モダニズムの名作【スタンダードチェア】のある暮らし #深夜のこっそり話 #2032

子どもの頃の将来の夢は、編集者ではなく建築家。高校の文理選択で一度は理系に進んだものの、数学のセンスがなさすぎて1年で挫折し、早々に諦めて文系に転向したんです。そんな背景があってか否か、「名作」と呼ばれる建築や家具にはずっと憧れを持って生きてきました。とはいえ、実際の暮らしに取り入れるとなると(値段も張るし)なかなか踏み出せずにいたのですが、1年前の引っ越しを機に思い切って椅子を購入。仕事部屋に迎え入れたのが、フレンチ・ミッドセンチュリーを代表するデザイナー、ジャン・プルーヴェの「スタンダード」チェアでした。

子どもの頃の将来の夢は、編集者ではなく建築家。高校の文理選択で一度は理系に進んだものの、数学のセンスがなさすぎて1年で挫折し、早々に諦めて文系に転向したんです。そんな背景があってか否か、「名作」と呼ばれる建築や家具にはずっと憧れを持って生きてきました。とはいえ、実際の暮らしに取り入れるとなると(値段も張るし)なかなか踏み出せずにいたのですが、1年前の引っ越しを機に思い切って椅子を購入。仕事部屋に迎え入れたのが、フレンチ・ミッドセンチュリーを代表するデザイナー、ジャン・プルーヴェの「スタンダード」チェアでした。

合理的で無駄のない造形美

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三角形の後ろ脚が印象的な、ジャン・プルーヴェの「スタンダード」チェア。座面までの高さは46.5cm。ヴィトラ社の復刻版は¥116,600で販売されています。

椅子に座ったとき、どこに最も負荷がかかるのか。構造力学のもと設計された、言わずと知れたモダニズムデザインの代表作です。荷重の少ない前脚には細いスチールチューブを使い、かかる重さが大きい後脚には太さを持たせて三角形に。スチールの中を空洞にすることで、椅子にかかる重さを床へと逃がす、合理的に考え抜かれた構造になっています。

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座面と背もたれには、木目の美しいオーク材を使用。

硬質で直線的なスチールレッグに対して、座面と背もたれはやわらかな曲線を描くオーク材。異素材を組み合わせながらも、バランスの取れたじつに美しい造形です。どこか学校の椅子を思わせる素朴さがあるのに、非常に洗練されているのが何より魅力的。90年も前に考案されたとは思えないモダンな佇まいに惚れ惚れします。

身体にフィットする、抜群の座り心地

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座り心地も抜群に良く、自宅の仕事部屋で愛用しています。

スタンダードチェアはカラーバリエーションが豊富なことでも有名ですが、タイムレスに使い続けられそうなエクリュカラーを選びました。自宅の仕事部屋で使っている天童木工のテーブルにも違和感なく馴染みます。まさに「スタンダード」の名にふさわしい無駄のないデザインですが、この一脚があるだけで部屋の印象が見違えるんですよ。その圧倒的な存在感に、名作たる所以を日々感じ入っています。

もちろん、座り心地も安定感があって文句なしに素晴らしい。背もたれのカーブが身体に心地よくフィットし、座面が少し後ろに傾斜しているので、もたれた時にすごく落ち着くんです。毎日のデスクワークを支えるスタイリッシュで頼もしい相棒として、これからの人生を共にしたいと思っています。

20世紀を代表する名作家具の展覧会が京都で開催中

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タカ・イシイギャラリー京都で展示されている、ジャン・プルーヴェのスタンダードチェアと「Aile d’avion」デスク。奥にはプルーヴェとシャルロット・ペリアンの共同作「Separation from Africa」も。

ところで、ジャン・プルーヴェといえば、モダンデザインの普及を目的に設立された現代芸術家連盟(Union des Artistes Modernes、略してUAM)のメンバーであったことでも知られています。ル・コルビュジェやピエール・ジャンヌレ、シャルロット・ペリアンなど、当時のフランスを代表するクリエイターたちも同じくUAMに参加していましたが、そんなモダニズムの巨匠たちが手がけた家具の展覧会「Affinités(アフィニテ)」が、タカ・イシイギャラリー 京都で開催されています。

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上下から中心に向かってわずかな台形を描く「スクリーン」パーテーション。その手前に配置されたのは、スクエアテーブルと「Advocate」チェア。すべてピエール・ジャンヌレの作品。

展示されている家具は約50点。そのほとんどが1950年代に製作されたヴィンテージです。中には100年近く前にデザインされた貴重な作品も。どれも時間の経過を物語るヴィンテージならではの趣があり、希少価値の高いものばかり。これだけの点数をまとめて見られる機会はそうそうないので、家具好きならきっと心拍数が上がるはず。

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ペリアンとル・コルビュジエ、ジャンヌレが1929年にデザインした有名なトーネットチェア「Siège à Dossier Basculan」(モデルB301)。

築150年の伝統的な京町屋とフレンチミッドセンチュリー家具との巧みな融合。見事に調和の取れた折衷的な空間は必見です。会期は10月19日まで。京都に行かれる際は、ぜひ立ち寄ってみてください。

 「Affinités(アフィニテ)」
会期:2024年9月14日(土) – 10月19日(土)
会場:タカ・イシイギャラリー 京都
住所:京都府京都市下京区矢田町 123
営業時間:10:00 – 17:30
定休日:日-水・祝祭日
URL:https://www.takaishiigallery.com/jp/

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エディターHAYASHI

生粋の丸顔。あだ名は餅。長いイヤリングと丈の長いスカートが好き。長いものに巻かれるタイプなのかもしれません。

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