森千波がクリエイトするタイムレスなTian

インスタグラムで多くの作品を発表している日本人テキスタイルデザイナー森千波氏。スカーフに用いられているのは、日本の織物技術「さをり」織りです。これはスカーフのありふれた構造を緩い糸や毛糸玉、フリンジで塞ぐというフリースタイルの手法で、機能的で素晴らしいファッションのキュビストといえるでしょう。

森氏は、実の祖母をモデルにするという斬新な発想で、急速に人気が高まっているアーティストです。GucciGramのサイトでは、見ている人を思わず笑顔にするような表情を浮かべるモデルの恵美子さんを見ることができます。着用しているのはグッチのティアン プリントがあしらわれたドレスと、千波氏を象徴するレインボーカラーのヘッドバンド。この作品と、そして彼女のインターネット上での大きな存在感が、真のファッションはタイムレスであることを物語っています。

楊 一楽が考える光と影のTian

日本在住アーティスト楊 一楽(よう いちらく)の芸術は、光と交わる様々な方法の瞑想です。光を人生の源であり、潜在的に暴力が存在する場所としてとらえています。

彼女の作品には、水平方向に飛び散る花火のなかで倒れる女性の姿や、背中を照らす強烈な光に痛みを感じて前かがみになる裸の男性など、ときにぞっとするような写真が見られます。しかし同時に、白とギンガムチェックのドレスを身に纏った女性が、まるで光を浴びることで重力に反して浮いているような、穏やかな作品もあります。

楊がグッチのために作った作品では、日本の伝統的な刺青と、彼女がティアンに感じた「閉じ込められた野生生物」という感覚を取り入れて、光が用いられました。暗い空間の中にいる1人の人物と壁面にティアン プリントをプロジェクターで映しだしています。そこでは、壁紙という平面プリントと刺青という3次元の立体的なプリントという対比も見ることができます。

羽坂譲人が創造する、東京のTian

日本人フォトグラファー、羽坂譲人氏にとって、東京はカンヴァスです。アーティストにとって常に可能性に満ちている街ですが、羽坂氏はその都市構造をアートに変えます。

この作品では、渋谷を象徴する「109」にグッチのティアンプリントを重ね、高層ビルのファサードには植物のつると鳥たちを配しています。美しくもあり、やや不気味でもあるそのエフェクトは、まるで世界で最も人工的な都会にジャングルが出現したよう。

フランスのシチュエーショニスト（状況主義者）たちは、日常生活の無感覚状態を断ち切ろうと、彼らがビーチと呼ぶ敷石の下にあるものを暴こうとしました。羽坂氏はバーチャルなストリートアートをもって同じような目的を達成し、見る者にこの都市との関係を見直すよう迫ります。

QTAが描いた少女に見るTianとは？

人形のパーツからなる昆虫やブーケ、月にキスをしようと身を乗り出す少女、草が生い茂る穏やかな谷の上を飛ぶ鳥と女性が合体した生き物。

ファッション、ランドスケープ、クラフトがぶつかり合うQTAの奇抜なコラージュには、あらゆるカテゴリーからの要素が登場します。

QTAによるグッチとのリミックスは、テイアン プリントのモチーフからイメージの題材となるフレームを作り出し、本来、平面的なものと思われているコラージュに三次元空間を生み出しています。

和の様相を持ったモデルの、見えていない部分が鑑賞者の想像を膨らませ、浮かび上がるパーツが投げかける疑問は、鑑賞者とアート作品との距離を縮めるきっかけを与えてくれるのです。