もしもピアノをプレゼントされたなら

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≪ピアノ24色≫ ¥172,800<数量限定発売>/エルメス

「色を創り出すアプローチは、音楽と似ています。ひとつひとつの色は最初、論理的かつ数学的にセオリーを組み立てて生み出すのですが、それらはやがてストーリーを奏でながらハーモニーになっていきます。最終的にメロディになるときには、非常に情感的に美しいものが出来上がっていくのです。色とは、じつは音符のようなものなのですよ」

オンライン越しの発表会で、エルメスのビューティ部門のクリエイティブ・ディレクターのジェローム・トゥロン氏はこんなふうに語りました。

そう聞いてこのオレンジボックスを見ると、どうですか。世にも美しい旋律が聞こえてきませんか?

圧巻とはこのこと。夢のような鍵盤ができあがりました。24色のエルメスの定番色がそろい踏みとなった≪ピアノ24色≫。24の意味はお分かりですね? 本店の番地にちなんでローンチした、デビューコレクションの精鋭24色が勢ぞろいしています。

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≪ピアノ24色≫には、右端の限定色3色以外のすべてがパッケージされています

では24色はどのように生まれたのですか?

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レザーやシルク、色のインスピレーションとなったアーカイブス の一部より。色彩のひとつひとつにストーリーがあるのです

「時間がかかりました。慎重に時間をかけて選び抜いたのです。というのも、エルメスは色のアーカイブスが非常に豊かです。シルクだけでも75000色以上、革でも900以上の“色”をもっている。気が遠くなる選択肢のなかから、編集しました」

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≪ルージュ エルメス リップスティック ケース≫各¥37,300 (リザード素材は¥69,200)/エルメス

ホリデーギフトの目玉はまだあります。口紅を収める革のケースがそれ。口紅を取り出し、色彩をまとい、またケースに収める一連の所作が残像として記憶に刻まれていくような、そんなオブジェです。ちなみにケースの内側も、外側と同じカラーをまとっています。製本用のレザーを用いているので、口紅の出し入れが流れるようにスムース。縁の断面に施されたアスティカージュの仕事の細やかさ、鞍と同じサドルステッチの緻密さも見逃せません…! どれだけ長く見ていても、長く触れていても飽きません。

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ちなみにツートーンの美しい限定ケースは、レフィル交換が可能。サステイナブルのひとつの提案です。≪ルージュ エルメス ルージュ ア レ―ヴル マット≫ローズ・ニュイ 54 ¥8,000/エルメス

ローズトーンの秋冬の限定色も発売中。いずれも心地よいくすみトーンです。SPURが特にレコメンドしたいのは、ベルベットタッチのベージュローズ「ローズ・ニュイ」。艶消しマットのシックな色みが冬に向かう陽光にしっくりなじんで素敵なんです。

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右から、サテンの質感のローズ・ポメット 32、時計まわりにローズ・ニュイ54、サテンテクスチャーのローズ・オンブレ 45 
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発色はいずれも絶妙な中間美色!上からローズ・ポメット 32、ローズ・オンブレ 45、ローズ・ニュイ54
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外箱の紙をよーく見てください。イレギュラーなテクスチャーが見えますか? リサイクルペーパーを採用しているので、ひとつひとつ表情が異なるのです。

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余談ですが、この発表会ではペットボトルではなく紙のパッケージの水が提供されました。飲料容器の中で比較すると、紙パックは気候変動への負荷がもっとも少ないとされています。美容発表会で私自身、紙パックの水に出会ったのはこれが初めて。エルメスがサステイナビリティに本気だという証左が現れています。

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こちらはパッケージデザインを担当したピエール・アルディのスケッチ画。

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口紅のキャップに輝くエクスリブリス。オレンジボックスを開けると、口紅は天然素材のキャンバスポーチに入って姿を現します。

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口紅1本のギフトも素敵です。2020年を走りぬいた自分へのホリデーギフトに、どうですか?

最後にジェロームに聞いてみました。2月パリでの発表会で「色とは旅のようなもの」と表現していましたが、世界がこうなってしまった今、あなたはどうやって旅をしているのですか?

「たしかに抗えないかたちでこういう世界になってしまいましたよね。でも、夢を見たり、音楽を聴いたり、映画を観たり……ひとはいろいろな手段で世界に向かって心を開くことができるのです。実際に旅を再開できる日が来るまで、心を違ったかたちで旅をさせ、インスピレーションを得ることができるはず」

「色を通して夢を見たり、または色を通じて旅をすることもできるでしょう。そしてマスクを通して唇が隠れてしまったとしても、自分自身が心地よくあるためにメイクアップをすることも意味があることなのです。人に見せるためではなく、自分のために」

ぼんやり考えていたことが、はっきり輪郭をもって見えたような気がしましたね。この半年、無色な毎日に慣れきってしまった日もありました。どうせ誰にも会わないから、と口紅を塗らない日もありました。でも、究極の意味でメイクアップとはそういうことじゃないかと。誰のためでもなく、自分のために。自分の心を底上げする、そんなシンプルで利己的な目的のためでいいんです。その1本から聞こえる微かなメロディがたったひとりのあなたを救ってくれる、そんな奇跡もあるのかもしれません。

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エディターIGARASHI

おしゃれスナップ、モデル連載コラム、美容専門誌などを経て現職。
趣味は相撲観戦、SPURおやつ部員。

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