N°5ってなんの数字? 【シャネル】のナンバリングに秘められた、強く美しい女性の想い
世界で1番有名な香りのひとつ、『シャネル N°5』。1921年に誕生し、一昨年に100周年を迎えたこの香りは、いくつもの伝説的なエピソードを持つことでも有名。さらに、1970年には『シャネル N°19』の香りが生まれ、2022年には『N°1』の名を冠したエイジングケアラインが登場。そうなると、もしや『N°2』、『N°3』、『N°20』などの香りも、世に出ていないだけで本当はラボに眠っているのでは……? そんな期待を胸に、シャネルのナンバリングの秘密に迫る。
『シャネル N°5』の名前の由来は、ミステリー
『シャネル N°5』は、メゾン創始者のガブリエル シャネルが初めて手掛けた香り。その名前の由来は、諸説ある。「ガブリエル シャネルが、いくつかのサンプルの中から、5番目に手にした香りだったから」、「『5』という数字が、ガブリエル シャネルのラッキーナンバーだったから」という2つのエピソードが広く知られているが、どれが正解? 解説してくださったのは、シャネル 香水・化粧品本部 PRコーディネーターの鷲尾ありささん。
「実は、どの話が真実かは、真偽のほどは定かではありません。今となっては確かめる方法もありませんし、あえて謎に包まれたまま、というのも趣がありますよね。ただし、『5』が、ガブリエル シャネルのラッキーナンバーというのは本当です。彼女は8月19日生まれの獅子座であり、獅子座は5番目の星座なので、ガブリエル シャネルは5という数字をお守りのように思っていました」(鷲尾さん)
『シャネル N°5』が誕生した当初は、フレグランスはポエティックな名前のものがほとんど。そんな中、数字だけで完結したシンプルな名前は、非常にセンセーショナルだった。
名立たる女優たちより前に、広告ビジュアルを飾ったのは?
シンプルさを極めた名前に、80種類以上もの天然香料と合成香料を大胆に組み合わせたフローラル アルデヒドの香調。さらには広告ビジュアルの斬新さも話題に。
「初代の広告ビジュアルのモデルは、なんとガブリエル シャネル本人が務めました。その後はアリ マッグロー、カトリーヌ ドヌーヴ、ニコール キットマンなど、時代を象徴する女優たちを起用。現在はマリオン コティヤールがN°5の顔に」(鷲尾さん)
完成後に急きょ変更になった『シャネル N°19』
同じくナンバーの名を持つ香り、『シャネル N°19』。こちらは『シャネル N°5』の後に生まれた香りだが、19番目に生まれた香り、というわけではない。
「『シャネル N°19』はガブリエル シャネルのプライベート フレグランスで、『19』の数字は、彼女の誕生日から。本当は彼女の愛称である『COCO』という名前が付けられるはずだったのですが、香りが完成した後に本人の意向で変更になりました」(鷲尾さん)
この香りが発表された数週間後に、ガブリエル シャネルは永眠。彼女にとって、『シャネル N°5』が最初の香りに、『シャネル N°19』が最後の香りになった。
『N°1 ドゥ シャネル』には、ポジティブなメッセージが!
『N°1』からはじまるホリスティックケア、『N°1(ヌメロアン)ドゥ シャネル』。こちらはガブリエル シャネルに由来する数字ではなく、このラインが目指すべき姿が表現されている。
「『期待のNo1』、『ファーストエイジングケア』、そして『自分の今の肌を1番好きになってほしい』という想いを込めて。大人のビューティ エナジーを高めます」(鷲尾さん)
記念すべき年がそのまま名前になった香りも
ガブリエル シャネルの生涯を映した特別な香りのコレクション『レ ゼクスクルジフ ドゥ シャネル』にも数字を名に持つ製品がいくつかある。
「節目となる特別な年やブティックの番地の数字が使われています。『1932』は、ガブリエル シャネルがファイン ジュエリー コレクションを初めて発表した年。『1957』は、70歳を過ぎてファッション業界にカムバックした彼女が『ニーマン マーカス賞』を受賞した年。この賞はファッション業界のオスカーと称される、名誉ある賞なんですよ」(鷲尾さん)
同じ『レ ゼクスクルジフ ドゥ シャネル 』のシリーズの『シャネル N°22』は1922年に香りが完成したことから、『シャネル N°18』は1997年にヴァンドーム広場にオープンしたブティックの住所に由来する。
このように、シャネルにはシンプリティを極めた数字の名前が多く存在するが、N°1から順番にナンバリングされてきたわけではないので、2や3の香りはラボには眠っていなかった! だからこそ、今後も新ナンバーが登場するかもしれないし、自分の誕生日やラッキーナンバーが製品に刻まれる可能性も……? 伝統と革新が入り混じるシャネルに、これからも注目したい。
エディターが名付けに
商品
シャネル N°5
ネーミング案
「女の顔は一つだって誰が決めたの?」
着想源
『N°5』に名付けなんて畏れ多い……と震えながら、あえて長めのドラマタイトル風の名前をつけてみました! 新しい概念のもと、女性そのものを感じさせる香りをつくったというエピソードに惹かれました。
採点
「大変よくできました」
コメント
『シャネル N°5』の誕生ストーリーや、香りの抽象性とマッチしたネーミングです。ガブリエル シャネルが『N°5』に込めた想いが現代風に表現されています。
コミュニケーション部 PR コーディネーター鷲尾ありささん
フレグランスをはじめ、化粧品のPRを担当。自身の誕生日は19日。『シャネル N°19』がガブリエル シャネルの誕生日にちなんでつけられた名前と知ってから、この香りがお気に入りに。