つらい低気圧頭痛、もうやり過ごさないで! 「気象病外来」をイラストレーター小迎裕美子さんが体験レポート【低気圧頭痛①】

「天気が悪いとなんとなく調子が上がらない…。」そんな不調を感じたことがあるなら、それは“気象病”かも。気象病とは、気圧や気温、湿度など気象変化によって引き起こされる心身の不調のこと。その症状は、頭痛や肩こり、倦怠感など、人によってさまざま。

イラストレーターとして活躍する小迎 裕美子さんも、長年気象病に悩まされているひとり。この不調をどこに相談していいのか分からず、やり過ごしてきたのだそう。
正式な病名はなく、単なる疲れやメンタル不調だと思われがちな“気象病”。けれど専門外来を設けているクリニックがあるということで、小迎さんが受診してみることに。

門を叩いたのは、これまで7,000人を超える気象病悩みに向き合ってきた『せたがや内科・神経内科クリニック』。その院長・久手堅 司先生に診ていただいた小迎さんの気象病外来体験レポートを、描き下ろしのマンガとともにお届け。

「天気が悪いとなんとなく調子が上がらない…。」そんな不調を感じたことがあるなら、それは“気象病”かも。気象病とは、気圧や気温、湿度など気象変化によって引き起こされる心身の不調のこと。その症状は、頭痛や肩こり、倦怠感など、人によってさまざま。

イラストレーターとして活躍する小迎 裕美子さんも、長年気象病に悩まされているひとり。この不調をどこに相談していいのか分からず、やり過ごしてきたのだそう。
正式な病名はなく、単なる疲れやメンタル不調だと思われがちな“気象病”。けれど専門外来を設けているクリニックがあるということで、小迎さんが受診してみることに。

門を叩いたのは、これまで7,000人を超える気象病悩みに向き合ってきた『せたがや内科・神経内科クリニック』。その院長・久手堅 司先生に診ていただいた小迎さんの気象病外来体験レポートを、描き下ろしのマンガとともにお届け。

今回、診察いただいた先生は……

久手堅 司先生プロフィール画像
せたがや内科・神経内科クリニック 院長久手堅 司先生

2013年8月に『せたがや内科・神経内科クリニック』開院。気象病・天気病外来や自律神経失調症外来、寒暖差疲労外来などの特殊外来を開設し、患者の心身の悩みに寄り添う診察を行う。気象病と深い関わりのある自律神経を整えたり骨格の歪みを正したりすることも重要視しながら、パーソナルトレーナーとの協働治療を実施。気圧予報で体調を管理するアプリ『頭痛―る』を監修。著書は『気象病ハンドブック』(誠文堂新光社)など。

『せたがや内科・神経内科クリニック』はこちら

●「気象病外来」を受診してみた、体験マンガレポート

1. 雨予報の前日から感じる、ずーんとした身体のだる重さ。ついに外来を受診!

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私が“気象病”に悩むようになったのは、今よりさらに仕事漬けの日々を過ごしていた10年ほど前のこと。雨予報の前日くらいから身体の不調を感じ、ずーんとした身体のだるさに見舞われ、頭痛や首の痛みだけでなく、めまいがすることも……。

「なんだか調子がおかしい、もしかして……」と感じたとき、天気・気圧予報から、頭痛が起こりそうな日を予測できるアプリ『頭痛―る』をチェックしてみると、決まって低気圧だったということが多々。そんな答え合わせをするうちに、これはいわゆる気象病なのだと自覚するようになりました。

確かにつらさに悩んではいたけれど、「低気圧が来ると、吐くほどつらい」という友人の話を聞くと「それに比べたら私の症状なんて軽いし、病院に行くのは大袈裟かな」と思い、そもそも何科に相談すればいいのかもよく分からず、自分なりの対処方法でしのぐこと約10年。

するとどうやら、二子玉川に気象病外来があるという情報をゲット! 「ここに行けばつらさを和らげる糸口が見つかるかも!」と期待して、受診してみることに。

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2. まずは問診で、「このつらさは気象病なのか?」を判断

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気象病外来を設けているのは、『せたがや内科・神経内科クリニック』。まずは院長の久手堅司先生に、セルフチェックシートも使いながら問診してもらいます。

「そもそも気象病とは、鼓膜の内側で聴覚やバランス感覚を制御する“内耳”が気圧に反応し、鼓膜の内側から圧力で押し返すために感じる不調。感じているつらさが気象病なのかの判断材料として最も重要なのは、『天候が悪いときに体調が悪くなるのか』そして『雨が降る前に自身の体調からなんとなく天気の変化を予測できるか』のふたつです」と久手堅先生。

さらに「このどちらかひとつでもマルがつけば、気象病の可能性は80%にもなるんですよ」とのこと。私はどちらもバッチリ該当していました……。

3. 普段から不調があるのか/ないのかによって、アプローチが変わる

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そして大切なのが、天気と自分の体調をすり合わせ、「いつも不調で、天気によってさらに悪化しているのか」それとも「いつもは不調はないけれど、天気によって不調になるのか」をちゃんと見極めること。どちらに該当するかでアプローチが変わっていくのだそう!

