ある女性編集者が、毎日2回下着を替えると豪語していました。気合の入った仕事用と、リラックスするためのホーム用。これまであまりに疎かったのですが、どうやら女性にとって下着を選ぶということは、重要なステートメントとなりうるようなのです。
考えても見れば、女性向けの下着は、男性向けと比べて格段にバリエーションが豊富なのです。色、形、素材、装飾、ワイヤーの有無…それに対し、メンズのアンダーウェアのバリエーションといえばブリーフかボクサーかくらいのもので、素材や色も似たり寄ったりの地味なモノトーン、もしくは無駄に子供っぽいカラフルなものばかり。個人的にはスパンデックス素材のブラックのボクサーを長年愛用していたのですが、それを選んだ理由も「一番シンプルだから」という安直な理由でした。
かと言って、いかにも勝負下着といった佇まいのレースのブリーフや、まったく下着としての機能を果たしていないGストリングにはなかなか手が伸びない。というか、露骨過ぎて逆に全然エロくない。そうなると、いよいよメンズの下着選びは袋小路です。真のモードラバーは下着まで抜かりなし、と言いたいところですが、選択肢がそもそも少なすぎる故、結局皆と同じシンプルなボクサーに行き着く、というのがこれまでの状況でした。
さて、お待ちかねの本題です。ついに見つけました。個性的で、センスが良くて、ラグジュアリーだけどいやらしくなく、大人の色気を演出できるメンズ下着。見つけました、というか既に話題になっているので知っている人も多いかもしれません。他ならぬトム フォードから発表された、初となるメンズアンダーウェアコレクションです。
そもそもトム フォードがアンダーウェアを発表する、という噂が立ったのは2年前のこと。その後、昨年2月にニューヨークで発表されたメンズの2018年秋冬ランウェイで満を持して登場したのですが、店頭で並び始めたのは昨年の暮れのことです。兼ねてから楽しみにしていたので、新宿の伊勢丹メンズで入荷待ちをしていたのですが、発売直後から一部カラーは品切れ。国内の店舗から取り寄せてもらい、ようやく先日手に入れることに成功しました。
購入したのは、ボクサータイプのコットンブリーフ。プリントや装飾の類は一切なく、ストイックなまでのシンプルなボディ。ウエストには控えめにロゴがあしらわれ、嫌味のないステートメントを演出してくれます。履いていても裸に見えるように、と選ばれたヌードカラーのバリエーションは、一見地味な印象ですが、スキントーンに合わせるとその効果はテキメン。シンプルなのにモード。ラグジュアリーなのに、オヤジっぽくない。そして何より、ベーシックだからこそ際立つエロティシズム。トム フォードのファッションに対する美学が凝縮された渾身のアンダーウェアは、文字通り「究極のメンズ勝負下着」でした。
さて、バレンタインデーが目前に迫っています。チョコレートも素敵ですが、本命の相手にはインティメイトな贈り物を選びたいところ。生憎僕にはトム フォードの下着をプレゼントしてくれる素敵な人がいないので、自分向けにシルクのレオパードを買いに行こうか、と思案しています。
