早いもので2025年もラスト1カ月。月2回配信の本連載では、往年の名香から最旬の香りまで、さまざまなフレグランスを紹介してきた。今回はいつもと趣向を変えて、人気ブランド別に2025年のヒット香水を振り返る。
10年ぶりに登場した5つ目のチャンス!
チャンスはもともとファンの多い人気製品でしたが、「チャンス オー スプランディド」は10年ぶりの新作ということもあって、発売前から日本をはじめとする世界中で、大きな注目が集まりました。チャンスの中でこれまで人気だったオー タンドゥルに匹敵するほど、多くのお客様から愛される香りに成長しました。
── シャネル香水・化粧品本部PR鷲尾ありささん
【SPUR的考察】
4月のローンチ時のイベントでサンプルを手にしたという複数の友人・知人から、「シャネルの新しい香り、すごくいい香り」「紫色のチャンス、大人っぽくて欲しくなった」などの声が続々届き、その時点でヒットを確信。甘酸っぱいラズベリーを主役に、チャンスの中でも最もフルーティな印象だ。後に続くローズ ゼラニウムやセダーやホワイトムスクによる、ウッディでパウダリーなノートへと変化していく過程がユニークかつミステリアス。今、ネクストトレンドとして注目されるベリーの香りをいち早く取り入れているのも、さすがシャネル。
SNSや口コミで人気急上昇のオルフェオン
「友人からあまりにもいい香りがしたので、どの香水を使っているのか聞いて購入しに来ました」というお客様がブティックに数多くいらっしゃるほど、口コミ人気を実感。現在ではオンラインストアとブティック共に常に売り上げ上位にランクインする香りになっています。
── PR & コミュニケーション シニアマネージャー 高田志保さん
【SPUR的考察】
フレッシュなフローラル「ド ソン」やホワイトムスクの「フルール ドゥ ポー」、爽やかなウッディ調の「フィロシコス」などの定番的人気の香りかと思いきや、“この香りを知っていたらかなり通でしょ?”な「オルフェオン」とは! タバコの煙の渦とおしろいの残り香。温もりと甘さのあるトンカビーンにシダーの深み。スモーキー、パウダリー、グルマン、爽やかで軽やかなウッディ……流行の香りの要素をふんだんに含みながら、それらが混然一体となって見事に調和している。ディプティックの顧客の香り経験値の高さにびっくり。
新作売上で、過去最高を更新したネバーエンディングサマー
風光明媚なイタリアの観光名所として知られるアマルフィ海岸で過ごす夏のひと時、“ラ・ドルチェ・ヴィータ”を描いた香りです。新作売上として過去最高を更新し、現在、圧倒的な知名度を誇る「レイジーサンデーモーニング」に次ぐ売上を記録。ブランド成長の約8割を担う貢献ぶり!
── メゾン マルジェラ フレグランス コミュニケーション マネージャー 太田麻衣さん
【SPUR的考察】
4月末から9月末まで驚異的に暑かった今年の夏。6月発売の「ネバーエンディング サマー」の爽やかな香りに、癒しを求める人が多かったのも納得。レプリカは時間と場所からイメージされる記憶に付随する香りをコンセプトにした香りのコレクション。これはイタリアのアマルフィ海岸に潮風と共に運ばれてくる熟したオレンジの爽やかな香り……。誰もが「うーん、いい匂い」と香りを深く吸い込みたくなるシトラスノートだ。美しい海を眺めるリゾートで「時間よ、止まれ」と願った夏を思い出す。
ブランド全商品の中で売上1位のオードパルファム、アクア
フィレンツェに現存するメディチ家の庭園の噴水に着想を得た、熟れた洋ナシとロータス(蓮)が表現する、清らかな水の香り。爽やかな香りで、日本でも本国イタリアでも売上1位を誇ります。サンプルを店頭で配布した場合のリターン率もダントツの1位! 従来からのブランドのファンのお客様はもちろん、新規のお客様にも手に取ってもらうきっかけに。老若男女問わず使いやすいのも、人気の秘密です。
── ステディ スタディ PR 谷口 こころさん
【SPUR的考察】
ほのかな甘さの清らかでみずみずしい香りは、フレグランスビギナーにも使いやすい柔らかな香り立ち。まとった人の肌になじんで悪目立ちすることがなく、美味しい水を飲んだようにリフレッシュできる、アクアティックフローラルだ。オーデコロンを主軸に長い歴史をもつサンタ・マリア・ノヴェッラが800周年記念に初めて発表した、オードパルファムコレクションのなかのひとつ。イタリアの古書のようなデザインの箱に収められた、目に鮮やかなブルーのボトルも人気の要因と見た。
ジャスミン好きの心を捉えた、ラ コレクシオン プリヴェのNo.1 人気
すっきりとしたジャスミンの香りにアプリコットとハチミツが溶け合う甘美なグルマンフローラル。香水名のジャスミン デ ザンジュは、クリスチャン・ディオールが夏のヴァカンスを過ごしたニースの内陸地、「天使の入り江」に由来しています。この香りを数滴まとうと、そんな天使の入り江に誘われるようなうっとりした心持ちに。
──パルファン・クリスチャン・ディオール フレグランス PRチーム
SPUR的考察
ジャスミンはストレートに品質の良し悪しがわかる素材のひとつ。微量なインドールを含むジャスミンは豊潤でセンシュアル。濃密でありつつ、すっきりと爽やかで甘すぎないバランスが素晴らしい。花の香りにアプリコットとハチミツ、バニラといったトレンドのグルマン要素が入っているのもきっと人気の秘密。甘重グルマンや爽軽ウッディなどがトレンドの主流であるなか、他人と被りたくない人ややっぱりフローラルが好きという人に愛されているのだろう。
2025年、本連載で紹介してきたフレグランスものべ116本。気になるフレグランスや新しい発見はあったでしょうか? 今年はラスト1回を残すのみ。来年もきっとますます盛り上がるフレグランス界隈から、今後も目が離せない!
ビューティエディターとして長年、数々のフレグランス企画を担当。一昨年よりフランスの大手香料メーカー、サンキエムソンスが手がけるフレグランスの専門知識を学ぶレッスンを受講。2025年11月日本パフューマリー協会認定のパフューマリー アドバイザーの資格を取得した。