スマホやPCの見過ぎによって悪化したストレートネックや肩こり、運動不足、睡眠不足などなど。慢性的に抱える不調にいくつか心当たりが……。

私は前者の「いつも不調で、天気によってさらに悪化している」タイプなので、まずはその原因に一つひとつ、適切に対応していくことで、気象病のつらさも緩和されていくと知りました。

4. 目を閉じて片足立ちするなど、身体の状態をチェック

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問診の後は、首に痛みが出ないか調べたり、目眩が出ないかチェックしたり。目を閉じて片足で立つテストも行いました。不覚にも片足立ちしながらぐらぐら揺れる私。
「私の骨格、やっぱり歪んでるのね……」と軽くショックかつ、自分の身体をコントロールできていない感じもして、ちょっと怖かったです。

これは気象病の人にありがちな現象。首こりや肩こりがあると身体の軸が斜めになっているため、目を瞑るとバランスを失ってしまう、という症状です。医学的にはまだ証明はされていないそうですが、骨格の歪みは頭痛やめまい、首こりや肩こりなどを引き起こす自律神経の乱れに関わると言われているのだとか。そのため姿勢を正すことで、気象病が改善することもあるそう。

気象病を持っていると自覚している、男女の割合

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調査期間:2023年4月21日~5月1日、全体の回答者数:19,897人(出典:天気痛調査2023/ウェザーニュース)

気象病は女性に多く、クリニックの気象病外来を訪れる患者の数は、7〜8割が女性。2023年にウェザーニュースが行った調査でも、気象病を持っている・持っている気がすると自覚している割合が、女性では85.5%、男性では53.5%という結果に。

久手堅先生によるとその理由は、女性には低血圧の人が多いこと、生理周期や更年期などホルモンバランスの変動があること、男性よりも筋肉量が少ないため姿勢を保つのに負担がかかり、血行が悪くなりがちなど。

また更年期のタイミングで症状が出始める方が多いというのは想像がつくけれど、最近はリモートワークや運動不足などにより10代も含めた若年層の患者も増えているそうで、驚きです。

5. 気象病の対策・対処法(血流アップ、頭痛薬・漢方薬の選び方など)

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気象病は日常的なセルフメンテナンスで、症状が起きる前に対策を取ることが重要! ということで、自宅でできる対策・対処法についてもたっぷり教えていただきました。

自宅でできる、対策・対処法

①   朝起きた後、ベッドの中で手をグーパーする
起床後にベッドの中で“今日は調子が悪くなりそう”という予感がしたときに効果的なのが、手のひらのグーパー運動。
「目が覚めてもすぐに起き上がらず、30分ほど横になったまま手のひらを握って開く動きを繰り返すことで血流がUP。血管が拡張し、血圧が下がりやすくなるのを防ぎます」(久手堅先生)

②   頭痛がひどいときは、まず冷やして→治らなければ温める
頭痛がつらいときの対処法としては、冷やす→温めるの順で、痛みが軽減する方を探るのがよい。
「個人差があるので一概には言えないけれど、痛みが強くなるのは偏頭痛であることが多いので、まずは冷やして。それでもなお痛みが強くなるなら温める、という順番で試してみてください」(久手堅先生)

③   市販の頭痛薬は、痛み止め成分が1種類だけの単剤タイプを選ぶ
市販の頭痛薬は、パッケージに記載の成分表や商品の公式サイトを見て、痛み止めの成分が1種類だけの単剤を選ぶのがポイント。「市販されている頭痛薬は、複合鎮痛剤と言って、痛み止め成分が2種類以上入っているものも多いです。それが悪いというわけではなく、確かによく効くのですが、頭痛になる前にも飲んでしまったり、飲む時間をずらすなどしているうち、過剰摂取が原因でさらに頭痛を招くという薬物乱用頭痛になってしまう場合も。病院でもらう頭痛薬の処方箋も単剤です。まずは単剤を長いスパンで飲んでみることをおすすめしています」(久手堅先生)

④   漢方なら、気象病悩みにいいのは五苓散、肩こりには葛根湯
体内の水分バランスを調整してむくみを取ってくれる五苓散は、気象病の治療で最初に処方される漢方。葛根湯は肩こりがある方にも効果的。五苓散と葛根湯は一緒に飲んでも問題なし。
「以前、クリニックを受診された患者さん291名に五苓散を処方し、どのくらいの人に効果があったのかを調べました。すると247人、つまり84.9%が『効果あり』という結果に。気象変化に伴う頭痛が起きる頻度や、頭痛の程度が軽減されたという人が多かったです」(久手堅先生)

