「ちゃんと休めない」大人のための休養学。読者アンケート結果をもとに、回復できる休み方を片野秀樹先生に学ぶ

「休んでも、なんだか疲れが残っている」「休日が終わると、もう次の週がしんどい」「気づくと家事をして休日が終わっている」——。そんな“ちゃんと休めない”感覚をいつも抱いてはいないだろうか。SPURで実施した読者アンケートで見えてきたのは、休む時間が削られていくという現代ならではの悩みと、休むことへの罪悪感……。そこでヒントになるのが、休養を「活動の準備」と捉える休養学だ。

私たちは、どうしたらもっと“休んだ感覚”を取り戻せるのだろう。その答えを、「休養学」の第一人者・片野秀樹先生に伺った。

「休んでも、なんだか疲れが残っている」「休日が終わると、もう次の週がしんどい」「気づくと家事をして休日が終わっている」——。そんな“ちゃんと休めない”感覚をいつも抱いてはいないだろうか。SPURで実施した読者アンケートで見えてきたのは、休む時間が削られていくという現代ならではの悩みと、休むことへの罪悪感……。そこでヒントになるのが、休養を「活動の準備」と捉える休養学だ。

私たちは、どうしたらもっと“休んだ感覚”を取り戻せるのだろう。その答えを、「休養学」の第一人者・片野秀樹先生に伺った。

片野 秀樹先生プロフィール画像
博士(医学)、一般社団法人日本リカバリー協会代表理事、株式会社ベネクス執行役員片野 秀樹先生

東海大学大学院医学研究科、東海大学健康科学部研究員、日本体育大学体育学部研究員、特定国立研究開発法人理化学研究所客員研究員を経て、現在は一般社団法人博慈会老人病研究所客員研究員、一般社団法人日本未病総合研究所未病公認講師(休養学)、一般社団法人日本疲労学会評議員も務める。日本リカバリー協会では、休養に関する社会の不理解解決やリテラシー向上を目指して啓発活動に取り組んでいる。近著に『休養マネジメント「自分だけの休み方」が見つかる忙しい人のためのリカバリー戦略(かんき出版)』。

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「休養を取っていても回復しない現実」読者アンケートで見えたリアル

「休養」と聞くと、多くの人が「睡眠」「外出や旅行」などを思い浮かべるだろう。実際、読者アンケートでも「休養のためにすること」の1位は「睡眠を取る」だった。

ただし、興味深いのは、「休養を取っているはずなのに回復できていない」「休養のための時間が足りない」という声が多く寄せられたこと。そして知っておきたいのは、「休養=睡眠」だけではない、さまざまな方法があるということだ。

▼グラフ1:休養を取るために、実際にしていることは?(複数回答)

「ご自身が休養を取るために実際にしていることを、3つ選んでください」アンケート結果

「ご自身が休養を取るために実際にしていることを、3つ選んでください」 調査期間:2025年12月24日〜2026年1月4日

▼アンケートに寄せられた、休養にまつわる悩み・困りごと

【とにかく時間が足りない!】

「やるべきことをやってからでないと、休養を取ることに罪悪感を覚えてしまう。やるべきことを先にやるが、それが終わると休養の時間が取れないことが多い」(ぴんく)

「平日に起きている時間で精神的な休養(仕事の情報に触れずに、無になれる時間を作る)を取ろうとすると、睡眠時間が短くなりがちで、身体の休養が疎かになる」(A)

「自分だけの自由な時間も休養になると感じるが、圧倒的に時間が足りない。そして1日24時間に対してやることが多すぎるのが問題だと思うが、何を削ればいいのかが分からない」(saya)

【休養時間をとっていても、心が休まらない】

「休養していると、やりかけの仕ことや、やらなければならない事が次から次へと頭に浮かんできて、落ち着かない」(須斗列フルオ)


「いつもタスクを完了できている感覚がなく『果たして自分に睡眠時間を取る権利はあるのだろうか』とすら感じてしまう」(アンジェラ)

【楽しいことのはずが、その準備すらしんどい】

「前もって計画を立てる長期の旅行は、絶対に休むぞ!と気合いを入れないと厳しい。本当は海外旅行好きだし、日常よりも旅にお金をかけたいけど、その気合い入れがしんどい」(sao)

「休みを取って旅行に行くことを勧められるが、いつどこに行く、という計画を立てる気持ちの余裕がない」(Aimee)

休養学とは? 睡眠=休養だけでは足りない理由

休んでも回復できない・時間が足りない——。「しょうがない」で片付けてしまいがちなその慢性的な悩みを、片野先生とともに、休養学の視点でほどいていこう。


まず「休養学」とは、なんでしょうか?

