#20 名前でジャケ買い

数年前にTHREEからENJOY THE SILENCEという名前の口紅が限定発売されたことがありました。名前を耳にしただけで絶対に買おうと心に決め、実際に購入した一本です。色というより、名前を買った。そう言ったほうが正しいかもしれません。この色名はご存知デペッシュ・モードの1990年のヒット曲なのですが、「ことばは不要、沈黙を味わえ」と歌うこの曲をよりによって、いやあえて唇に使うとは…!!と心が震えた口紅でした。

同様にThe Lily of the Valleyも名前に脊髄反応して購入したペンハリガンの香りです。私はタルカムパウダーを愛用しているのですが「谷間のユリ」もしくは 「鈴蘭」は多くの文学や宗教のコンテクストで用いられるタームであり、メタファーであるわけです。私の場合は、ごく単純にクイーンの「The Lily of the Valley」とシンクロして心に飛び込んできた名前でした。

The Lily of the Valley、名曲です。ついでにいうとシアー・ハート・アタック収録曲は全て大好きです。壮大な歌詞とは裏腹な、透明感あふれる鈴蘭の素直な香りが脳内で不思議と合致して、これをまとって熱唱するフレディの雄姿を妄想 するまでに発展(すみません)。クイーンの曲で歌われた花は鈴蘭ではなく白ゆりなんじゃないかと私は思ってますし、フレディはもっと濃密で官能的な香水を好んでいたような気がするので的外れな図式に違いないのですが、ときに化粧品 の名前から始まる個々のストーリーがあってもいい。そして名前には想像力を刺 激する美しいちからがある。私はそう思っています。(エディターIGARASHI)

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