【更年期障害】のリアル。アナウンサー堀井美香さんが語る「どうして誰も私のことをわかってくれないの?」。読者3人の更年期実体験談も

女性の多くが、ある一定の年齢を過ぎると向き合う、更年期による変化や不調。症状や始まる時期、終わり方などの更年期事情は十人十色だ。実際にその時期を迎えた女性たちは、何に悩んで、どんなことが起こり、どう対処しているのだろう? 更年期を体験した、もしくは乗り越えた女性たちに、それぞれの更年期事情を伺った。

「更年期は通過点」堀井美香さんにインタビュー

この3月で51歳になったばかり。あどけなさの残る少女のような面影と、幸せそうな笑顔が印象的なフリーアナウンサーの堀井美香さん。一見、更年期の悩みとは無縁のように思えるが、「いえいえ、どっぷり真っ只中です(笑)」と堀井さん。それはいつ頃始まって、どんな症状に悩まされているのか。昨年、フリーとして新たな活動を始めたばかりの仕事に支障はなかったのか、実際にどう対処したのか。その真相をじっくり伺った。終始笑いを交えて語ってくれたその内容に、更年期をこれから迎える人も、今、真っ最中の人も、大いに勇気づけられること必至。

堀井美香


1972年生まれ、秋田県出身。1995年にTBS入社。2022年にTBSテレビを退社し、現在はフリーアナウンサーとして活動中。ジェーン・スーと共に人気ポッドキャスト「OVER THE SUN」を配信。

何をする気も起こらず、ただ悲しくなるだけの毎日

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➖更年期の症状を感じるようになったのはいつ頃でしたか?

1年半ほど前からだと思います。何をしていても悲くなったり、いろんなことが切なく感じたりするようになってしまったんです。以前からそういうところがあったのですが、それ以上に感情がマイナスの方向に大きく揺さぶられる自分がいて……。そうなってしまう原因は、普段は全く何とも思わないような家族や仕事の些細な悩みでしたが、いろんなことに非常に傷つきやすくなってしまって。
更年期が来ることは先輩たちから聞いていたので予測していましたが、私の場合は身体的な症状がほとんどなく、感情の揺れ動きがメイン。だから最初は日々の生活の中で悲しくなっているだけなんだろうな、という感じだったんです。

➖更年期だと自覚したのはどんな時でしたか?

閉経を前にして、生理が半年止まったと思えばまた始まったり、不安定になりました。ちょうどその頃本当にやる気がなく、どこにも行きたくないという日が長く続いたんです。これは更年期なのかもしれないと。
とは言っても、気持ちの落ち込みが激しいので、「更年期だから何かしよう」とも思えず、ただただ毎日やる気がなくて、だるくて……。
朝、夫や子どもが外出したら、ソファーに横になってそのまま動きたくなくなってしまうんです。でも仕事をたくさん入れていたので、「このまま仕事に行かないと、みんな大変なことになって、私は後から謝りのメールを何件も入れなければならない」と思うと、行かずにはいられなくて(笑)。仕事に行ったら行ったで、笑ったり喋ったりするから、帰りはテンションが少し上がるんです。切れていたバッテリーが仕事で充電される、という日々の繰り返しで、思えば仕事に助けられた毎日でした。

感情が昂って花瓶を投げつけたことも

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➖更年期の症状によって仕事や生活に支障をきたしたことはありますか?

仕事はちゃんとできたのですが、家に帰ると本当に恐ろしいくらい怠惰な人間になってしまうんです。子どもたちが親離れしたこともあって、見本を示したり家の中でもちゃんとしたりする必要がなくなり、いろいろ省くようになってしまって。たとえば、素敵なものを選ぼうとか、テンションの上がる料理を作ろうとか、そういうプラスなことをしようという気持ちがなくなっちゃうんですよね。どっちでもいいや、何でもいいや、どうでもいいや、というのが常にありました。

➖その時ご家族はどうでしたか?

