京都との邂逅、その必然
グローバルでほぼ同じデザインを踏襲してきたそんなル ラボが、この春、美しい化学反応を見せるというニュース。場所は、京都の木屋町通。1879年、つまり145年前に建てられた町家を舞台に、新しい香りの実験と冒険が始まります。
たとえば、外観。暖簾が訪問者を出迎えるファサードも、世界初。
調合を行うラボの一角が木造なのも、ここだけです。
驚くほどの奥行きが、町家の魅力。見上げると、力強く梁が交差するその先から自然光が差し込みます。外観からは知りえない解放感。
箱庭に面したラボ併設の店舗スペースにも、光がふんだんに。地階で出迎えるのは、ル ラボのすべてのラインナップ。
壁面の商品棚の奥には、ハンドソープなどを試せるシンクも。もともと据えられていた洗面台。
この町家、かつては酒蔵でした。商い先の控書が当時の名残を物語ります。
箱庭の向こう側には、日本では初となるカフェ。蔵を改装した可愛い建物の正面には、「せ」の文字。かつての酒店の名前「きんせ」の「セ」が躍ります。
レシピはヴィーガン。私が味わったのは抹茶のヴィーガンペストリー。大好きな香り「マッチャ 26」にちなんで選びました。
カフェはテイクアウトのみ。カップにはファサードのイラストが描かれています。スタッフはソウル店と同じ素敵なエプロンをまとって。
畳の上で出合うル ラボ
商品を購入すると、靴を脱いで上ることのできる2階には、「調香の間」と「工匠の間」が広がります。
前者は香りの素材が陳列された空間。歴史を刻んだ和家具にエッセンシャルオイルが静かに並びます。
一角には、香りのインスピレーションである書籍も。ル ラボの脳内を覗くような背徳感。
後者は職人技を伝える空間。訪ねた日には、書家の加茂学さんがゲストのためにリクエストされた文字をラベルに綴っていました。
漢字と出会って全く違和感のない、むしろその美しさを高め合うル ラボのボトルの不思議。
そう、何が不思議と言うならば、古都の町家にありながら、ル ラボを構成するすべての要素が、そこにずっとあったように感じられた衝撃。デザインがシンプルだから? 特定の時代性を意識していないから? それだけではないと思うのです。それは、日本の文化への理解と敬意が惜しみなく注がれているからこそ。約150年前からの躯体や息吹を残しながら時間をかけて丁寧な改装を施し、古都の文化に溶け込む風景へと導いたル ラボの、途方もない情熱と仕事に、胸が熱くなった幸せな旅となりました。
店内には掛け軸も。地階の奥には、職人技の精神を表す「守破離」の文字。
ル ラボのグローバル ブランド プレジデントのデボラ・ロイヤーはこんなふうに語りました。「日本の詫び寂びは、ル ラボの創造力の源泉であり続けていました。ですから、京都のこの場所に出合った感動。今でも忘れることができません」。
伝統と革新、洗練と畏敬。遠いようで互いが惹かれあい、奇跡のように交わったル ラボと町家の軌道が交わる瞬間、それだけを体感するためにも、今すぐ京都に向かって損はありません。
LE LABO KYOTO MACHIYA ル ラボ 京都町家
LE LABO CAFE KYOTO MACHIYA ル ラボ カフェ 京都町家
●京都府京都市中京区木屋町通四条上る2丁目下樵木町206番地
営業時間/10:00~19:00