コレクションサーキットを経て、再び無限に広がるクリエーション

パリでのコレクションサーキットを終えた10月中旬。陽射しが差し込む抜けのいいアトリエに、加茂さんの姿はあった。その指先はすでに新たなものを生み出している。「ここ数年はプロップの演出もしていて。雑誌でのジュエリーやバッグの特集の中で、自作のアートピースを絡ませてフォトグラファーとともにストーリーをつくることもあります。ヘアの仕事も、ヘッドピースを創る事も、プロップの演出をすることも、自分の中にはまったく壁のないひとつのことですね」。そして、アトリエの壁に目をやると、そこには小さな写真が一面に。「今まで創ったヘッドピースを写真におさめたものです。これらをまとめた写真集を進行していたんですが、実はこないだちょっと立ち止まって考えたことがあって。自分の作品はある時間の流れの中で完成したものであって、その説明がなければ、大したことではないんじゃないかって。それが生まれた時代背景や実際にそのヘッドピースをしてランウェイを歩くモデルの写真とともに伝えなければ、これにはなんの意味もないんじゃないか…。そう思ったんです。それで、自分ですべて再編集しようと、こうして壁にすべて貼り出しているんです」。いつでも何がベストかを考え、ベストのために諦めない。言葉にするとシンプルだが、それを体現し、キャリアを重ねてきたのが加茂さんだ。「最近は“若い世代に残す”ということについて考えるようになりました。情報も多くて、いろんなことが飽和しているいまだからこそ、ちゃんとした形で伝えたい。そう思うんです」。加茂さんが見ている世界はいつも壮大で、その指先は常に繊細。伝説を紡ぐ人、というのはこういう人だ。

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