【平成中村座】で歌舞伎のワンダーランドへ! #深夜のこっそり話 #1626

先日、浅草で推し活してきました。浅草寺で上演中の『猿若町発祥180年記念 平成中村座 十月大歌舞伎』です。

浅草寺本堂裏 平成中村座

歌舞伎を観劇することが日常であった江戸時代の芝居小屋を現代に復活させたい、と2000年に中村勘三郎さんが浅草の地に立ち上げた平成中村座。コロナ禍で長らく上演が叶いませんでしたが、満を持して4年ぶりに帰ってきました。浅草寺の本堂裏に仮設の芝居小屋を建て、10月・11月と2ヶ月間上演中です。

【平成中村座】で歌舞伎のワンダーランドへの画像_2

劇場は仮設とはいえ立派な建物ですが、歌舞伎座などに比べるとぎゅぎゅっとコンパクト。舞台と客席の距離が近く、臨場感たっぷり。1階前方は平場に座布団、座席は長椅子で、入り口で靴を脱いで鑑賞するスタイル。芝居小屋全体が活気で満ちあふれていて一体感があり、この独特の雰囲気は、ほかの歌舞伎では味わえません。「江戸時代の芝居小屋は、こんなだったかしら?」と、この3時間だけはタイムスリップ。

私が観劇した日は雨が降っていたのですが、芝居のBGMに雨音が響くのも心地よかったです。(蛙が登場する演目なのでちょうどよかったかも!?)

【平成中村座】で歌舞伎のワンダーランドへの画像_3

劇場内では中村座ならではの遊び心がところどころにちりばめられていて、お手洗いの順番待ちでさえも楽しめる工夫が! その細やかな心配り、さすがです。劇場スタッフの方たちの隙のない導線も、もはやエンターテインメント。

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(以下、これから観劇予定の方はネタバレにご注意ください。)

私が観劇した第二部、『唐茄子屋~不思議国之若旦那』は、宮藤官九郎さん作・演出の新作歌舞伎。浅草を舞台にした落語「唐茄子屋政談」を元に、「不思議の国のアリス」の要素も入った人情喜劇。初っ端から賑やかで楽しい祭りの雰囲気で盛り上げ、かつてコクーン歌舞伎で魅了されたあの演出が! 「中村座はこうでなくちゃ」という荒川良々さんに「全く同じ気持ちです!」と拍手。さらに「お祭り」の演目ではお決まりの名台詞に、観客のボルテージは最高潮に。開始早々ここまで観客の心を掴んでしまう演出と役者たちの力量に、思わずうなってしまいました。

その後もあっと驚くような怒涛の展開の連続で、観ているこちらも息つく暇もないほど。役者たちのエネルギーに圧倒されます。勘九郎さんお得意の圧巻のセリフ回し、獅童さんとの一糸乱れぬかけ合い、勘九郎さんと長男・勘太郎さん&次男・長三郎さんとの入れ替わり、観客との絡み、七之助さんのコミカルな花魁姿など、始終見どころのオンパレード。客席からはあたたかな笑い声が絶えず、「なんてアットホームな空間なんだ!」と感激。まさに歌舞伎のワンダーランドがここにありました。

浅草が舞台なので、帰り道に人通りの少なくなった浅草寺や仲見世を通って帰るのもまた風情。極上の非日常体験となりました。

古典歌舞伎とはまた違った楽しさのある新作歌舞伎。歌舞伎は難しいと思われている方にこそぜひ体感してほしい。歌舞伎の域を飛び越え、新たなチャレンジを続ける中村屋にまたしても魅了された夜でした。11月の観劇も楽しみでなりません!

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エディターYOKOYAMA

カルチャー、SNS担当。今昔を問わず映画が好きで、休みの日はたいてい映画館にいます。ひとりっぷ®ビギナーです。

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