薬局でアフターピルを買う流れって? 薬剤師への研修を進めるウエルシア薬局に聞く、緊急避妊薬のOTC化に向けた取り組み

望まない妊娠を防ぐ緊急避妊薬「ノルレボ」がOTC化、つまり処方せんなしで、薬剤師のいる薬局やドラッグストアで購入できるようになる。
これまで病院で処方してもらうしかなかったため、アクセス向上が期待されているけれど、どの薬局でも買えるわけではない。研修を受けた薬剤師が対応すること、プライバシーを守れる空間があることなど、厚生労働省が示す条件を満たした薬局での販売にかぎられる。

では実際、薬局ではどんな対応が想定されているのか。原則的に全薬剤師への研修を進めるドラッグストアチェーン「ウエルシア薬局」の薬剤師・久保田 友恵梨さんに、薬局で購入する際の流れや、想定されている現場での運用を聞いた。

▶︎緊急避妊薬に関する、基本知識や疑問、OTC化に関して、産婦人科医の稲葉可奈子先生に聞いた記事はこちら

望まない妊娠を防ぐ緊急避妊薬「ノルレボ」がOTC化、つまり処方せんなしで、薬剤師のいる薬局やドラッグストアで購入できるようになる。
これまで病院で処方してもらうしかなかったため、アクセス向上が期待されているけれど、どの薬局でも買えるわけではない。研修を受けた薬剤師が対応すること、プライバシーを守れる空間があることなど、厚生労働省が示す条件を満たした薬局での販売にかぎられる。

では実際、薬局ではどんな対応が想定されているのか。原則的に全薬剤師への研修を進めるドラッグストアチェーン「ウエルシア薬局」の薬剤師・久保田 友恵梨さんに、薬局で購入する際の流れや、想定されている現場での運用を聞いた。

▶︎緊急避妊薬に関する、基本知識や疑問、OTC化に関して、産婦人科医の稲葉可奈子先生に聞いた記事はこちら

誰もが日常的に訪れるドラッグストアでの販売で、緊急避妊薬へのアクセス向上に期待が高まる

——緊急避妊薬のOTC化を、ドラッグストアチェーンとしてどのように受け止めていらっしゃいますか?

必要とする人がより入手しやすくなることを期待しています。私たちは調剤併設型の店舗を、39都府県で約2,000店展開しているのですが、これは国内のチェーンで最多です。

都市部より地方都市に店舗が多いのも、特徴ですね。地方の一部では、婦人科やレディースクリニックの数が少なくて、交通手段の関係などからアクセスしづらい人、「知り合いに会ったらどうしよう」と不安を感じる人もいらっしゃると思います。


——都市部でも、いままで婦人科を一度も受診したことがない人が、緊急避妊薬のためにはじめて受診するというのは、ハードルが高いと思われます。

そうですよね。緊急避妊薬は、調剤のみを行う調剤専門薬局でも取り扱われるようになります。けれど調剤専門薬局は、待合室とお薬をお渡しするカウンターだけの可能性もあるので、そうした場合は少し落ち着かないかもしれません。

その点、日用品やコスメも販売しているドラッグストアは、誰もが日常的に訪れる場所ですし、他の人の存在をあまり気にせず、いつでも入りやすいと感じていただけそうです。

薬局でアフターピルを買う流れって? 薬剤の画像_1

話を伺った、ウエルシア御茶ノ水駅前店。こちらも緊急避妊薬販売の対象店舗となる。

——女性にとって身近な場所ですよね。ウエルシア薬局では今秋、店舗に勤務する薬剤師約7,200名のほぼ全員が、緊急避妊薬を取り扱うための研修を受けたそうですね。

ドラッグストアとして、地域の方の健康と安全を守る場でありたいと考えています。緊急避妊薬についても、どの地域に住まうどんな人にも、必要なときが来たら安心してアクセスしてもらいたい。多くの人に均一かつ、寄り添った対応をするには、できるだけ多くの薬剤師が研修を終えている必要があるという判断です。


——研修を終えた薬剤師のみなさんからは、どんな声があがっていますか?

緊急避妊薬はこれまでにも処方せん薬として扱ってきたものなので、学び直しの機会になったようです。

仕切りのある窓口で、周囲の人に知られることなく購入できるよう配慮したオペレーションを検討中

——緊急避妊薬を取り扱う店舗は、厚生労働省のHPで公開されることになっています。取り扱いの店舗には「プライバシーへの十分な配慮等に対応できる」ことが求められていますね。

調剤薬局はもともと、プライバシーに配慮した空間です。カウンターに仕切りを設けるなどして、薬剤師からお薬の説明をするとき、ほかの人にその内容が見えたり聞こえたりしくい構造になっています。

薬局でアフターピルを買う流れって? 薬剤の画像_2

ウエルシア御茶ノ水駅前店の、調剤薬局コーナー。カウンターには仕切りがあり、渡されている薬等が隣の人から見えにくいよう配慮されている。

——実際に緊急避妊薬を購入するためドラッグストアを訪れる場合、誰に、どのように声をかければいいのでしょう?

