2020.06.22

90年代のカリスマ。伝説のメイクアップ アーティスト、ケヴィン・オークインを今こそ語りたい!

YOKOMIZO(以下Y)ステイホーム中に観た映画で、一番面白かったのがケヴィン・オークインのドキュメンタリー映画『ケヴィン・オークイン:美の哲学』。ただいまオンラインで絶賛公開中です! ケヴィンといえば、スーパーモデルたちを虜にさせた天才メイクアップアーティスト。まさに世代の我々としては、語るしかないでしょう!

映画『ケヴィン・オークイン:美の哲学』(オンライン配信中)より

IGARASHI(以下G)私も早速観ましたよ。革新的なメイクアップを次々と生み出したケヴィンは90年代のSPUR誌上でも、美しく斬新なクリエーションを何度も披露してくれていました。ということで、今回は、当時いつも取材して下さっていた、桂まりさんがスペシャルゲストです!
KATSURA(以下K)こんにちは。この特集、約25年前ですよね。懐かしい。

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『SPUR』1996年9月号「ケヴィン・オークインのドラマティック・アイメイク」。モデルはチャンドラ・ノース
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『SPUR』1997年9月号「ケヴィン・オークインの『主役』メイク」

G 桂さんは当時ニューヨークでケヴィンの撮影・取材を担当していたんですよね。
K そう。いつも刺激的な撮影現場でした。彼のメイクアップでモデルのチャンドラ・ノースを女優に見たてて変身させたりして。
Y このページ、当時うっとり眺めていました。今見てもカッコいい。
K ケヴィンとチャンドラとは同じアメリカ南部の出身で仲がよかったの。現場の雰囲気も明るくて楽しかったな。このページは、撮影もケヴィン自身によるものでした。

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『SPUR』1995年9月号「メイクの魔術師 ケヴィン・オークインがスーパーモデルを変えた」
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ケヴィンのメイクアップで、ジェニー・シミズが変身!

G 私は19959月号の、ジェニー・シミズを変身させたページが好き。強くて、美しい。その後、彼女はモデル事務所のエージェントになったんだけど、ジェニーがカバーのSPURをあげたらすごく喜んでいました。そしてケヴィンといえば、やっぱりこの細眉。
Y メイク史に残るトレンド! 映画の中に、細眉ブームが生まれた時のエピソードが出てくるけど、それが最高でした。ええ〜? そんなことしちゃう? さすがカリスマっていうね。細眉メイク世代の方々には、そのルーツをぜひ観ていただきたい。

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ケヴィンの著書、『The Art of Makeup』より。細眉やリップライナー、光と影を駆使して立体感をだすコントゥアリングなど、ケヴィンが広めた革新的なモードメイクは世界を席巻!

G 細眉だけでなく、リップライナーを流行らせたり、コントゥアリングを広めたり、ケヴィン発のトレンドはそれまでの美の概念を覆すものばかり。
Y メイクアップだけでなく、化粧品のクリエイションも素晴らしかったですよね。
G 彼がクリエイターとして携わっていた資生堂inoui……素晴らしかった。
Y 伝説のブランドですね。メイクアップアーティストの方々も熱狂的に好きでしょう? MICHIRUさんは、いまだに全色とってあるって。

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資生堂inouiのキャンペーンビジュアル。ケヴィン自らステラ・テナントとともに登場!

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伝説の名品、資生堂 インウイ ジアイズ WT900。4色のホワイトバリエーションとブラックの組み合わせが新鮮だった

G 白のバリエーションのアイシャドウパレットは「こんなの見たことない!」という代物。それぞれピンクやグリーン、ブルーやイエローのアンダートーンのある白に挟まれて、真ん中にブラックがドーンと! バイト代を貯めて頑張って買った時のことを思い出しますね(遠い目)。パッケージもスーッと薄くて、漆のような赤に彩られていて。本当に洗練されていた。
K ベージュやブラウンのニュートラルカラーも、当時は新鮮でした。
Y ベーシックに見えるのに、ほかにはない色出しで、モードで上品。プロにも圧倒的に支持されるのに、素人が使っても絶対綺麗に仕上がるというね。唯一無二ですね。
G 心から、復刻版を出していただきたいです。