——休養を学問として捉え直す考え方です。まず改めたいのは「疲れたから休む」という発想。疲労の反対語は、休養ではなく「活力」なんです。疲労とは、活動能力が低下している状態を指しますが、それを回復させるために活力を取り戻す行動、それが休養だと考えてください。


休養といえば睡眠のイメージが強いですよね。

——睡眠はもちろん重要です。ただ、現代人は睡眠だけでは回復できないケースが増えています。つまり「睡眠=休養」だけでは足りないことがあるんです。

▼グラフ2:休養を取るためにすること、として思い浮かぶこと(複数回答)

「疲労を感じているとき、『休養を取るためにすること』と言えば、何が思い浮かびますか?」アンケート結果

読者アンケート結果でも、「休養といえば睡眠が思い浮かぶ」という回答が最も多かった。

「疲労を感じているとき、『休養を取るためにすること』と言えば、何が思い浮かびますか?」 調査期間:2025年12月24日〜2026年1月4日

疲労を感じたら、休めばいいわけではない。まず回復の仕組みを知ろう

「休んでいるつもりなのに回復しない」背景には、どんなことがあるのでしょう?

——休養の目的が、「ただ休むこと」になってしまっているケースがあります。休養は、取ればいいというものではありません。目的感が抜けてしまうと、回復につながりにくいんです。


▼グラフ3:十分に休養を取れている、と思うか?

「ご自身の感覚として、『十分に休養を取れている』と思いますか?」アンケート結果

「休養時間は取れている」という回答が一定数ある一方で、悩みや困りごとには「疲れが取れない、回復できていない」という声も多数寄せられた。

「ご自身の感覚として、『十分に休養を取れている』と思いますか?」調査期間:2025年12月24日〜2026年1月4日

目的感、というのは?

——「自分の活動能力を戻すために、今何をするか」ということです。疲労のサインが出ているのに無理を続けると、休んでも回復しにくくなります。

休み下手な人ほどハマる“落とし穴”から抜け出すには?

読者アンケートでは「休み方を知りたい」「休み方のストックが欲しい」という声もありました。

——休養には「これが正解」というものはありません。休養行動は十人十色です。だからこそ大切なのは、休み方の引き出しを増やすこと。自分に合う休養行動を見つけていくことです。


自分に合う休み方は、どう見つけたらいいですか?

——「休養の7タイプ(下図参照)」という考え方があります。今の自分の生活の中で自然と取っていた休養をまず認知して、「あれも休養だった」「これも休養だった」と気づくことが大切ですね。すると再現性が生まれ、疲れたときに自分で「こういうときは、これをしよう」と回復行動を選べるようになります。


受動的に休むだけでは足りない場合もあるのですね。

——そうです。睡眠やゴロゴロする時間も大切ですが、それだけだと回復が追いつかないこともあります。そこで「攻めの休養」という考え方が効いてきます。自分から休養を取りにいく、という発想を持ってほしいのです。

「ちゃんと休めない」大人のための休養学。の画像_4

参照:「攻めの休養のための行動モデル」杉田・片野モデル

休養には、「休息」「運動」「栄養」「親交」「娯楽」「造形・想像」「転換」の7つのタイプがあり、その7つは「生理的休養」「心理的休養」「社会的休養」の3つに分類される。複数を組み合わせることで、休養効果がより高まるという。

★7つの休養タイプ★

①休息タイプ

安静にする休養(眠る、体を休めるなど)のこと。

 

②運動タイプ
身体の血液を軽く循環させる運動を指す。軽い運動は血液循環をよくして老廃物の回収を促進するほか、エネルギーに必要な酸素の供給を促す。仕事の合間に歩いたり、ストレッチをしたりするのは生産性アップに効果的。

 

③栄養タイプ
「食べすぎない」ことも休養のうち。スタミナ食はかえって胃腸に負担がかかりがち。胃腸に優しいものを食べたり、食事の量をコントロールしたり、身体を温めるような食事を摂ることもこのタイプに入る。

