明けましておめでとうございます。この連載も2回目のお正月を迎えることができました。2026年、干支の馬のように軽快なギャロップでスタートダッシュを切るために、伴走のお供にフレグランスを。2026年の幕開けにふさわしい香水とは? 梅や竹、墨や柚子の香りなど……“和”を感じる香りについて、フレグランスアドバイザーMAHOさんに伺った。
シンプルな調香で素材の良さが引き立つ香り
タイラ 明けましておめでとうございます。今年も素敵な香りをいっぱい紹介していきたいので、MAHOさん、どうぞよろしくお願いいたします。早速ですが、新年のお題は……お正月につけたい“和”の香りが知りたいです。
MAHO おめでとうございます。はい、一年の始まりを祝うお正月という節目にちなんで、日本ブランドや和を想起させる香水を紹介してみますね。まずは【リベルタ パフューム】の「アマノウメ」。初春の花といえば、梅です。こちらは、江戸時代頃から親しまれるようになったという日本の伝統的な梅酒から採られた梅の香りを活かしています。
タイラ わー、この香り大好き。昨年秋の伊勢丹のサロン ド パルファムで嗅いで、虜になり、ネットで注文しちゃいました。私、お酒はそんなに強くないんですが、梅酒と黒糖って私の好きなモノからできてるーって感動しちゃいました。ジャパンマテリアルがテーマの香りは他に「マツリマツ」、「イツキタケ」があって、3つを特製の竹箱に収めた「松竹梅セット」もあるの。このセットは、まさに“こいつぁ春から縁起がいい~”です。
MAHO 同じく日本発のメゾンフレグランスブランド、【KITOWA】からは、「サンダルウッド」をおすすめしたいです。サンダルウッドとは、白檀のことですね。講師として専門学校生に香料を教えたりするのですが、白檀ってどんな印象かと問うと、“和っぽい香り”“お寺の匂い”と答えるほど、誰もが和を感じる香料です。沈香だと辛みが出たりもするところ、白檀は木の香りにほのかな甘さがあって、日本人好みと言えるでしょう。
タイラ KITOWAのバックグラウンドは、450年以上の歴史を持つお香の名跡ですから。
MAHO そうなんです、そんなKITOWAが白檀のフレグランスを出すなら、圧倒的信頼感がありますよね。
タイラ 二層式の水性香水だからボディミストのようにつけられるのがいい。
MAHO これはお正月にお着物を召される方におすすめしたいですね。お着物の場合は膝下につけておくと、歩くときや小あがりに上ったときなど、わずかに裾が開いて、香りがふわっと匂い立ち、とても粋だと思いますよ。
MAHO 日本のブランドではないのですが台湾茶香水のブランド、【P.Seven茶香水】の「墨茶」も推したい。お正月といえば、書初め。心を落ちつけて硯で墨を擦る……。そういう心情って和にも通じるのでは。
タイラ 私、知らなかったのですが2012年に誕生した世界初の台湾茶香水ブランドなんですね。墨というのも漢字を使うアジア圏になじみ深いものですし、この香り、なんだか和みます。
MAHO 台湾の茶師である潘(パン)さんという方が独学で起こしたブランドです。「墨茶」は墨をインスピレーションに生まれた三部作のひとつ。一般的に墨には、人によっては好みが分かれる竜脳などの香りが付けられています。P.Sevenのシグネチャーでもある台湾茶と組み合わせることで、とても柔らかでまろやかな、落ち着いた香りとなっています。
ヨーロッパブランドによる日本をイメージした香り
MAHO 香水の本場、ヨーロッパでも日本はすごく好まれるテーマのひとつです。【ディプティック】の「オイエド」は、江戸時代の都、江戸の町からインスパイア。鏡餅の上に飾られる橙にも通じる、香酸柑橘の香りが特徴です。
タイラ ディプティックの中でも、「オイエド」は常に人気上位に入ると聞いています。柑橘系はシンプルなだけに、香料の良し悪しがダイレクトにわかる気がする……。これはさすがディプティック。シンプルだけど洗練されていてシャレてる。
MAHO 柑橘といってもレモンやベルガモットのように涼をもたらすものではなく、冬至に入るユズ湯で知られる、ユズをフィーチャー。ひとくちにシトラス系の香りと言っても、香水の世界ではユズは“ぬくもり”を感じる香りとして、また“和”の情緒をもつ香料として認識されています。
柑橘系フレグランスは香りが飛びやすいですが、「オイエド」は持続力もありますね。世界に名だたるブランドの香水を手掛けてきた日本人調香師として、未だ他に追随を許さない亀井昭子氏が調香。高知県という柚子の名産地で生まれ育った彼女だからこそ作り得た、柚子香水の名品でしょう。日出る国を象徴する柑橘フルーツの香りで、新年に相応しい新鮮さと和の趣を堪能してみてください。
MAHO 外国の方が日本らしさを感じる都市といったら、やっぱり京都。調香師であるソニア・コンスタンが世界各地を旅し、そこで得た感動からフレグランスを生み出している【エラ K】。彼女は、日本は特にお気に入りで京都を題材にした「サガノの詩」と「メモワール・ド・ダイセンイン」の2つの香りを作っています。どちらも静けさのある香りですが、お正月につけるなら、抹茶の香りを取り入れながら竹をイメージした、なんとも清々しい「サガノの詩」がいいかしら。
タイラ お正月の清澄な空気に通じる、凛とした香りですね。
MAHO それこそ、香袋とはまた違ったニュアンスですが、和装にぴったり。女性ももちろんいいのですが、男性のお着物姿にもハマると思います。
タイラ たしかに。それ、とっても素敵です。
古くからお正月は「事始め」の時期。住まいを清め、新しい服をおろすように、香りも新しくしてみては? これから始まる1年を、どんな自分で過ごしたいかの決意表明をまとう儀式のよう。清らかな気持ちで1年をスタートさせるスイッチとなるような香りを見つけて。
幼少から香水の世界に魅了され、フレグランス企業や調香師に師事した経験を基に、香りの豊かさや楽しみ方をセミナーやイベントで発信。またブランドに属さない中立的な目線で行う、個々の魅力や可能性を引き立てる香り選びのアドバイスも人気。日本調香技術普及協会理事や日本フレグランス協会常任講師として、国内の香水文化の普及と発展に尽力。
ビューティエディターとして長年、数々のフレグランス企画を担当。一昨年よりフランスの大手香料メーカー、サンキエムソンスが手がけるフレグランスの専門知識を学ぶレッスンを受講。2025年11月日本パフューマリー協会認定のパフューマリー アドバイザーの資格を取得した。




