突然ですが、一日の中で、いちばん好きな時間は何時ですか? 私は、金曜日の深夜と即答します。ありきたりだけれど、そうなんです。
力いっぱい働いて、土曜日に日付が変わったあの時間のために、しゃかりきに仕事しているといっても過言ではないくらい。うんと夜更かしができる週末だから、ビールはお代わりし放題。おつまみは韓国旅行でたんまり仕入れた海苔「カムテ」を主役に、チーズを一緒に用意して。片手には、ケータイです。
ウィークデイだったとしても、私の場合、夜半過ぎはまだ眠っていない時間帯。いずれも、自分のために使える大切な時間が、0時過ぎなんですね。
せわしない毎日だからこそ帰宅後、貴重な「夜中」をどう過ごすか? 時間泥棒に打ち勝てるか? 夜中の独りの時間をどう生きるかが、昼間の充実度に差を付けるという、ごくシンプルで当たり前の事実をやっと最近知りました。
それを教えてくれたキャンドルのお話です。
正面にはブランドロゴ、背面には時刻とタイトルが刻まれています
さきほどの「時間泥棒」の正体とは。私の場合、ケータイの流し見のことです。この記事をケータイでご覧いただいているだろう皆さんには申し訳ない話なのですが、深夜、アルゴリズムに導かれるまま動画を眺め続けて数時間。そして、寝落ち。人生で何週間、いや何か月分費やしてきただろうと考えて、絶望しました。身体を睡眠モードに誘導するために、ケータイを手放せるスイッチはないものか。探していた時に、出合いました。
夜半過ぎ、「なにもしない」贅沢を
ドルセー 00:30 En bas de chez toi センティドキャンドル 190g ¥9,900
0時を過ぎたら、ロウソクに明かりを灯します。で、何もしない。10分くらい目を開けたままなーんにもしないんですよ。瞑想のテクニックなど高尚なワザは会得していないので、脳内には色々なタスクが駆け巡ります。あの案件、早く進めなきゃ。お店を予約するの、忘れてた。あの書類を作るの、面倒だな。無限に課題が浮かんで、脳内では見えない真っ黒なゴミ袋に全身を覆われるのがほとんどです。日中なら、とりあえず手を動かしてパソコンを連打するわけですが、何もしない。メモも取らない。頭の上に、課題と不安を置き去りにしておく。
はじめは、プレッシャーに負けて動画に逃げていました。理由は、無心で動画を眺めれば、悩み事を忘れることができるから。ところが香りに意識を傾けながらケータイを我慢したところ、タスクは脳内に浮かんでいるのに、心がゴミ袋から脱出できるようになったんですよね。0時半のキャンドルと一緒だと、なんとなく健やかな「ぼんやり」が心地よくなりました。
「ポスタル ドルセー」の対象となるのは、いずれも時間をテーマにしたセンティドキャンドルとルームスプレー。香りと時間、記憶を共有する、素敵な試みです
なお、ドルセーでは「POSTAL D’ORSAY」”香りが届けるひととき”というテーマを掲げて、ホームフレグランスに、香り付きレターセットを添える店頭キャンペーンを開催中なんですよ。受け取った側は、きっと香りとともに、あなたの優しい心遣いを思い出すはずです。10月9日(月)まで。
10分ほどで、私は炎を消してしまいます。自分と1日を顧みた余韻で焦燥感を手懐けた、そんな感じ。
で、フランス語の香りの名前の話です。これが、いいんです。En bas de chez toi、「あなたの家の前で」。0時半、「あなたのアパートの正面」に立っている人を包む香りですよ。すごい。ちょっと怖い。ロマンティックなのかどうかは受け取り方次第。もう終電はない。電話を鳴らすのか、ピンポンするのか、そもそもこんな時間に連絡できる相手との関係性はどうなんだ、など妄想は膨らみます。解説はこうです。「8年間、雨が降っていません。最初の一滴が落ちました」。恵みの雨ですよね。でも、雨が降り注ぐのは、森の木々ではなくて、街のアスファルトなんです。
パッケージは落ち着いたオレンジ色。正面のセンターに、時間が刻まれています
調香師が描いた香りのストーリーが、外箱の背面に綴られています。香りが映像化される瞬間!
ギフトの際のあしらいもモダンで美しい
街と自然、その両方を独り占め
ベースノートにカシュメラン。これが濡れたコンクリートの正体です。ウッディ的なムスクに香る合成香料で、個人的にとても好きな成分。海ロケに出かけた帰路の髪の香りのような、豊かな潮の余韻はベースに隠されたアンバーグリスから香り立ち、雨に濡れた土や木々の湿気を思わせるオレンジブロッサムやシダーウッドが追いかけます。つまり、家の中の香りではないんですよね。タイトルの「あなたの家の前」と表現されたその場所は、きっと公園に面したアパルトマン。都会の中の自然を思い起こさせる、アンビバレントな魅力と透明感のあるウッディ・ムスキーな香りだからこそ、東京で働く自分自身に重ね合わせることができる。そう、強引に解釈しています。
0時半を境に、きっちりケータイとさよならすることができました。と、言い切れないのが悲しい真実なのですが、自分自身を俯瞰で見るささやかな余裕をもたらしたのが、このキャンドルなのです。
早朝4時半の抜き打ちとは
まずはミニサイズがおすすめです。ギフトにもいい。ドルセー(左) 23:15 A l'abri des regards センティドキャンドル、(右)04:30 Par surprise センティドキャンドル 各80g ・¥6,050
参考までにドルセーのセンティドキャンドルシリーズ、時間ごとに15製品展開しています。夜明け前のいちばん深いところでは、4時半の「不意打ち」。一体どんな奇襲なんでしょうか。パーティがお開きになる頃の物語なのですが、そんな体力はとっくにない身としては、尊敬しかないですね。フランキンセンスやサイプレスが無言で漂うウッディは、「夏草や 兵どもが 夢の跡」という印象。
一方で、23時15分はオリエンタルな香り立ちの「誰にも見えないところ」という名前。見えないから見たくなるっていうものですよね。
朝と夜の間のドラマや妄想が広がる香りのキャンドル、ぜひ青山本店 のスペシャリストとの会話を通して、あなただけの「時間」を見つけてみてください。
シトロネラ精油やレモンユーカリをブレンド。生活の木 シトロネラ ブレンド エッセンシャルオイル10ml ¥1,650
おまけ。当編集部、ここ1週間、蚊が発生してるんですよ! そして集中的に攻撃されているのが私。パチンパチンと虚しい手拍子がフロアに響く闘いの日々、顔まで刺された挙句にこのオイルに助けを求めました。生活の木のシトロネラブレンド。ティッシュに含んでデスクに置いた本日は、きゃつらを迎撃できてます。湿度の影響で蚊がまだまだ元気だという今週、皆さんもぜひおひとつ!