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愛の色って赤じゃないの? 【THREE】が無限の形の愛とシナジーを注いだ、シンプルだけど複雑な名前

ブランド創設当初からオーガニックとモードを掛け合わせた斬新さが注目を集め、自然のリズムと調和するホリスティックなケアアイテムや、時代の先を見据えた新しい価値観を発信し続ける「THREE」。いつもはその秀逸な製品やメイクルックにばかり飛び付きがちだが、今回は色名をじっくり追っていく。

伝え切れないメッセージを色名にのせて

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THREEのメイクアップ製品を手掛けているのは、グローバル クリエイティブ ディレクターのRIE OMOTOさん。ブランドの名付け親でもあり、THREEを一躍スターダムに押し上げた立役者として、あまりに有名な存在だ。

製品や色の名付けも全てRIEさんが担っている。2009年のローンチ以来、ネイルポリッシュだけでも200色以上も発売されているので、リップやアイ製品など全てを合わせると相当な数になる。そんな膨大な数の色名をどのように作り上げてきたのだろうか。

「まずは基盤となるコレクションから作っていきます。その核となる人間像とコンセプトを考え、その人間が持つ思想やストーリーを組み立てたり壊したり、時には詩や物語を書いたりしながら、1つのコレクションを形にしていく。その過程で出てきた言葉やイメージを色名にも使います」(RIEさん)

THREEのコレクションは常に表面的な美の追求に留まらず、気持ちまで新しく前を向くようなメッセージ性に満ちている。ただし、必ずしも全ての人が、コレクションのストーリーを知りうるとは限らない。だからこそ、製品の色名を大切にしているという。

「ひとつひとつの色名は、コレクションのメッセージを届ける “キューピッドの矢”のようなものだと考えています。コレクションの全貌を知らなくても、自分が手にしたひとつの製品の色名を知ることで、その一端に触れることができる。そしてもっと多くの色名が積もり重なることで、全体の輪郭が見えてくる。色名にそんな役目を託し、小さなブレッド(弾)を放つような想いで送り出しています」(RIEさん)

シンプルな名前だからこそ、ストーリーは無限大

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しなやかに溶け込むようにフィットする、リキッドアイシャドウ。パールの配合バランスが異なる3つのテクスチャーで展開。(左から)ユナイテッドフルイドアイカラー N01『INNOCENT DREAMER』、N02『U AND I』、S03『ONE PLUS ONE』、B01『DREAM TEAM』、B02『JUST KIDS』各¥3,850/THREE

THREEの色名には、レッドやブルーなど、直接的に色を表現する言葉は用いられない。
「その色を手にした人が、自分ならではの表現や想像を楽しんでもらえるように」(RIEさん)

秋のコレクションのテーマ「SHADES OF LOVE : SYNERGISM」も、愛=恋愛、赤やピンクの甘い色…という過去の定説から脱し、自分なりの様々な愛に想いを馳せるようなメッセージが込められている。
「友情、ペット愛、推しへの愛など、いろんな愛があるから、いろんな色があっていい。どんな関係性でも大切なのは、自分の個性を磨き、すべての他者を認めて、個々をリスペクトすること。そんな無限大の愛を持って自分と他者がコネクトすることで生まれる新しいシナジーで、眼差しを彩るコレクションです」 (RIEさん)

新製品の「ユナイテッドフルイドアイカラー」にも、「ラブ」という言葉が使われている色が何色かある。全8色それぞれに思い入れがあるが、中でも印象深い色名について、由来を聞いた。

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(左から)ユナイテッドフルイドアイカラー N01『INNOCENT DREAMER』、N02『U AND I』、S03『ONE PLUS ONE』、B01『DREAM TEAM』、B02『JUST KIDS』各¥3,850/THREE

N01『INNOCENT DREAMER』
「無邪気に夢を追いかけるイノセントドリーマー、私も昔はそうだったかしら…。そんなことを思って名付けた、ピュアなピーチピンク」

N02『U AND I』
「あなたと私。すごくシンプルだけど、その人によって思い浮かべる相手も関係性も違うから、いろんな想像が広がりますよね。色もシンプル&ナチュラルで、骨格を強調したり、自分の目元が持っている特長を上手く生かしてくれる。あなたと私(=この色とまぶた)がコネクトすることで、いいエネルギーが生まれる、プラスになると感じる色」