症状が出始めた頃、私がひどく荒れた時期がありました。当時は誰も更年期障害だとは思っていなくて、家族は「忙しすぎるからだよ」「ストレスが溜まっているんだよ」などとフォローしてくれたのですが、当時のことを振り返ってみると「あれは、絶対更年期障害だったよね」と。家にあった花瓶を投げたこともありました(笑)。家族は相当びっくりしたと思います。今まで大丈夫だったことが、急に嫌になってしまうんです。トイレットペーパーの付け方一つとっても、「こうしてほしい」とお願いしているのに誰もしてくれないと、本当に悲しくて。「私のことなんて、何も聞いてくれない!誰もわかってくれない!」という衝動で花瓶を投げてしまいました(笑)。

カプセルホテルに3週間滞在「泣きながら気持ちを落ち着けた」

➖それは、大変。どう対処しましたか?

これはしばらく一人になった方がいいと、カプセルホテルの旅に。3週間ほど宿泊しました。
実は、最初は素敵なホテルに泊まったんです。でも、バスローブを着て髪を乾かす自分がなんだか優雅すぎて、急に悲しくなってきてしまって。「なんで私は一人でこんなことをやっているんだろう」と思って、次の日からカプセルホテルに(笑)。優雅な自分が許せなかったんですね。「私はそんな人間じゃない」とか、「存在していたらダメ」とか、“私なんて”の極地にいたので。結果、カプセルホテルでもずっと泣いていました。食事も外に出る気力はなく、メロンパンをこぼさないように、にぎにぎ固めて食べる(笑)。ある意味面白かったです。もちろんその時は真剣だったんですが。
宿泊中に一度、誰もいない時に家へ帰ったのですが、家の中がとても片付いていて、なんならいい匂いなんかしてくるわけです。「あー、この人たちは私がいなくてもちゃんとやっているんだ」と思い、また悲しくなる(笑)。何とも言えない感情でした。
家族みんなにそれぞれの居場所ができて、私が作ってきた家族の形みたいなものからどんどん離れていった時期だったんでしょうね。それに対する複雑な気持ちが、自分の更年期と重なって、大きな感情の揺れとして現れたのかもしれません。

クリニックで現状を数値化したら、徐々にもやもやが解消

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➖クリニックは受診されましたか?

プライベートや仕事を通じて先輩方と話す機会があり、私の症状を話したら、「それ、絶対に更年期だから!」と。そして「更年期なのかと不安に思うより、クリニックなどでちゃんと症状を数値化して、自分の現状をわかった方がいい。対処法はたくさんあるから、メソメソしていないでどんどん受診して、どんどん改善していった方がいい」とのアドバイスにより受診しました。

➖診断結果は?

いわゆるホルモンドッグを受けて、ホルモン量やバランス、血液や骨密度など体の数値をいろいろ調べました。症状がひどいから、自分は相当悪いと思っていたのですが、結果は全く異常なし(笑)。甘いもの好きで栄養も偏りがちだったので、体脂肪率や骨密度などボロボロだと思っていたのですが、すごく優秀ですと言われて。あれ?と思いましたが、ちゃんと数値化することで、もやもやしていたものが少し解消できたと思います。
処方薬は必要なかったのですが、先輩方から勧められてサプリメントでエクオールを摂取するようにしました。飲んだら、本当に感情の起伏が抑えられたんです。

自分へのご褒美を用意しておけば、いろいろ乗り切れると学習

➖今、症状的にはどんな状態ですか?

気分の沈む日の頻度がだいぶ減ってきて、症状は改善されてきたように思います。2年以上もこういう状態が続いていたので、沈む日の後に、ちゃんと気分の晴れる日が来ると、学習できているんです。
実は、娘と地方へコンサートに行ったことがあって、それがとても楽しかったんです。自分にちょっとしたご褒美を贈るみたいで、すごく気持ちが上がりました。そこから学んで、落ち込んだ時は落ち込むままにまかせますが、テンションが高い時に、自分の好きなイベントや友達との予定を、少し遠目の日程に入れたり約束したりしておくんです。落ち込んだ周期がやってきても、「2週間後に楽しみがある」と思えば、だんだん坂を上っていくようにテンションを上げていくことができます。

➖堀井さんにとって更年期とは?