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『ケヴィン・オークイン:美の哲学』(オンライン配信中)より

G この映画では、ケイト・モスやナオミ・キャンベルなどなど、スーパーモデルやセレブリティが当時のエピソードを語っているけれど、SPURの撮影現場でのケヴィンはどんなふうでした?
K   本当に優しくて、スウィートなの。すごく背が高いんだけど、小柄な私と話す時はその都度かがんで、目線を合わせてくれるような人でした。
Y インタビュー映像では、みんなが口を揃えて「手が大きい」と言っているのが印象的ですよね。
K そうなの。モデルの顔をすっぽり包み込んでしまうような大きな手から、魔法をかけたようなあの美しいメイクアップが生まれていたんですよね。しかも、仕事がめちゃめちゃ早かったの。

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『ケヴィン・オークイン:美の哲学』(オンライン配信中)より

G ところで、桂さんがこの映画で好きなシーンはどこですか?
K ケヴィンが、子どもの頃からの憧れの人にメイクをするところかな。ネタバレになってしまうから詳しくは言えないけど。あの瞬間はきっと「夢を叶えた」って感じだったんじゃないかしら。
Y 確かに、あそこ、なんだか感情移入してジーンとしてしまいました。
G モデルだけでなく、ハリウッド女優にまで斬新なコンセプトのメイクアップをしていたのも、印象的。
Y 揺るぎない信頼関係を築いているからこそ、できることですよね。チャレンジングなメイクでも、絶対的に美しい。
G 
横溝さんが好きなシーンは?
Y メイクのトレンドが生まれる瞬間の裏話みたいなものを知れたのが面白かったな。しかもリアルタイムでそれを体験し、語っている人々がゴージャスでいい。
K 本当に華やかな時代でしたよね。

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1996年の発売当時、大きな話題を呼んだ『The Art of Makeup』はモードメイクのバイブル! ケヴィンの美学すべてが詰め込まれた大判のビジュアルブックだ 

Y ケヴィンが光の速さでトップにのぼりつめていく過程も間違いなく煌びやかなんだけど、一方で、ずっとどこかにコンプレックスを抱えていたんだな、ということも伝わってきました。切なさを内包したきらめきこそ、まさに時代のスター。
G 40歳で逝ってしまったのは、あまりに早すぎた。美しいものを貪欲に求めながら、繊細な心は何度も傷ついて…。晩年に向かうシーンは本当に哀しくて、切ない気持ちで胸がいっぱいになりました。
Y ほんと、ケヴィンがいなかったら、今のモードメイクはないと思う。メイクアップの魔法をもっと見せて欲しかったですね。でもこの映画で、改めてメイクアップの持つパワーを思い知らされました。社会全体が不安を抱えているようなこんな時期こそ、個性を際立たせ、多様な美しさを生み出してきた、ケヴィンの美の哲学を見習いたい!

『ケヴィン・オークイン:美の哲学』
監督:ティファニー・バルトーク
出演:ケイト・モス、リンダ・エヴァンジェリスタ、ナオミ・キャンベル、シェール、イザベラ・ロッセリーニ、ブルック・シールズほか

▪️公式サイト https://www.uplink.co.jp/aucoin/

オンライン配信にて公開中、2020 年アップリンク渋谷、吉祥寺ほか全国劇場にて公開予定

▼ オンライン配信情報 ▼
価格:1900 円(税込み)
視聴期間:2 日間
配信期間:〜7月31日(金) ※4 週間 配信サービス:ビデオマーケット、music.jp、GYAO!ストア、DMM 動画

text: Naoko Yokomizo

エディターIGARASHI

SPUR編集長。おしゃれスナップ、モデル連載コラム、美容専門誌などを経て現職。趣味は相撲観戦、SPURおやつ部員。

エディターYOKOMIZO

ビューティエディター。バレエとサーフィンと南国が好きです。紫外線と上手に付き合うことが永遠の課題。

 

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