出身。噺家・桂すずめとしても高座に上がる。現在放送中のNHK連続テレビ小説「スカーレット」で、昭和、平成、令和の3時代にわたって8作品目の朝ドラ出演を果たす。大阪市いちょう大学の初代学長、日本芸術文化振興基金運営委員も務める。2月には大阪松竹座で『なにわ夫婦八景』に出演予定。

SOURCE:SPUR 2020年3月号「人生を重ねるエモーショナル・ジュエリー」
model: Kyoko Mitsubayashi photography: Osamu Yokonami styling: Maki Yanagita hair: ABE〈M0〉 make-up: COCO〈sekikawa office〉 manicure: Ayaka Tanaka〈Salon N〉 edit: Akane Chuma

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