更年期を迎えて、体への肉のつき方などが以前と全然違ってきているのを実感し、整体や歩くことを積極的に取り入れるようになりました。更年期は、ある意味自分と向き合うよい機会なのだと思います。私たち世代の合言葉というか、アイコンみたいな感じで「それは更年期よ!」「更年期だから!」という話をよくしますが(笑)、その言葉がなければ、ちょっと悶々としていたかもしれません。更年期という言葉があるから、みんなが繋がれて、助け合えるし知恵ももらえます。更年期という言葉一つでまとめようとするのは良くないですが、笑って更年期を共有して「私、更年期なのよ」と言える人が増えるのはとてもよいことだと思います。

更年期は、新しい自分と向き合える期間

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➖これから更年期を迎える方、今真っ只中の方へのメッセージをお願いします。

更年期は、いずれは過ぎ去るもの。先輩方から言わせると“通過点”らしいので、ここで「自分はダメ」などと思わずに、新しい自分がこれから生まれるんだと思ってください。先輩方によると、頻尿や口が乾いたり膝が曲がらなかったり、新しい問題が次から次へとやってくるらしく、「あなたの更年期はまだまだ入口〜!」と言うので、一緒に笑っています。明るくたくましい先輩方を見ていると、自分も明るくたくましく、新しい自分に向き合おうと思えます。

 

3人の読者が語る、それぞれの更年期

現在ホルモン補充療法で治療中、治療法を模索中、すでに更年期を終えている、という異なる立場の3人の読者にインタビュー。抱える悩みや現在進行形で直面している症状、治療について、どうやって更年期が明けたのかなど、それぞれの事情を赤裸々に語ってもらった。

ホルモン補充療法で治療中のKさん:会社員(45歳)

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― 更年期障害の症状を感じるようになったのはいつ頃ですか?

44歳の頃、頭の片隅にザワザワ感を覚えるようになり、仕事に集中できないことが頻発していました。加えてある時、店で試着をしようと思ったら、店員さんにも心配されるほど汗をかいてしまったんです。「もしかして更年期?」と思い、すぐに市販薬を検索。思い返せば元々かなり生理が重かったのですが、更年期の症状が出始めた頃から鎮痛剤を飲む量が減り、生理が軽くなってきたように思います。

― その後、病院には行きましたか?

まずはツムラ漢方の「桂枝茯苓丸」を購入。飲み始めて1ヶ月程度は症状が落ち着いていましたが、頭のザワザワ感がまた出てきたので病院へ行きました。遠回りせずに治療がしたかったので、症状と服用している薬、どうしたいかをあらかじめメモにまとめていき、先生に伝えました。すぐにホルモン値を測ってもらったのですが、やはり年齢の割にはホルモン値が低いことがわかり、漢方薬を処方してもらうことにしました。

― 今も治療を続けていますか?

3ヶ月ほど漢方を飲んでいましたが、今度は元々あった頻尿の症状が悪化しているのを感じて、先生に相談しました。更年期の症状が進行しているとのことで、ホルモン補充に「ジュリナ錠」と「エフメノカプセル」を処方してもらっています。服用すると症状も少なく快適なので、しばらくは続けるつもりです。肌の乾燥にも悩まされていましたが、それも落ち着き「自分の肌が戻ってきた!」と感じられたのも嬉しかったです。

― 更年期だとわかった時、どう感じましたか?

「生理とおさらばできてラッキー!」と思いつつ、平均より早く更年期と診断されたのは、少しショックでした。重い生理痛に悩まされてきたし、今から子どもが欲しいわけではないのですが、やはりなんとなく複雑な気持ちにはなりました。閉経時期を過ぎてもイキイキしていて素敵な方もたくさんいるし、更年期自体がネガティブなものではないとわかっているのですが。

― 更年期に悩む方へのメッセージを。

話せるなら身近な人にどんどん相談するといいと思います。そうするとたくさん情報が入ってきて、その中から自分に合う選択肢が出てくるはず。私は「薬を飲んでおけばよかった」という先輩の話も聞いていたので、まずは試してみて、自分に合わなかったらやめればいいかな、と思っていました。今悩んでいるなら、ぜひ一度病院に相談したり市販薬にトライしてみてください。

更年期の治療法を模索中のTさん:パラレルワーカー(47歳)

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― 更年期障害の症状を感じるようになったのはいつ頃ですか?

はっきりと感じ始めたのは一年ほど前です。39歳で出産したので、産後うつとグラデーションを描きながら始まった気がします。さらに今は中間管理職として仕事も忙しく、その疲れも相まって症状を感じるようになりました。症状としては、冷えのぼせや、注意散漫といったもの。生理周期も以前より短くなり、明らかに身体が変わってきたことを実感しています。

― 症状が生活に支障をきたすことはありますか?