S03『ONE PLUS ONE』
「何と何を足すのか? こちらもその人次第で、ストーリーも様々。1+1が2ではなく3にも5にもなるような、可能性が広がります」

B01『DREAM TEAM』
「素晴らしいメンバーが揃っている、だから素晴らしい結果が残せるだろう! そんなときに使われる言葉。まさにドリームチームのような働きをしてくれる1本」

B02『JUST KIDS』
「ロックスターの著書からインスピレーションを。黒いカバーに包まれた、大好きな本。この他にもロック&パンクな音楽から影響を受けることが多く、デヴィッド・ボウイの『ジギー・スターダスト』から色名を付けたことも」

名前もブラシもNEWな“二度見”マスカラ

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(左から)瞳の新たな個性と魅力を引き出す。水や汗にもにじみにくく、冴えた色が続く。ワイズアイズパースペクティヴ マスカラ 03『NEW CONSCIOUSNESS』、04『NEW SENSATION』各¥4,400/THREE

「ユナイテッドフルイドアイカラー」は、心地よく寄り添う愛のようにニュートラルなカラーが中心だったが、「ワイズアイズパースペクティヴ マスカラ」は、ツヤのある漆黒とパンチの効いた鮮やかな色が揃う。まつ毛に付けると、思わず二度見したくなるようなインパクトが。

「新たなコネクトが生み出す、新しい魅力、新しい気持ち。そんな想いで全ての色名の最初に『NEW』をつけました。04『NEW SENSATION』は見る人にビリッと電撃が走るような、センセーショナルなブルー。黒目もグレーっぽくクールに見えるんですよ。対して03『NEW CONSCIOUSNESS』のコッパーは瞳の透明感を高めてくれる、不思議な色。
さらに、根元は細くて先端が広がっているフォルムのブラシも革新的。ボリュームを出しながらセパレートして、色の存在をきちんと感じる美しいまつ毛に仕上げます」(RIEさん)

チャレンジングだけど苦労も多い、名付けの作業

現在、RIEさんはNYを拠点に活動。日本のTHREEチームとは定期的にオンラインでミーティングを設けるが、製品や色の名前の立案は1人で現地で行っている。アイデアが枯渇したり、息詰まったりすることはないのか尋ねると、予想外の方向に壁がそびえていた。

「名付けで大変なのは、商標の関係などで、使えない言葉がすごく多いこと。素敵な名前! でも使えない~という悔しさを何度味わったことか」(RIE)

常に新しいものを生み出し、トレンドを牽引する大変さも計り知れない。

「確かに生みの苦しみはありますが、意識してトレンドを作ったり、追いかけているつもりはないんです。コロナのようなパンデミックがなくても、日々の気候の変化、社会情勢の流れなどを受けて、時間の経過とともに人の思想や志向も変わっていきます。それを加味して、半年後、1年後はみんなどんな気分になっているか、どんなものを求めているかを考えて、色を紡いでいきます」(RIEさん)

時代の先を読む卓越したセンス、それを発信し続けるパワーを持つRIEさんならではの発想だ。今回紹介した秋のコレクションは8月上旬に発売されたばかりだが、RIEさんの頭の中では、遥か先の来年のコレクションのストーリーが描かれているのだろう。年末に向けてリリースされるホリデー限定品とともに、楽しみに待ちたい。

エディターが名付けに挑戦!

商品

ユナイテッドフルイドアイカラー
N01 『INNOCENT DREAMER』

ネーミング案

「Time Lapse」

着想源

RIEさんに教えていただいたピアニストの名曲から、「時の移ろい」という色名を。時が移ろって経験を重ねて、イノセントドリーマーでなくなった今も使いたい、素敵な色なので。

採点

大変よくできました

コメント

“時の移ろい”――大変素晴らしいです!

Ludovico EinaudiのTime Lapseから、とてもポエティックで、素敵です! イノセントでなくなった今だからこそ、夢はイノセントに。時の移ろいを微笑みながら、たどるときは、誰もがイノセントドリーマーに。 RIE OMOTO

大変よくできました

RIE OMOTOさんプロフィール画像
THREE グローバル クリエイティブ ディレクターRIE OMOTOさん

世界中のモード界で活躍する、メイクアップアーティスト。音を聞くと色が浮かぶとして、音楽から着想した色名や、過去には音楽をテーマにコレクションも発表。最近のお気に入りは、ルドヴィコ・エイナウディのピアノ曲。雷や花火の音を怖がる愛犬も落ち着く!

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