
花嫁にも、結婚式にお呼ばれしたときにも。香水の選び方やマナーについて
日本では梅雨のシーズンだけれど、6月はジューンブライドの季節。結婚する人や結婚式に呼ばれる機会が増えるもの。嗅覚は五感の中でも最も記憶に働きかける器官。人生のハイライトの一つであるウエディング、心に残る香りを添えるならどんな香りがいい? 香水にまつわる歴史と香料に関する豊富な知識で、フレグランスアドバイザーとして各方面で活躍するMAHOさんに話を伺った。
お呼ばれ側なら式に花を添えるようなローズフレグランスを
タイラ 参列する側がフレグランスをつけるなら、どういうものがいいですか? 新郎新婦になる機会より、やはり招かれる回数の方が多いので。
MAHO 主役はあくまでも新郎新婦なので、ゲストはあまり主張しすぎない香りがよいですね。きっと会場にもお花があふれているのでそれらと無理なく調和するなら、ローズ系でしょうか。
タイラ ひとくちにローズと言っても、いろいろありますからね。バラって主役感があるから難しいです。
MAHO たしかに。華やかでみずみずしく、軽やかなローズということなら、ブルガリの「ローズ ゴルデア ブロッサム ディライト」なんてどうでしょうか? 夜明け前のみずみずしい蕾からゆっくりと花開く瞬間がイメージなんですよ。
タイラ バラの葉のグリーン香のニュアンスもあって、まさに6月初旬のバラ園に漂う香りみたい。ブライズメイド全員、お揃いでつけるといいかも~!
MAHO それも素敵なアイデアですね。美しい香りとともに、末永くお幸せに♡
ヴィクトリア女王が定着させた、オレンジブロッサムの香り
タイラ 結婚式、主役である花嫁がつけるなら?
MAHO 花嫁は基本、ご自身がリラックスして挙式に臨めるなら、なんでもお好きなものをおつけになっていいと思うんです。ただウェディングらしさを意識したいということであれば、純真さや純潔などのイメージのある清らかなホワイトフローラル系でしょうか。
タイラ やはり純白のウェディングドレスに合わせるとそういうイメージになりますね。
MAHO 白いウェディングドレスが定番化したのは、19世紀のイギリス・ヴィクトリア女王が婚礼に純白のドレスを選んだことからと言われています。そこにオレンジブロッサムの花冠を被ったり、ドレスに刺しゅうをしたりしたため、オレンジブロッサムやネロリ(過去記事・「ネロリって何の花?」参照)の香りがウェディングを想起させるものとして受け継がれ、親しまれていますね。フレグランス素材としても欠かせない、魅力的な香りを放つ花です。
タイラ 確かに、地中海周辺では花嫁の寝室をネロリで満たす風習もあると聞いたことがあります。
MAHO 女王×フレグランス繋がりでいえば、イタリアからフランスへ嫁ぐカトリーヌ・ド・メディチが献上品として運んだサンタ・マリア・ノヴェッラ最古のフレグランス、アクア デッラ レジーナもあります(過去記事・「香調別・香水はどこに何プッシュするのが良い?」参照)。
タイラ ネロリやラベンダーの爽やかな香りで、白いウェディングドレスに似合いそう!
MAHO そんなオレンジブロッサムの香りで結婚式にぴったりのフレグランスとしてお勧めなのがパルファン・ロジーヌ パリの「ヴィーヴ・ラ・マリエ」。パルファン・ロジーヌ パリは、すべて創業者の庭に咲くバラの花にインスパイアされた香りだけを作り続けているブランドです。この香りの着想源は、真珠のような花びらをもつ「ムスリーヌ ローズ」とのこと。ネロリやオレンジブロッサム、ジャスミンなどが奏でる繊細なホワイトフローラルはまるで香りのマリッジブーケ。
タイラ ボトルもパーリーホワイトでチュールまでついてる!
MAHO 新居でウェディングフォトと一緒に飾るのも素敵じゃないです?
タイラ なんてロマンティック♡
王道婚、大人婚、自由婚……さまざまな結婚の形を彩る香り
タイラ 花嫁の首もとを飾るパールも定番ですが、結婚指輪はやっぱりダイヤモンド、ティファイニーと連想ゲームをしてしまう(笑)。
MAHO ティファニーには「&ラブ フォーハー」と「&ラブ フォーヒム」という香りがあります。レディースとメンズに共通して香るのが、ブルーセコイア。「フォーハー」にはティファニーのためだけに開発されたブルーバジルも、トップで清々しく香るんですよ。ティファニーといえば誰もが思い浮かぶのが、あの“ティファニーブルー”ですからね。
タイラ 結婚式で永遠に続く幸せを願うジンクス、サムシングブルーを香りで取り入れちゃう?
MAHO というのも素敵じゃないですか。
タイラ おしゃれ~!
タイラ 私が結婚式の香りと聞いて思い出すのがエスティ ローダーの「ビューティフル」。花嫁の一日の微笑ましい瞬間を描いた広告がすごく印象に残っています。
MAHO そうそう、とっても素敵でしたよね。小さな男の子がタキシード着て、花嫁の控室を覗いているものとか、シリーズでいろいろありました。「ビューティフル」は可憐な年若い花嫁というより、アメリカのセレブリティを思わせる自立した大人の女性に似合うイメージ。
タイラ 大人婚ですね。たくさんの花々で綴る、本当に芳しい香りは「ビューティフル」という香水名通りです。
MAHO 今や結婚の形もさまざまですからね。バイレードの「フラワーヘッド」は、創業者のベン・ゴーラムがインドの結婚式に参列したときに着想を得た香りなんだとか。インドのゴージャスで華やかな、極彩色にあふれる結婚式で、新郎新婦の頭を飾るレイから香る濃密な花々の香りがイメージ。王道の結婚式とはまた違った華やかさと明るさ、ポジティブなムードにあふれていて素敵ですよ。
結婚式は主役の二人はもちろん、参列する周りも幸せな気持ちになれるハッピーなイベント。二人の新しい門出を祝うフレグランスは、人生のハイライトの一つとなる結婚式の記憶を長く心に留めることにも役立つはず。結婚の予定のある人はイメージに合うフレグランスを、予定のない人も幸せなご縁をフレグランスがもたらすことを祈って。

日本フレグランス協会常任講師。香水のイベントやセミナーのほか、国内外・新旧合わせて500種以上の香水と天然・合成香料をそろえるプライベートサロンを主宰。フレグランスの経験値や嗜好を対話から探り、その人に合ったフレグランスを紹介する個人カウンセリングも大人気(プライベートトワレ private-toilette.com)

取材歴30年。SPURのフレグランス企画の連載担当ライターとして活躍。この連載を機にフレグランスの世界に魅せられ、現在は資格取得を目指してフレグランスの歴史やトレンドを学び直し中。