【エルメス】【ドリス ヴァン ノッテン】【ゲラン】もつだけでご機嫌を約束！ 美口紅頂上決戦ベスト３

あなたの唇をジュエリーに塗り替えます

ミラー内蔵型の舟形口紅、ルージュ ジェ。15年前の発表会の感動は今でも記憶の中で色鮮やかです。パウダールームに駆け込むことなく、手元で簡単に紅を引ける機能性。天面部分を開くと二面の鏡がお目見えして、1本だけでルージュを塗る所作を可能にしました。

使い終わってキャップを戻したときの「かちり」という音は高級車のドアのトーンをイメージしました、というさりげない一言もあまりに斬新でした。ジュエリーのような重厚な佇まいは無類。それもそのはず、第一世代を考案したのはジュエリーデザイナーのロレンツ・バウマーだったから。美口紅の金字塔、ルージュ ジェが、15年ぶりにリニューアルします。

メタル部分はゴールドにアップデート。重量は19％の軽量化を果たしました。デザインは9種類で３カテゴリー、「タイムレス」「オーナメント」「パターン」に分類され、各３つずつ展開します。変わらずリフィル可能なので、スタイルにあわせた着せ替えも自由自在。SPURの推しは、「パターン」の「スタッズ」と、「オーナメント」の「マーブル」。前者はヴェルヴェットにゴールドの粒々スタッズが規則的に躍るロックな装い。後者はシャンゼリゼ68番地のブティックのフロアへのオマージュです。

生みだしたカラーシェードは40色。下地になった美意識は、パリジェンヌがよく口にするアレ。そう、“je ne sais quoi“です。ジュヌセクヮ、つまり「なんだかわからないけど」「ことばにはできないけれど」惹きつけられてしまうニュアンスやムードが、最高の発色と輝きとともに厳選された40の色彩となりました。あなたのスタイルを引き立てる運命の色が必ず見つかるはず。

手間ひまが注がれています。ヴィオレットの望む究極の発色を実現するため、ピグメントごとにオイルと攪拌する温度と時間をそれぞれ最適に調整する「ワンバイワン製法」を採用。色素を均一に分散させるアビシニアンオイルを用いて、鮮やかな発色を底上げしました。また自慢の赤シェードには、独自のピグメント「Red G（レッド ジェ）」を処方。これはブルー系とオレンジ系、ふたつの異なるトーンの赤の色素をブレンドした、ゲラン初のピグメントのこと。青とオレンジのコントラストを最大活用することで、赤にドラマティックな深みと鮮やかさが加わっています。乾きづらくなったのも今回のニュース！ 処方の最大89％をスキンケア成分で構成して、乾燥やダメージを防ぎます。配合ワックスは100％ナチュラル、ユリとアーモンドオイルをブレンドしたオレオリリーエキスが、もちもちに潤った素唇へと導きます。いやほんと、実際に塗ってみて、ケア効果の高さを実感していますね。乾かない。

ポーチから取り出して、タッチアップする所作までを計算した、「塗るジュエリー」がここに。

肩の力の抜けた軽やか蛍光色。ラグジュアリーってこういうこと

「用の美」を体現するリップスティックは、ピエール・アルディによる遊び心あふれるパッケージも圧倒的な存在感。3色のリミテッドカラーは、それぞれボトムボディの配色バランスが異なっているんですよ。すべて蛍光マットというポップな提案。他と差をつけるならエルメスを選んで正解です。

例えば右端の、ネオンピンクのパッケージ。上部を彩るグレーがパリのスレートの屋根を彷彿とさせて。そこに朝日の薄桃色が差し込んだような情景が見えてきます。パリの新しい一日の息吹を、そのまま唇に運ぶイメージ。

初夏の緑に映えるヒナゲシのようなパッケージを繰り出すと、鮮やかなオレンジが現れます。この色、オレンジボックスに想いを寄せながらも、プレイフルな余裕が感じられるんですよね。おとなにこそまとってほしいネオンです。

ボディにルージュの色が反映されていない1色。「動力的な赤」というエネルギッシュな名前のとおり、ストロングなマット真紅が心強い限定色。凝視すると、ボディのキワに蛍光イエローが一筋。下から茄子色、蛍光イエロー、群青色とグラデーションが展開して、最後にピッとイエロー。ちょうど自分で口紅を塗るときにネオンのアクセントが目に入って、おしゃれな気分が盛り上がる。こういうディテール、嫌いじゃないですね。

祝・上陸1周年。いつだってドリスとともに

最後に日本で発売が開始して1年経ったドリス ヴァン ノッテンのビューティコレクション。香水やハンドクリーム、ソープとトラベルポーチなどから展開する商品は、それぞれ異なる柄や色を対比させたデザインがドリスらしくて、見惚れます。

質感は３タイプ。サテン、マット、シアーの絶妙なテクスチャーが、それぞれの色を引き立てる。ローズヒップオイルを配合した処方で、唇をいたわるスキンケア視座も嬉しい。

クリムゾンレッドの芍薬に重なるような、ドラマな赤。

キャップのエンボスには、ブランド名が鎮座。

普段愛用しているダスティベージュ。ヴィンテージローズの花びらをまとうようなイメージ。

パイソンプリントのリップスティックは、インスピレーションソースとなった素材を用いたバッグを愛用していたこともあって、大のお気に入り。

陶器を思わせるボディと、茜色のマーブルのコンビもエクレクティックな美しさ。

異なる世界線を軽やかに、かつ美しくつなぐ折衷的な視座に、私たちは魅了されてきました。その原点を垣間見れることのできる口紅です。来る6月22日、パリでのメンズショーを最後に、デザイナーの座から引退するドリス。現地に赴くことはできませんが、オンラインでこの口紅をまとい、とっておきのドリスのドレスを着用してその勇姿を見守ろうと誓っています。