塩塚モエカが紡ぐ、ことばの魔法「ブローチは歌う」

手に取って眺めれば、あるいは身につけると、不思議と気持ちがなぐさめられて、ほんの少し勇気がわいてくる。そんなブローチの特別な魅力は、アーティスト・塩塚モエカの個性にもつながって。

おとぎ話のプリンセスが身につけていたような、まばゆく輝くスノーフレーク。ダイヤモンドの繊細なセッティングが、塩塚が紡ぐ センシティブな世界観と重なる。

ダイヤモンドブローチ〈Pt、WG、DIA〉¥14,040,000、イヤリング〈YG、WG、DIA、ラピスラズリ〉¥2,160,000/ヴァン クリーフ&アーペル ル デスク(ヴァン クリーフ&アーペル) 襟つきの赤いミニドレス¥301,000/マーク ジェイコブス カスタマーセンター(マーク ジェイコブス)

デザイン違いのパールのブローチをリズミカルに並べれば、いつもの風景が少し違って見える。

ブローチ(上から)〈あこや真珠、WG、DIA〉¥653,000、〈あこや真珠、WG、DIA、オパール〉¥480,000、〈あこや真珠、SV〉¥69,000、〈あこや真珠、WG、DIA〉¥424,000、〈あこや真珠、WG、DIA〉¥710,000、リング〈あこや真珠、WG〉¥72,000/ミキモト カスタマーズ・サービスセンター(ミキモト) カーディガン¥150,000、花柄ブラウス¥110,000/ブラミンク デニムパンツ¥24,000/オーラリー

弧を描きながら伸びるゴールドの茎と、鮮やかに咲く一輪の赤い花。花言葉は知らないけれど、これを耳もとに飾るのは私が少し強くなるためのおまじない。

髪飾りにしたブローチ〈YG、シルク〉¥430,000/ティファニー・アンド・カンパニー・ジャパン・インク(ティファニー) ジャケット¥88,000、シャツドレス¥52,000/オーラリー

しなやかな強さを象徴するモチーフをカフリンクスのようにあしらう。ブローチの楽しみ方は、思うよりも自由!

ライオンモチーフのブローチ〈YG、DIA〉¥2,230,000、ブローチにもなるコメットのペンダントトップ〈WG、DIA〉¥2,910,000、リング(上から)〈WG〉¥142,000、〈YG〉¥131,000、〈WG、DIA〉¥345,000、ミニドレス、中に着た白いブラウス(ともに参考商品)/シャネル

聴く人の日常に寄り添う、お守りみたいな音楽を作りたい

「ブローチって、かわいいですね。ひとつつけるだけでお洋服の見え方が変わるし、気持ちもパッと明るくなる感じがするというか。それに作りがすごくきれいだから、眺めているだけでポジティブになれるというか……守ってくれそうですよね」

撮影終了後、ポツポツと、少しハスキーな声でそう語ってくれた塩塚モエカさん。彼女はスリーピースロックバンド「羊文学」のギターボーカルで、全曲、作詞作曲も担当する。12月に発売されたばかりのニューアルバム『POWERS』もそうだ。

「このアルバムは、聴いてくれる人の『お守り』みたいな存在になればいいなと思って作りました。2020年はコロナでいろんなことが変わってしまったけど、私にとっては大学を卒業してひとり暮らしを始めた年でもあって。部屋の中にずっとひとりでこもって、でもネットを見るとその間に世界はどんどん動いていて。何かよりどころ……ちょっとした『光』みたいなものがほしい、そう思って、お守りというテーマに行きついたんです」

彼女が紡ぐ言葉は、ふんわりとやわらかい。それでいて、聴く人の感情をゆさぶる何かがある。

「私は曲を作って、声を出してそれを歌う立場にあるので、自分自身が本当に思ってることじゃないと表現しづらい。たとえば、今回のアルバムの中の『powers』という曲。作ったのは’19年なんですが、コロナ後に聞いてみると歌詞がなんだかしっくりこなかった。〝もっと頑張って、声をあげれば未来は変わる〟と思って作った曲だけど、’20年、自分自 身いろんな葛藤を経験しました。そしたら『未来は変わる』じゃなくて、『変わるかもね』かなって。激励っていうよりも、もう少し軽く『いけんじゃない?』みたいな。そういうふうに捉え直して、歌詞を書き直してみたんです」

押しつけのないやさしさと強さは、今の時代にもっとも必要とされているものかもしれない。これからの活動について尋ねると、静かな意欲をのぞかせた。

「先日VRやCGを使ったオンラインフェスに出演したのですが、特にライブについては新しいことに挑戦していきたいですね。音楽全体のことでいうと……なんていうか、音楽が暮らしに溶け込んだらいいなって。たとえば映画だと、まるごとそっちの世界に自分が移ることになるけど、音楽は自分の世界にいながらにして、世界の見え方を少しだけ変えることができる。そこがすごく面白い。これからも聴く人の日常に寄り添う音楽を作っていきたいと思っています」

Moeka Shiotsuka

1996年生まれ。繊細かつ力強い楽曲を、透明感ある歌声と浮揚感あるパフォーマンスで表現。初のメジャーアルバム『POWERS』をリリース。2021年1月から3都市+オンライン公演のライブツアーを予定。https://www.hitsujibungaku.info/

※この特集中、以下の表記は略号になります。Pt(プラチナ)、WG(ホワイトゴールド)、YG(イエローゴールド)、DIA(ダイヤモンド)、SV(シルバー)

JASRAC 出 2009310-001

SOURCE:SPUR 2021年2月号「ブローチは歌う」
model & calligraphy: Moeka Shiotsuka photography: Saki Omi 〈io〉 styling: Naomi Shimizu hair & make-up: kika

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