本コラムの第2回目でも書きました、セルジュ・ルタンスの話です。資生堂、ザ・ギンザのリニューアルオープンに合わせて、同店地下1階にセルジュ・ルタンス発のフラッグシップストアがオープンしました。住所は銀座の5丁目。新たなビューティーサンクチュアリの誕生です。
さて、お店のことは、一度話出すと永遠に終わらないので一度置いておいて(元々セレクトショップだった話とかしたい…)、セルジュ・ルタンスという人のお話を。実は、というか当然というべきか。ルタンス本人に会ったことはこれまで一度もありません。現在モロッコを拠点に創作活動に勤しんでおり、あまり公の場に姿を表すことがないというルタンス氏。過去に取材したことがあるという先輩のジャーナリストや、資生堂の広報の方の話を聞く限りでは、かなり小難しそうな人、というのがあらかたの印象です。
なんでも、自分が作り出した作品について多くを語ることを嫌う彼は、フレグランスの世界で多く用いられる、いわゆるコンポジションと呼ばれる香りの構成を明らかにすることをせず、難解なポエムで返答したりするとのこと。ぶっちゃけ、超めんどくせー!
一方で、それを聞くことで、何故自分がセルジュ・ルタンスという人物にここまで惹かれるのか理解できたような気がするのです。自身の創作と真摯に向き合い、商業主義のトレンドに歯向い、圧倒的なスノビズムと創造力によってのみ雄弁に物語る。彼のファンの多くは、そのめんどくさい性格を含め彼を尊敬し、彼のクリエイションに寄り添い、また心のどこかでこんな風に生きたいという憧れを重ね合わせているのでしょう。
さて、このコラム。毎回原稿が遅れて担当の方に怒られている出来の悪い編集者は、この私です。締め切りを気にせず思うがままに創作に取り組む、なんて自由な生き方は、まだまだ遠い夢の話。お気に入りの「ダチュラノワール」の香りでリフレッシュしながら、週末の締め切りの山に取り組みます。