【ヴィセ】うさ耳や猫の肉球が疑似粘膜に? むっちり濃密リップに付けられた、笑顔と恋を誘う名前
連載8回目を迎えたこの企画。これまでのインタビューで、各ブランドによって名付けの方法、タイミング、費やす期間や関わる人数も様々であることがわかってきた。
今回フォーカスする「ヴィセ」の「ネンマクフェイク ルージュ」は、製品名だけで今っぽくキャッチーな仕上がりが想像できる。予約段階で早くも売り切れる色が続出し、発売から約5か月が経過した今でも品薄状態が続いているこのバズリップは、どうやって名付けられたのだろうか?
製品名は、疑似粘膜な仕上がりをダイレクトに表現
ヴィセは、トレンドに敏感な全ての人々に向けて、旬なアイテムを発信し続けるメイクアップブランド。意外と知られていないが、「ヴィセ」はフランス語で「願い・的・標的」という意味がある。ブランド名はそれにちなんで、「みんなの願いや夢が実現するように」との想いを込めて命名された。
「ネンマクフェイク ルージュ」の名付け親は、コーセー 商品企画課の藤田 麻友香さん。現在のヴィセ製品の名付けは藤田さんに加えて、商品開発課・宣伝制作課が中心になって進めつつ、社内アンケートでも多くの声を集めているという。まずは製品名の由来から教えてもらった。
「トレンドの“粘膜リップ”を誰でも簡単に楽しめる製品を作りたいと考え、疑似粘膜のような色と質感を実現したのがこのルージュ。まさに “ネンマク”を“フェイク”できる、特長をそのまま名前にしました。肌に自然になじんで自分の唇を引き立てれくれる、粘膜カラーのバリエーションです」(藤田さん)
粘膜×色っぽさを掛け合わせて生まれた、6つの色名
「“うさぎ”が欲しい」「“肉球”が可愛い」など、SNSや店頭でも色名の愛称で呼ばれることが多いというこのルージュ。色名の原案は、製品よりも先にできあがっていたという。
「どんな色を作るか提案するときに、まずはコンセプトボードを制作します。そのコンセプトボードに、作りたい色のイメージに合う画像を集めて貼り付けたり、アイデアを出し合ったりして精査していきます。色名を決めるときも、このときに集めた画像がヒントに」(藤田さん)
全6色の色名には、共通するイメージが設けてある。
「ブランド全体のコンセプトである“色っぽさ”と、粘膜の2つが色名の主軸になっています。恋をすると色っぽい表情になることから、恋愛を匂わせる言葉を。それに粘膜っぽさを連想させるものやパーツを掛け合わせました」(藤田さん)
言われてみれば、粘膜っぽい! あの動物のあのパーツを色名に
粘膜、色っぽさ、恋。色名のテーマは明確だが、ひとつひとつの色名を見ていくと、これってどういう意味なんだろう? と思うような言葉たちが並ぶ。
「そのものズバリ、という色名ではなく、込められた意味を知ったときに共感できたり、自由に連想できる名前がいいなと。例えば『うさぎの恋人』は、恋をしたうさぎの耳が、ポッと上気してコーラルピンクに色づいて…という色なので、もともとは『うさぎの耳』という案もあったんです。でも、あまりに直接的だし、ちょっと生々しいかも?という声もあって再考。最終的に、甘く囁いてうさぎの耳をポッと染め上げる、『うさぎの恋人』になりました」(藤田さん)
『うさぎの恋人』は、6色の中でNo.1の人気カラー。王道の粘膜ピンクで、ナチュラルながら血色感と生っぽいツヤを演出してくれる。人気No.2の『わがままな肉球』は、藤田さんが特に思い入れのある色名として挙げてくれた1色。
「『わがままな肉球』は、私の実家で飼っている猫の肉球から思い付いた色名。ちょっとツンデレで甘え上手な猫ちゃんで、まるで恋の駆け引き上手のような…!」(藤田さん)
うさぎに猫と身近な動物だけでなく、『海星(ヒトデ)の恋心』も登場。
「ヒトデもムニュッと独特な感触ですよね。いろんなヒトデを調べていたら、美しいオレンジ色のヒトデの写真に出合ったんです。ヒトデが本当に恋をするかはわかりませんが、あのオレンジ色のヒトデが恋に火照ったら、こんな色になるんじゃないかなと想像してみました」(藤田さん)
完熟チェリーや甘く危険なリンゴも、恋の主役に仕立てて
こちらの3色は、レッド系やブラウン系のディープなカラー。でも生っぽいツヤとむっちり濃密な塗り心地は、やっぱり粘膜仕立て。深まる秋にもぴったりで、モードなファッションにも合わせやすい。
「『チェリーの自惚れ』と『林檎の口づけ』は、果実にも恋をさせて。チェリーはジューシーだし、断面はジュワッと粘膜っぽいイメージ。背伸びしたような大人っぽいレッドで、自分でもドキッとするような唇に仕上がります。
『林檎の口づけ』もこっくり濃厚なカラー。ただの林檎ではなく、白雪姫の毒林檎のような禁断の果実の色で、ビターな色気を醸し出します。
『金魚の恥らい』は6色の中でいちばんディープなカラー。水中をヒラヒラと優雅に泳ぐ金魚が秘めた想いに恥らい、赤く染まる様子をイメージしました」(藤田さん)
実は、ヴィセの中でこんなドラマティックな色名が付けられているのは、この「ネンマクフェイク ルージュ」だけ。来年にブランド誕生30周年を控え、これからもっとストーリー性の高いネーミングの製品が増えていくかも? アニバーサリーなアイテムもお楽しみに!
エディターが名付けに
商品
ヴィセ ネンマク フェイク ルージュ
PK850 『うさぎの恋人』
ネーミング案
『コブタの片思い』
着想源
しっとり粘膜っぽいもの…、カエルもセイウチもナマコも可愛くないし、えーとえーと…と考えて思い付いたのが、ピンクで可愛いコブタの鼻。そこに恋の要素をプラスしました。
採点
大変よくできました
コメント
粘膜感と色っぽさが掛け合わさった
チャーミングな色名がマッチしています!
コブタからは、大人の恋というよりも初恋にドキドキしている表情や、好きな人と目が合うだけで照れてしまうピュアさが連想されて、想像が膨らみました!
企画室 商品企画2課藤田 麻友香さん
「ヴィセ」の商品企画を担当。トレンドを先取りし、なりたい顔に今すぐなれるアイテムを世に送り出す。新製品やカラーのイメージ作りのために、PCや携帯電話に素敵な画像を日々ストック。