新作〈ヴァイオレット 30〉を
森岡督行さんと前田エマさんの
往復書簡で読み解く
ル ラボのクラシックコレクションに新しく加わった“ヴァイオレット 30”。名前の由来となった可憐なスミレの花のイメージを裏切る、パラドックスに満ちた香り。
この一筋縄ではいかない魅力を共に探求するのは、森岡督行さんと前田エマさんだ。森岡さんは「一冊だけの本を売る」森岡書店の代表であり、文筆家としても活躍。前田さんは、モデル、エッセイストといくつもの顔をもつ。研ぎ澄まされた感性を持つ二人が、往復書簡という形で香りの全貌を解き明かしていく。
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LE LABO
新作〈ヴァイオレット 30〉を
森岡督行さんと前田エマさんの
往復書簡で読み解く
ル ラボのクラシックコレクションに新しく加わった“ヴァイオレット 30”。名前の由来となった可憐なスミレの花のイメージを裏切る、パラドックスに満ちた香り。
この一筋縄ではいかない魅力を共に探求するのは、森岡督行さんと前田エマさんだ。森岡さんは「一冊だけの本を売る」森岡書店の代表であり、文筆家としても活躍。前田さんは、モデル、エッセイストといくつもの顔をもつ。研ぎ澄まされた感性を持つ二人が、往復書簡という形で香りの全貌を解き明かしていく。
矛盾が生み出す、
静かに残る余韻
繊細に佇む白スミレを中心としながらも、そのグリーン フローラルなニュアンスは、ふっと現れては消えていくよう。白茶のノート、そしてシダーウッドやほのかにガイアックウッドが覗き、緊張をはらみながら、均衡へと向かう。
ヴァイオレット 30 オードパルファム 100ml ¥45,650
森岡督行さまへ
先日、ル ラボのヴァイオレットの香水について森岡さんとお話しできたことをきっかけに、あらためていろんなことを考えました。
スミレといえば、幼い頃、近くの川べりなどでタンポポと一緒に咲いているのを、よく摘んだりしていました。人の名前としても使われるし、スミレの砂糖漬けにはどこかロマンティックな印象もあって。
身近に感じられる花だけれど、「どんな香り?」と尋ねられると、口ごもってしまう。 でも可憐で素朴に見えて、生命力を感じさせるような強さもあるという意外性は、この香りの魅力にもなっているんじゃないでしょうか。
森岡さんは、「パラドックスについて考えれば考えるほど、世の中はだいたい逆説的になっていると気付かされる。むしろこの世界の本質みたいなものかな、と考えるようになった」とおっしゃっていました。確かに世界は、矛盾や想定外なことばかりですね。
でも、「話をしてみれば本当はいい人だった」みたいなこともありますから、“裏切る”というのは悪い面ばかりじゃないんだとも思ったのです。
そしてヴァイオレットには、まったく違う意味を持つ花言葉がいくつもあるという話も、面白いと思いました。森岡さんはいかがですか?
前田エマより
花言葉のように、
香りにのせて伝えるメッセージ
人々が秘めた想いを、花に託して紡いだ「花言葉」。ヴィクトリア朝には、直接的な言葉ではなく花を贈ることで、愛する人に想いを伝えていたのだという。スミレのそれは、「謙虚」「誠実」「小さな幸せ」などが代表的。ヴァイオレット 30に使用された白いスミレには「純潔」「素直さ」のほか、シェイクスピアの『ハムレット』に由来する「乙女の死」というものも。
ヴァイオレットは長い歴史を通して、さまざまな——ときに相反する——意味を幾重にもまといながら、人々に愛されてきたのだ。
ヴァイオレット 30 オードパルファム 100ml ¥45,650
前田エマさまへ
先日はこちらこそありがとうございました。
花にメッセージをのせるといえば、花言葉じゃありませんけれど、ひとつ思い出したことがあります。
私は昔、神保町の古本屋で働いていたことがあり、仕入れた本に落丁がないか確認するのは、毎日の仕事のひとつでした。するとときどき、そこに花が挟まれていることがあったんです。
理由はわからないけれど、本の中から突如花が現れると、何かメッセージをいただいたような気分になって。かつてこの本を持っていた人の感性だとか、小さな喜びを大切にしていたんだなとか、きっとこの本に愛着があったんだろうとか、いろいろと伝わってくるんです。
花には確かに、そういう力がありますね。
でも花を摘むというのは、命を奪うことでもあります。
それでいて、その美しさを永遠に封じ込めるみたいなことも、またパラドックスといえるのかもしれない、と考えたりしていました。
森岡督行より
一言では
言い表せないからこそ、
また触れたくなる
「香水を日常的には使わず、自分にとって特別なときだけにまといます。一瞬で気分を変えられるのは、香りならではだと思う」という前田エマさん。そんな前田さんの繊細にして鋭い嗅覚と心がとらえた、ヴァイオレット 30のさらなる一面とは——。
ヴァイオレット 30 オードパルファム 100ml ¥45,650
森岡督行さまへ
ヴァイオレット 30は私にとって、どんな香りだったのかを言葉で伝えるのが難しく、それだけでなくパッと思い浮かべにくい。そんなところに心惹かれます。
たとえば薔薇だったらみんながなんとなく想像できて、香りの共有もしやすいと思うんですけれど、そうはいかない。
とても印象的であり、決して弱くはないし、嗅げば「ああ、これね」とわかる。けれど「思い出して」といわれても、ふわふわと自分の中から飛んでいってしまうような香り。
でもそれこそが、ヴァイオレット 30の魅力そのものだと思っています。
とても魅力的だけれど形容しにくい人っていますよね。そういう人には、もう一回会いたくなる。人間も、香りも、そんな存在に惹かれます。
この香りも一筋縄ではいかなくて、思い出したいからまた触れたくなる、みたいなところがあるんです。
よく、香りから誰かを思い出すというけれど、ヴァイオレット 30はもっと複雑というか、そんなに簡単じゃない気がしました。
このフレグランスから想像されるのは、飾り気がないけど美しくて、自然体だけれどカッコよく、センスがいい人——。
とても素敵な香りで、気に入っています。
前田エマより
ささやかな幸せに
気づくきっかけとして、
この香水を贈りたい
「スミレってどんな花だっけ? と思って検索してみた」ほど、「スミレという存在を気にかけたことがなかった」という森岡督行さん。小さなものへの気づきこそが幸せへと導いてくれるのかもしれない、とも語る森岡さんが、ヴァイオレット 30を贈りたい相手とは。
ヴァイオレット 30 オードパルファム 100ml ¥45,650
前田エマさまへ
この香りを、前田さんはとても気に入ったのですね。
いい出合いだったようで、何よりです。
私はそもそも、スミレがどんな花だったかすら、忘れていたんです。 至るところに咲いているという話なんですけれども、意識したことがなくて、そういえばこんな花だったね、という感じでした。
でもだからこそ、小さな豊かさに気づくきっかけになるんじゃないかな、とも思いました。
そんなわけで、私はこの香りを、春から新生活を迎える方に贈りたい。
私自身、スミレの存在に気がついていなかったわけです。けれど、こんなにきれいなものがすぐ傍らにあることを、ヴァイオレット 30に教えてもらったような気がします。
この世の中、小さな幸せはすぐ身近にある。それに気づくことが確かな幸福につながるんじゃないかと。
まだまだ寒い毎日ですが、私は2月のキリッとした空気や光の具合がけっこう好きなんです。
スミレが咲く季節も、着実に近づいていますね。
ガイアックウッドの力強さも秘めた、凛としたヴァイオレットとともに、素敵な春を迎えられますように。
森岡督行より