ウエルシア薬局は、厚労省がOTC化を検討するための「モデル的調査研究事業」に一昨年から参加し、一部店舗で緊急避妊薬を取り扱ってきました。それでわかったのは、ほとんどの人が厚労省のHPで店舗名を見て、一度お電話で在庫などについて確認したうえで来店するということです。ほかの処方せん薬と違って、必要としているのは主に若い世代の女性なので、日常的にネットを使い慣れているというのが大きいようです。

当社の店舗へご来店いただく場合は、調剤薬局のカウンターで薬剤師に直接お申し付けいただいても、薬剤師以外の店員にお声がけいただくのでも、どちらでも構いません。お話をお伺いした者が「緊急避妊薬をご希望ですね」のように口にすることはありませんし、周りにいる人に知られないよう配慮してご案内します。

「女性の薬剤師がいい」などのご希望があれば、どうぞおっしゃってください。他の婦人科のお薬などでも、そうしたリクエストは少なくありません。可能なかぎり、対応いたします。

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ドラッグストア内の調剤薬局エリアには、このようなサインが出ている(緊急避妊薬は処方せん不要だが、こちらのエリアで薬剤師から購入する)。

——ドラッグストアとしてはオープンしているけど、調剤薬局は閉まっていたり、対応できる薬剤師がいなかったりする時間帯がありますよね。そうすると、購入できないのでしょうか?

緊急避妊薬にかぎらず、ほかのお薬についてもいえることですが、私たちウエルシア薬局は多くの店舗数がありますので、ご来店いただいた調剤薬局がご対応できない時間帯であった場合には、アクセスしやすい近隣の営業中の他店舗をご案内いたします。どこも閉局している場合は、他社様をご提案することも検討しています。


——購入に年齢制限はありませんが、薬剤師が年齢確認をすることになっていますよね。ほかにも、すでに妊娠している可能性など、確認事項がいくつかあります。どのように、行われる予定ですか?

厚労省から通達されている内容にそってチェックシートを用意し、対応する薬剤師によって差が出ないように確認していくことを考えています。ほかのお薬でも、「アレルギーをお持ちですか?」「妊娠されていますか?」と確認が必要なものは多いので、通常の業務の延長線上としてとらえています。

薬局でアフターピルを買う流れって? 薬剤の画像_4

呼び出しは番号札を使用するなどして、緊急避妊薬の購入者であることは他の来店者にはわからない。

——望まない性交があって、緊急避妊薬を求める女性もいます。薬局が被害をキャッチするファーストネットになりうると思われますが、いま現在、どのような対応を考えられていますか?

そうしたことがあって妊娠が心配でも、薬剤師に被害を直接訴えることができる人ばかりではないと思います。また、加害者と思われる人物が同行してくることも考えられます。

そこで、まだ検討段階ではあるのですが、先ほどお話したチェックシートは、“指差しで確認”する方式を考えています。「性暴力が疑われますか?」「支援が必要ですか?」と書いてあるのを読んで、声に出さずに示していただければ、薬剤師が対応いたします。


——対応とは具体的にどのようなことを想定していますか?

薬剤師ができることは、ワンストップ支援センターなどの専門機関への橋渡しだと考えています。16歳未満の場合は、児童相談所も含みます。

これも状況によっては、その場でお伝えするのがむずかしいケースや、その時点でご本人が橋渡しを望まれていない、性暴力被害だと気づいていないケースもあると思います。ですので、お帰りの際に、ワンストップ支援センターなどについて書かれたリーフレットをお渡しすることも予定しています。

紙で持ち帰るのがむずかしい人には、その場で二次元コードを読み込んでいただくなどの選択肢も併せて検討しています。


——緊急避妊薬を購入したあとは、薬剤師の前で服用する“面前服用”が求められていますね。

ご本人が確実に服用されたことを、確認するためになります。調剤薬局には必ずお水があるので、それをお薬と一緒にお渡しするようにします。ご自身でお持ちのお水などで飲んでいただいても問題ありません。

久保田 友恵梨さんプロフィール画像
ウエルシア薬局株式会社 調剤運営本部 調剤推進部薬剤師久保田 友恵梨さん

アフターピルを購入した経験のある3名の話にもあったように、これまでは「病院の予約を取れず、すぐに購入できない」「初めて産婦人科へ行くので緊張する」「受付で名前を呼ばれたり、『緊急避妊薬をお求めの方ですね』と言われたらどうしよう」など、さまざまな不安要素があった。

ドラッグストアでの販売でも、調剤薬局の営業時間外は購入できないなどの制約はありつつも、日頃から行き慣れた店で買えるというだけで、心のハードルは下がりそうだ。
具体的な販売開始時期や金額など、まだ確定していないこともあるけれど、引き続き動向に注目していきたい。