捨てられないパッケージという難題にときどき遭遇します。外箱を含めた一連の「交響曲」を、形骸的なモノ作りではなく、ひとつのストーリーとして奏でる創り手の真摯な姿勢がストレートに伝わってくるとき、私はそれを簡単に捨てることができません。
最近ではこれです。サンローランの秋冬の口紅。先日、口紅柄のサンローランのウォレットやダッフルを紹介したばかりですが、このパッケージを見た瞬間、ビューティとファッションの垣根を越えて点と点が繋がったのを、手ごたえとして感じました。
外箱に躍動する唇の数々は、口紅自体にもエンボスとして刻まれています。そして、ここでは映っていませんがフタ部分にも赤い魅惑的な唇がひとつ。胸を躍らせながら外箱に手に伸ばし、そのフタを開けて口紅を繰り出し、自らの口もとを染めるひとりの女性の所作や表情が、くっきり輪郭をもって心に迫ってくる。その想像力を手助けしてくれる創り手の心遣いを、尊びたい。こんなとき、私は化粧品に、単なる「コスメティック」を超えた無限大の力を感じます。
心までドレスアップするルージュ ピュールクチュール コレクター、既存のピュールクチュールの中でも特に支持の高い4つのアイコニックな色をまとって9月4日にお目見えします。