化粧品はインテリアと思うようにしています。自宅で過ごす時間が長くなった今なら、なおのこと。そこにある佇まい自体が美しいほうがいい。機能性、つまり発色の素晴らしさや、肌にのせたときの輝きはもちろん、パッケージや色材のあしらいの意匠で競うのも、コスメティックスの世界の醍醐味です。例えば、アディクションの限定アイカラー。
原石をイメージして生まれた唯一無二のアイシャドウです。まだ研磨される前、地球から掘り起こされた手つかずの、儚い美しさ。色名はセンシュアル ルビー。ルビーの原石が、微差を醸し出しながらほんのりまぶたを彩ります。エモーショナルにうつろう色彩は、クリムトの絵画のよう。きらきらやマットのピグメントがその都度、塩梅を変えながら色づくさまは、一期一会の出会いです。クリアの端正なスクエアパッケージと、予測不可能なメランジェとの対比も、この上なくおしゃれ!
サイケ柄にも見えるパレットはコンシーラー。肌ムラを点で攻める技巧派パウダーです。かのジョルジュ・スーラを気取って、点描画を描くイメージですね。左側の3色をチップでブレンドするようにして取り、色ムラ部分に重ねたら、ニキビには青い浅葱色、青いクマにはピーチオレンジ、茶系のクマにはマスタードイエローでトッピング&点対応。右端のピンクから全色ブレンドして、チークとしても使えます。もちろんアイカラーにも。躍動感あるプレイフルな「渦カラー」は、マルチユースできるお利口さんでもあります。
最後に、秋の新色からいち早く、世にも華麗なパレットを。ピーター・フィリップスが、またとんでもない仕事をしてしまいました。蓋を開けた瞬間、吐息が漏れてしまうのは、私だけではないはず! これは……工芸品でしょうか? 触れるのも憚られる眼福力。
色鮮やかな鳥と、偏光して輝く羽根がインスピレーションのサンク クルールです。表面に刻まれた細工から、羽ばたきが聞こえますよね? これぞクチュールの世界線のアイシャドウ。色名は「ナイト バード」と、これまた想像力を揺さぶる素敵なネーミングです。
もはや単なる色ではないですね。希望です。ポスト・パンデミックに向けてナイトライフの復活をイメージした夢が、羽根の稜線ひとつひとつに刻まれています。東京の私たちには、まだまだ先の話。でもきらびやかな夜のひとときへ手を伸ばすように、このパレットへ夢を託してみたいものです。
いつまでも見ていたい色彩の世界。永久保存版として、ただ眺めて共に過ごす。あえて、使わずに置いておくーそんな宝ものがひとつくらいあっても素敵ですよね。