エシレの青には、ただならぬものを感じます。スカッとつきぬけるような爽快な青。あのロゴが目に飛び込んでくると、頭で考えるよりも先に体が反応してしまうんです。「アデル、ブルーは熱い色」というタイトルの映画がありますが、エシレのそれもかなりアツい。思うに、あれは驚異のブルーです。
伊勢丹新宿店の地下1階といえば、一度入ってしまうと手ぶらでは帰れない甘美おやつの宝庫ですが、そこにエシレバターの焼き菓子専門店「エシレ・パティスリー オ ブール」があります。ここを素通りできたことはまだ一度もありません。このスポットだけ磁場がどうにかなっているんじゃないかと思うくらいです。
その日もまんまと、磁石のようにショーケースに引き寄せされました。そして目にとまったのがひと口サイズの宝石。これは比喩じゃないんです。ブルーのロゴが、一瞬だけど本当にターコイズに見えたんです。
「この可愛らしいお菓子は何ですか?」と前のめりに聞くと、「当店限定のサブレサンドです」と店員さん。サンドという言葉に、たっぷりのバタークリームを連想しないわけにはいきません。しかも肝心なところが包み紙で隠されているから余計にそそられる。
このサイズで1個300円?! と驚愕しつつ、ブール、ラムレザン、ピスターシュの全種類をひとつずつ購入することにしました。サブレを縁どるスカラップ。その2枚の生地の間に収められた、パール粒のようなバタークリーム。360度どこから見ても、お上品でお美しい。
たったひと口でなくなってしまう儚さにしばし胸を打たれ、ひと思いに放り込んだら悶絶しましたよね。バターの濃厚さが別次元をいってます。さすがエシレ! です。バタークリームと名のつくものは世に数あれど、これほどまでに口の中でバターの輪郭をくっきりと感じられるものは他にないと断言できる。しっとり感のある軽いサブレ生地が、なめらかな舌ざわりをいっそう心地よくしてくれます。
我が家のおやつ横取り魔が寝静まった夜10時、じっくりと残りの2種を食べ比べてみました。シンプルにバターの風味を味わえるブールが一番好きだけど、それも全種類食べたからたどり着いた結論。たった3口ですが、その余韻がもたらす幸福感は絶大です。言うてもたかがお菓子、ほんのちっぽけなこと。それでも口にしてみれば、こんな種類の幸せがあったなんて! と気づかされます。
生粋の丸顔。あだ名は餅。長いイヤリングと丈の長いスカートが好き。長いものに巻かれるタイプなのかもしれません。