 

④親交タイプ
人と話す(何気ない会話)、自然に触れる、動物と触れ合う、パートナーとスキンシップする、子どもとハグをするなど、安らぎにつながる行動。

 

⑤娯楽タイプ
ゲーム、音楽、映画を観る、推し活など、好きなことをやること。ただしやりすぎないこと。

 

⑥造形・想像タイプ
絵を描く、編み物、料理、日曜大工に熱中するなどの創作活動や、ストレスを切り離すために行うマインドフルネス(瞑想)、空想など。

 

⑦転換タイプ
外部環境を変える行為。例えば旅行、部屋の片付け、服を着替える、アロマを焚くなど。

休養は“組み合わせ”で増やせる。小さな充電の蓄積が効く

忙しくて、休養のために特別なことができないと考える人も多いと思います。

——休養は、工夫次第で複数のタイプを同時に取れます。
たとえば、スープを作ったとします。野菜をたっぷり入れれば栄養タイプの休養になりますし、いつものダイニングテーブルではなく、ベランダで飲めば気分転換になります。さらに近くの公園まで持っていけば、歩くことで運動になり、公園の緑で自然とも触れ合えて、ベンチに座れば休息にもなる。
つまり、同じ「スープを飲む」でも休養の種類を増やせるんです。


それなら、日常の中でもできそうです。

——小さな充電を積み重ねることが、回復力につながり、活動能力の確保につながります。

土日から1週間を始めてみる「オフ・ファースト」のすすめ

アンケートでは「とにかく時間が足りない」という声も多くありました。

——私たちは、平日に疲れ切った状態から週末を迎えて、土日で回復させようとしがちです。 「休養は余った時間で取るもの」という発想のままだと、永遠に休めません。
まずやるべきことは、オフを先に確保すること。土日始まりのカレンダーを使ってみるのも一案です。まず休日にしっかり“充電”して、そのエネルギーを平日に使っていくことをイメージしましょう。


休日を「回復」ではなく「チャージ」と捉えるんですね。

——そうです。スマホでも、充電がフルの状態で使い始めるほうが安心ですよね。忙しい週は充電の減りも早いので、週の途中で補充が必要になることもあるでしょう。まず休日に1週間分の活動能力をチャージしておく、そして平日の中でも“小さな充電”を挟んでいくというやり方でスタートするといいと思います。


その考え方と、よく聞く「ワーク・ライフ・バランス」の考え方とはどう違うのでしょうか?

——私は「ワーク・ライフ・バランス」という言葉があまり好きではありません。「ワーク」が先に来て、結局“残り時間で休みを調整する”話になりがちだからです。代わりに注目してほしいのが「勤務間インターバル」です。


「勤務間インターバル」とは?

——仕事が終わってから次の仕事が始まるまでに、まとまった休息時間を確保する仕組みです。欧州では「勤務終了から次の勤務開始まで、連続11時間以上の休息を確保する」という考え方が制度として根づいている国があります。

たとえば夜9時に仕事が終わったら、翌朝8時以降に始業するイメージです。インターバルの時間には、移動時間、夕食、入浴、睡眠、そして気持ちを切り替える時間も含まれます。休養のための枠を先に確保する発想です。逆算すると、オフを除いた時間で仕事のタスクをこなす必要が出てきますよね。じゃあそのために何をすべきかと考えると、仕事の生産性にも目が向くようになるはずです。

休みの予定を先に入れる様子

オフの時間を先に決めてしまうことを習慣化したいですね。

——はい、オフ・ファーストで行きましょう。オフをしっかり確保すれば、自分でタイムマネジメントしていくことが可能になり、自分の人生をコントロールできているという余裕・ゆとりが生まれます。「オフ・ファースト」によって疲労から解放されれば、仕事の生産性も上がります。いい循環が巡ってくるはずです。

疲労は自分でごまかしてしまいがち。休むことへの「罪悪感」を手放そう

休むことに罪悪感がある、という声も印象的でした。

——昭和のCMに「24時間、戦えますか?」というキャッチコピーがありましたよね。しかし当時の人は、24時間も働いていません。ケータイもパソコンもなく、移動時間には本を読んだりしてリラックスできました。程よくオンオフを切り替えるタイミングがあり、人々は今よりも休めていたと思います。

しかし、今は通信機器の発達により、誰もが「24時間戦えてしまう」時代になりました。オフの時間も仕事が気になって、メールをチェックしてしまうようなことが起きていますよね。今の日本人は、気付いたときには手遅れなくらい、働きすぎてしまう環境にあると感じています。特に若い世代の女性の“休めなさ”が深刻です。以前私が実施したある調査では20〜30代の女性の9割が「疲れている」と回答しています。


▼グラフ4:休養を取ることに、罪悪感を感じますか?

