初夏のとある日、猛暑から逃れるようにして入店したドーバーストリート マーケット銀座。その7階にあるブックスペースBIBLIOTHECAにて、久々にアートブックを衝動買いしてしまいました。アーティスト、リサーチャー、教員の肩書きを持つFemke de Vriesさん著の「DICTIONARY DRESSINGS」です。
厚みのあるさまは、まさに辞書のよう!
SPUR8月号の特集内企画に「ゆるモード言語学」というものがあったのをご存じでしょうか。ゆる言語学ラジオ監修のもと、言語学をファッションビジュアル化するという企画です。知欲をかき立てられる前代未聞の企画に、ファッション表現が秘める無限の可能性を感じ、うずうずしたのを覚えています。そんな矢先に出合ったのが、言葉とファッションをテーマにしたこのアートブックです。
ブラウス、スカーフ、スリーブなど、ファッション用語の定義に基づいた写真や書籍の一説をまとめた、ある種“辞書”のような内容となっています。例えば、セーターの定義が「上体の前にある編まれた衣類」ならば、その定義に添っている “男性が首から垂らしているマフラー” や、 “上体前で蹴り上げられた、ナイキのFlyknitシューズを履いた足” などの写真を類型学的に掲載。どの写真を見ても、明らかに私が知っているセーターではありません。
テキストは英語とオランダ語のみですが、写真を眺めているだけでも楽しめる内容です。
こうなるともはや大喜利の域! 収集された写真のほとんどが、ファッション写真ではなく、出どころのわからない写真の一部を切り出したもの、という点も面白いポイントです。
衣類の実用性や歴史の文脈を汲んだファッション用語の定義から、新たな視点や発見を与えてくれる本書。“温故知新”という言葉があるように、古きものから独自の美や視点をすくい上げ、心震わすアイデアを生み出せるようになりたいものです。
(エディター TAJIKA)
新米エディター。危険ギリギリのラインを攻めた海外一人旅が好き。最近はスパイス料理に沼ってしまい、口内に刺激を求める日々です。