この世の全ての"ケナたち"に贈るロードムービー #ケナは韓国が嫌いで #深夜のこっそり話 #2158

予告編を初めて見た時から、絶対劇場で観ようときめていた『ケナは韓国が嫌いで』。本当に観てよかったです。これまでの生活を全て捨て、新たな地で懸命にもがき生きるケナの姿はきっと、疲弊したあなたの心にそっと寄り添い、希望を与えてくれるはず。気づかないようにしてはいたものの常にどこかには存在した、現代社会に対してどうにも消化のできないモヤモヤを抱える全ての"ケナ"へ。一緒に旅に出てみませんか?

決して他人事に思えない、私たちのロードムービー

『ケナは韓国が嫌いで』 フライヤー
「いってらっしゃい」と言いたくもなるし、何かを見透かされているとも感じるケナの目。これがどのシーンなのかは、ぜひ劇場にて確かめて

生きづらい韓国社会に疲弊したケナが韓国を離れ、ニュージーランドで幸せを追求しながら新たな人生を探していく成長物語。

それと並行して、貧困や差別などの問題が、ケナの目に映るものを通し生々しく描写され、それらを決して他人事にさせないというメッセージもこの作品の重要なポイント。随所随所でハッとさせられる「これは紛れもなく私たちの話だ」と思わされる演出に脱帽です。

また、20代後半に差しかかる私にとってケナが同世代というのもあり、共感する場面がとにかく満載で。そんな同世代の葛藤やもがく姿が、この作品につい没入してしまう要因の1つでもありました。例えば、熾烈な競争社会の韓国で、競争力のない自分は、群れからはぐれライオンに捕食され息絶えるトムソンガゼルのようだと悟る、ケナが韓国から抜け出すきっかけになる重要な場面。これは現代の厳しい競争社会で生きる、全ての"ケナ"が身をもって感じているモヤモヤを体現していて、私も思わずケナと一緒に旅に出てみたくなりました。

「ケナの旅立ちフルーツティー」
つい買ってしまった「ケナの旅立ちフルーツティー」

ヒューマントラストシネマ有楽町の劇場にて展開されていた「ケナの旅立ちフルーツティー」。上映開始30分後にはもうほとんどなくなってしまったほど、さっぱりとした味わいで、とても飲みやすく美味しかったです!

"逃げ"続けるケナの姿が1番の希望となっていく

『ケナは韓国が嫌いで』特集記事の展示
劇場には、作品を特集した記事を展示する特別コーナーも

この物語は、ケナにとって地獄のような韓国から「逃げる」という選択をしたところから始まります。しかし、この作品を通して感じ取ったのは、「逃げること」が自分を守る1つの選択肢であり、決して“悪”ではないこと。今の環境が自分を苦しめるのなら、大きくNOを振りかざそう。その結果が逃げることなら何も問題ないし、むしろ勇気ある選択をしたことを讃え、その先の希望に期待しよう。作中にも出てくる、「トップレベルの自殺率」というワード、圧倒的就職難や格差社会が生む若者の死が、「逃げること」への重要性をより浮き彫りにし、日本で暮らす私たちにとっても、決して他人事に思えないほど強く刺さるメッセージの1つでした。

SPUR3月号 チャン・ドンゴン監督へのインタビュー記事
SPUR3月号のインタビュー記事も大きく展示!

上映後には、思わず旅の計画を立ててしまう自分に驚愕

『ケナは韓国が嫌いで』パンフレット
しっかりパンフレットまで買い、余韻に浸っていました

私自身も大学3年の時にいきなり思い立って留学した、という経験がありまして......(笑)。あの時も実は当時の環境を打開し、ある意味窮屈なぼんやりとした日々から逃げ出したかったのかもしれません。でも結果的に正解で、あの選択をしたからこそ、その後も好きな人生を歩むことが出来ているなと感じます。

これが正解! これが答え!という主張を振りかざすのではなく、出会う人、暮らしぶり、そこでのケナの変化を通して、悩み疲れるあなたにそっと肩を貸し、新たな人生のはじめ方を提案してくれる映画です。鑑賞後、旅行計画を立てている自分にも驚きます(笑)。ぜひ、劇場でご覧ください!

今回紹介した作品はこちら!

作品名:ケナは韓国が嫌いで
監督・脚本:チャン・ゴンジェ
主演:コ・アソン
原作:チャン・ガンミョン著 『한국이 싫어서』

エディターKAIプロフィール画像
エディターKAI

主にソーシャル担当。トレンディドラマのベタな展開が好きで、定期的にトキメキを補充。甘酒と韓国ゾンビの虜です。

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