「休養を取ることに、申し訳なさや罪悪感を感じますか?」アンケート結果

半数を少し超える人が、休養に罪悪感を感じると回答した。

「休養を取ることに、申し訳なさや罪悪感を感じますか?」調査期間:2025年12月24日〜2026年1月4日

そうですね。女性には、仕事、家庭、妊娠・出産、子育てなど、いくつもの役割があり「自分のことだけを考えて休養を取ることができない、いつも疲れている」という人が多いです。働き方や制度は少しずつ変わってきていますが、大きく変えないと解決できないのではないかとも思います。

——子育てや介護に従事している方など、自分でコントロールできない状況にある場合には、「どこまで頑張るか」を決めておく必要があります。人間は永遠に頑張り続けることはできないので、会社や家族と話し合ったり、自治体、時には外部の家事サービスなどのサポートに頼るなど、時間を作る工夫を意識的にしてほしいと思います。そうして作った余白時間は自分自身の充電に使ってほしいですね。


疲労は、そもそも身体からの危険信号なのですよね? 放置するのはよくないのでしょうか。

——そうです。ただ「疲労」と「疲労感」は違います。疲労感が出ているときには、すでに活動能力は低い状態になっています。

動物は、疲労が溜まると「歩けなくなる」など活動を止めることができます。一方、人間には「これ以上無理をすると危険だよ」という身体からのメッセージとして、疲労感、発熱、痛みというサインがあります。このうち「痛み」や「熱」があれば人は休みますが、疲労感ではなかなか休むことができません。なぜかというと、「疲労感」だけは使命感などの気合いやエナジードリンクなどによって、ごまかされてしまうからです。



確かに疲労を感じても「なんとかなる」と見て見ぬ振りして頑張り続けてしまいがちです。

——身体が深刻な状態に陥っていても、交感神経が興奮した状態ではある程度まで行動できてしまう。「まだ大丈夫」と無理を重ねてしまうんですね。しかし、活動能力は下がっているため生産性は落ちています。本来の力が出せず、ミスや事故が増えることにもつながります。さらにその状態が長引けば、病気にもつながっていきます。

だからこそ自ら意識的に休養を取り、活動能力を回復させる必要があるのです。“疲労を見える化する”視点も役立ちます。「朝の目覚め」「日中の集中力」「気分の余裕」「人と話す気力」などの活動能力が落ちていないか、意識してみてください。最近は、自律神経の状態を測定できるアプリなどもあり、ひとつの目安として活用することもできます。


▼グラフ5:意識的に休養を取っていますか?

「仕事やタスクの予定を立てるのと同じように、意識的に休養をとっていますか?」アンケート結果

読者アンケートでは、半数以上の方が、意識的に休養を取っていると回答。

「仕事やタスクの予定を立てるのと同じように、意識的に休養を取っていますか?」調査期間:2025年12月24日〜2026年1月4日

少しの時間でも回復するコツはありますか?

——あります。先ほども述べたように、休養は「長さ」だけではなく、小さな「積み重ね」でも作れます。子育てや介護などでなかなか自分の時間が取れないという人こそ、小さな積み重ねを大事にしましょう。

例えば、寝る前に楽しいことを思い出す時間を持つ、帰宅後すぐ家に入らず、車の中で1〜2分目を閉じるなど、細切れでも小さな充電を挟むことで、活力の回復につながります。休むことへの罪悪感を手放して、仕事や家事と同じように、休むことにももっと真剣に取り組んでほしいと思います。

第二弾では、読者アンケートに寄せられた疑問や悩みに、片野先生からアドバイスをいただく。さらに、実際に回答者の皆さんが実践している“休養アイデア”のご紹介も。