アルマーニに学ぶ、“コンシステント”という強さ #深夜のこっそり話 #1103

お気に入りの洋服は数多くあれど、ここぞという時に頼りたくなる一張羅、もとい勝負服はそう多くありません。私にとっての勝負服は、ヴァレンティノの刺繍入りジャケット、ジバンシィのフロアレングスのトレンチコート、ホルストンのジャンプスーツ、そして何より勝負時に選ぶのが、アルマーニのスーツです。

エンポリオ アルマーニの2016年春夏のランウェイで発表されたこの1着。ペイズリーと千鳥格子というかなりトリッキーな柄合わせのファブリックなのですが、そこはアルマーニ。実際に着てみると驚くほどシックで、当社比3割り増しでいい男に見える (と期待している) のです。

アルマーニの魅力、それは英単語でいうところの “コンシステント (一貫している)” であること。語弊を恐れず言えば、全くもって良い意味で代わり映えがしないというところです。もちろん、テーマカラーや素材使い、細かなディテールワークは、毎シーズンハッとするほど新鮮なのですが、根幹にある美的感覚、ないし人物像に一切のブレがない。例えば創業当初にあたる70年代のコレクションと、最新のコレクションを見比べても、全く色褪せることなく、今でもモダンに見えるのです。

そのことを、なおさら強く感じたのが、昨日東京にて開催されたジョルジオ アルマーニの2020年クルーズコレクション。アルマーニ氏本人が12年ぶりの来日、重要文化財の表慶館を貸し切ったランウェイショーなど、規格外のスケールにばかり目がいきがちですが、実際発表されたルックを見てみると、気を衒ったデザインはひとつも見当たりません。美しいニュアンスカラーのグラデーション、リラックス感がありながら均整のとれたシルエット、そして眩いばかりの輝きを放つソワレ。どれも “ザ・アルマーニ” なルックばかりで、ある種の安心感さえ覚えました。

余談ですが、以前パリでアルマーニ・プリヴェの取材をした時、PRの方から伺った話が印象的でした。曰く「アルマーニの洋服の役割は、着る人を引き立てること。だから最新コレクションのジャケットと、先シーズンのトラウザーを違和感なく合わせられる」とのこと。足るを知る者は富む、とはよくいったものです。現役最高齢でありながら、変わらずクリエイションと真摯に向き合うジョルジオ・アルマーニ氏の姿を見て、“コンシステント” であることは、時にこれ見よがしなステートメントに勝る強さを持っている、と再確認させられたのでした。ちなみに今回のコレクションで一番着たいのは、生方ななえさんが着用したルック105のフリンジケープです。

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