▼気象病への五苓散の有効性

調査期間:2020年1月〜2021年5月、全体の回答者数:291人

⑤   鍼灸や整体、耳ツボなどの施術を活用する
東洋医学的な民間療法、例えば鍼灸や整体、耳ツボジュエリーなどにトライするのもOK。
「ご自身とマッチする先生に出会えれば、身体は楽になると思います。ただし、効果は一時的なものになり元の状態へ戻っていくことが多いため、セルフメンテナンスも取り入れてくださいね」(久手堅先生)

そのほか、どこでもできるストレッチや、ぬるま湯に浸かる入浴法なども教えていただきました。これらは後半で、実際に自宅で体験したレポ&HOW TOをご紹介します!

6. 天気による不調は“怠けている”のではなく、原因があり対処できるもの

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「でもやっぱり、自分の状態が病院に行くべきかわからない……」と思い、目安を先生に聞いてみると、「頭痛薬を月に10回以上飲んでいたら受診を!」とのこと。

「天気による身体の不調というのは『気合が足りない』とか『怠けている』ということではない。ただ単に現在の医療によるケアが追いついていないだけなんです。不調の原因は実際にあり、原因があれば対策・対処法もちゃんと存在します。四季折々の表情がある日本の気候は素晴らしいと言われる一方で、気象病の引き金が多い環境にあることは否定できません。つらいときは専門医に相談に行くようにしてくださいね」と久手堅先生。

これまで、自分だけで対処しようとしていた気象病。久手堅先生のこの言葉に、なんだかほっとしました。

我慢できないほどつらくなってようやく、友人の紹介のクリニックで診察してもらう、というのが今までの私。けれど久手堅先生の優しいお人柄と丁寧なカウンセリングで不安が払拭され、「もっと気軽に相談しに行っていいんだ!」と思えるように。

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●自宅でできるセルフケアを実践!

先生の診察を受けて、不調の原因の根がどこにあるか知っておくことが基本&やっぱり大切だと実感。例えば、「血圧が低めであれば塩分を多めに摂る」「貧血気味であれば鉄分を意識する」「身体のコリがあるならストレッチを取り入れる」など、生活を見直していくことが大事なんだと再確認しました。

それに加えて、日々のセルフメンテナンスも欠かせない。ということで、久手堅先生に教わった自宅でできるセルフケアの中から、実際に3つお試ししました。

① 耳回しマッサージ

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血流をアップさせ、触れることができない“内耳”をケアする方法としておすすめいただいた、耳回しマッサージ。耳を前に回したり斜めにしたり様々な方向へ引っ張って離すだけ。

とても簡単なので、隙あらば耳に触れ、思い出したらやってみるという気軽な感じで取り入れました。電車に乗るときなどにも実践しています。

② フェイスタオル首ストレッチ

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フェイスタオルを使った首のストレッチ。後頭部の下にタオルを当てて、斜め上へ引っ張り20秒キープ。今度は斜め下へ向かって引っ張り20秒キープするというもの。

受診時に先生からレクチャーいただいたことでそのよさを実感したケア。自律神経と深い関わりのある頸椎の1、2番目のつなぎ目をほぐすことで姿勢を改善したり、肩こりの症状を和らげたりするそうです。「首肩がこり始めたかも」と感じたときにやるようにして、それ以上こりがひどくならないように工夫してみました。

③ ぬるま湯アロマオイル入浴

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最後は38度くらいのぬるめの温度のお湯に好みのアロマオイルを垂らして、10〜15分首まで浸かるという入浴方法を実践。リラックス効果が期待でき、スムーズな入眠の手助けにもつながるよう。

私自身以前から実践していたセルフケアのひとつだったので、先生からおすすめされたときは「やっぱりいいんだ!」と嬉しくなりました。ミントオイルを入れて清涼感を楽しむのが自分好み。これはもう最高に快適で、気持ちもすっきりするので、ずっと継続しています。

小迎 裕美子プロフィール画像
イラストレーター小迎 裕美子

雑誌を中心に、テレビ、広告、WEBなどで活躍するイラストレーター。ユーモラスなタッチで描かれるマンガも、読者のみならず編集者のファンも多い。著書にシリーズ累計9万部を突破した『胸はしる 更級日記』、『新編 人生はあはれなり… 紫式部日記(KADOKAWA)などがある。

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小迎さんは今回の体験を通して、気象病の症状を助長しているストレートネックを解消すべく「お風呂やトイレまでスマホは持ち込まない」と決意。就寝が遅くなる原因のひとつである、寝る直前のゲームも減らして、崩れがちな生活リズムを整えることから始めていくのだそう。

自分の症状をしっかり自覚し適切な対策を取れば、気象病は無理なく乗り越えていける不調。天気に左右されず心地よい心と身体で過ごせるように、まずは普段の過ごし方から見つめ直してみたい。