一番悩んでいるのは、頭のモヤモヤです。急に頭にノイズが入ったように混乱してしまい、今まではパッパッと判断できていたものができなくなってしまうんです。そのせいで「今ややこしい話をしないで!」と子どもに当たってしまったこともあります。
ある日、辛い仕事の帰りのバスで急に号泣して、泣き続けてしまったことも。立場上、イライラしたり感情を出したりしてはいけないと思っていたのですが、ずっと心の中に留めていたものが一気に出てきてしまいました。今までこんなことはなく、感情をコントロールしてきた方なので、余計にショックでした。

― 病院には行きましたか?

ピルの処方で通っていた婦人科の看護師さんに更年期の症状を話したら、「週一で更年期の相談ができる医者が来ているから、相談してみては?」と言われたんです。そこで一度ホルモン値を測ったところ、値的にはまだそこのクリニックが推奨するホルモン治療の基準に達していなかったようで、漢方薬の処方のみされました。でも症状が緩和されないので、個人的には早くホルモン治療に進みたいと思っているのですが。

― 症状に対して何かセルフケアはしていますか?

混乱している時は言葉を減らしたり、イヤホンでクラシック音楽を聴いたりして、周りをシャットダウンして、個の世界をつくっています。あとは何も考えなくてもいいC級ドラマを流し見しすることも(笑)。お気に入りのハンドクリームをつけたり、ネックレスのチャームだけ変えてみたり、自分の手の届く範囲で、ちょっとだけ幸せな気持ちになれることを実践しています。

― 更年期に悩む方へのメッセージを。

少しでも元気がある日に、クリニックに行ってみてください。薬や治療法と相性が良いのなら、治療をしながら更年期を過ごした方が楽。「更年期は苦しいもの」というのは、「痛みを感じて産まないと出産じゃない」という考えと少し似ているなと感じました。更年期をわざわざ苦しんで過ごす必要はないと思います。

更年期を乗り越えたYさん:フリーランス(65歳)

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― 更年期障害の症状を感じるようになったのはいつ頃ですか?

45歳くらいからホットフラッシュの症状が始まりました。最初はのぼせているくらいでしたが、だんだん耳の後ろから滝のような汗が出るようになりました。お茶を習っていたんですが、いざお茶を点てるぞという時にいつも汗が噴き出てきたんです。大体緊張してから10〜15分くらいで症状が出始めました。

― その時はどう対処しましたか?

汗はある程度仕方ないと思っていたので、いつもハンカチと扇子を持ち歩くようにしていました。真冬でも暖房がきついと汗が出るので、その二つは一年中必須アイテム! ホットフラッシュは対処できましたが、50歳で閉経してからが大変でした。元は明るい性格でしたが、急に気分の落ち込みが激しくなり、倦怠感に悩まされました。何もしたくなかったけれどフリーランスなので仕事を辞めるわけにもいかず、毎日帰宅してから電卓と睨めっこの日々。将来を考え、試算しては「仕事はやめられない……」と落ち込み、さらに気力がなくなるという悪循環。

― 病院には行きましたか?

生活に支障をきたすほどの症状じゃないと思っていたので、病院に行くまでもないと感じていたんです。市販の漢方薬も高いからと躊躇してしまいました。いろいろ考えるのが面倒だったというのもありますが(笑)。ただ、知人に勧められて「命の母A」を飲み始めてみたら、なんとなく心が穏やかになりました。

― 更年期が終わったと感じたのはどのタイミングでしたか?

ひょんなことで「抜ける」と聞いていましたが、本当にある日、スコンと抜けたんです。きっかけは雑誌の占いでした。「何かから逃れようとして違うことをやり始めて、それがあなたに何をもたらしましたか? 戻ってきなさい」と書いてあって、読んだ瞬間に気持ちがスッと楽になったんです。ちょうど55歳の時。そこから電卓をたたかなくなりました。

― 更年期に悩む方へのメッセージを。

不安だと思ったら、ささいな症状でも婦人科や専門のクリニックに行っていいと思います。私は行かない選択をしたけれど、もしかしたら行ったほうがよかったのかも?と、更年期を終えた今だからこそ思います。病院に行って何もなかったらなかったでいいことだし、気軽に相談できる場所を見つけておくに越したことはありません。

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