2020.03.18

エリカ・リンダー × リエ・オオモトのビューティ・トーク。これからの美しさって何だ?

ジェンダーも年齢も超えて、自分の感じる美と心地よさを大切に。THREEを率いるアーティストと長年のミューズが語る、愛とサステイナビリティ意識があふれる新時代のビューティ談義。

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Erika Linderモデル、俳優。アンドロジナスな魅力で知られ、デビュー当時は「レオナルド・ディカプリオの再来」と話題に。メンズとウィメンズの垣根を越えて、幅広いファッションを着こなす。2018年からTHREEのビジュアルモデルを務める。

Rie Omotoメイクアップアーティスト、THREEグローバル クリエイティブ ディレクター。日本からロンドンへ渡ったのち、パリを経てNYに拠点を置く。豊かな感性をモードに昇華。内なる美やニュアンスを引き出すクリエーションが人気。

美容はクリエイティブで心地よいものと気づかされた

既存のジェンダーの枠に収まらないモデルとして、ランウェイやフォトシューティングだけでなくMVや映画の世界へと活躍の幅を広げるエリカ・リンダー。リエ・オオモトは5年前にエリカと出会って以来、「いつかTHREEのミューズに」と願ってきたという。

リエ 当時のエリカはまだ若くて、さなぎからかえった蝶がまさに羽を広げようとしているような時期だった。ハビエル・ドーラン、ジム・ジャームッシュ、ニック・ケイヴにニック・ドレイク……映画や音楽の話で盛り上がって、大笑いしながらの現場だったよね。
エリカ アーティストは、シリアスになりすぎず、楽しむことが大切。私たちはユーモアのセンスやひねりのポイントも似ていて、最初からつながりを感じることができたのを覚えてる。
リエ もしかしたら、前世で会ってたかも!と思うレベルにね。ただ、THREEはビューティブランドだから、ビジュアルモデルをお願いするならメイクアップがマスト。だから、メンズモデルとしてキャリアをスタートしたエリカが、自分の中のフェミニニティを自信を持って表現できるまで、機が熟するのをずっと待っていたの。
エリカ 確かに、5年前だったら難しい仕事だったかもしれない。いろいろな仕事や出会いを通して、自分の中にある女性性を少しずつ受け止めることができるようになったから。ずっと美容にもメイクアップにも関心がなくて、メイクアップをしたら、自分じゃなくなってしまうような気がしていたから……。
リエ 私も12歳までスカートをはいたことがないボーイッシュな子どもだったから、自分らしくない装いが、どんなに居心地が悪くて背中がもぞもぞするものかわかるんだ。
エリカ リエは、なぜこのネイルを塗るのか、なぜこのメイクアップなのか、丁寧にオープンに意図を説明してくれるから、THREEの仕事を通してメイクアップがクリエイティブで心地よいものだと受け入れることができた。キャリアの上でも、個人的にも新しいドアを開くことができたと思う。
リエ エリカがプライベートでネイルやアイシャドウを塗るなんて、以前は想像がつかなかったよね。
エリカ 最初のオファーのとき、リエはTHREEのプロダクトと一緒に長いラブレターを送ってくれたじゃない? 涙が出るほど熱い思いがあふれる手紙に、スパのチケットも添えてね。あれを読んだら、ノーと言えるわけがないから、リエは魚釣りが上手(笑)。手紙は今でも大切に取ってあるよ。
リエ エリカからは、「ジャックとボーイ(リエ氏の愛犬)を連れてこい。じゃないと仕事場に行かないよ(笑)」なんてリクエストがきたりして、現場はとても和やか。二人とも負けず嫌いだから、オフの時間に卓球をやったときも全然勝負が終わらなかったよね。
エリカ 私たちは、楽しみながらベストを尽くすことができる、最高のプロフェッショナルチーム!

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アイシャドウを塗る習慣がなかったエリカが、「受け入れるきっかけになった美しいブルー」。THREE ディメンショナルビジョンアイパレット 07のHIDDEN PLACE(中央)

普段からサステイナビリティを意識したライフスタイルを選ぶ二人。「野生動物や女性の置かれている状況を伝えるドキュメンタリーに出演したんだ」(エリカ)、「ニューヨーカーの間ではリサイクル意識が高まっていて、エコなトイレットペーパーを使うとか小さなところから自分にできることを工夫している」(リエ)

その人がどんな人かは、見かけより「愛」で決まる

リエ アイスランドでショートフィルムを撮ったときは、四方八方から風雨が叩きつけて、足の感覚がなくなるくらいの未体験の寒さ。エリカはそんな中でもギブアップしないで、ちゃんと演じていた。撮り終わってから落ち着いて細かいところをチェックしても、よくぞここで、こういうふうにしようと思ったよなって驚かされることばかり。あなた、やっぱりただ者じゃないね。しかも、それを自慢しないんだもん。
エリカ 私、シャイなんだ。それに、もともとスウェーデン人は地に足が着いた謙虚な国民性なの。私がどんな仕事をして何を成し遂げようが、周囲の人たちは気にも留めずに普通に接してくれる。今の私にとって、それがどんなに素晴らしいことか。どんな仕事をして、どれだけ稼いで、誰と出かけるか。それは、自分を定義するものでも、人間の価値をつくるものでもないから。その人がどんな人であるかを決めるのは、見かけではなく、愛だと思う。
リエ 本当にそのとおり。ところで、エリカがこの仕事を通して伝えたい、美しさって何? 美を表現する側として、これからの美しさってどういうものだと思ってる?
エリカ OMG、なんて答えたらいいかな……つまりそうだなぁ、自由ってことかな。それぞれの人が、自分にとっての美しさのビジョンを自由に持てたら最高だと思う。何が心地いいか、何を美しいと感じるかって、常に変化するものだから、変化を恐れずに、その時その時の自分自身に正直であるということが大切だと思う。私自身、5年前にリエと会ったときから何を美と感じるか、すごく変わってきているからね。
リエ そうだね、自分にとって何が心地よいかを大切にしてほしいね。誰かに「何あれ !?」って眉をひそめられても、美というのは個々人のものだからそれでいいんだよね。日本では女性が年齢や立場を気にして自由に装えない文化がまだまだ根強いんだけど、みんなにもっと自由な発想で自己表現してほしい。THREEは自分に自信を持つことを応援するブランドでありたい。
エリカ THREEはオーガニックのブランドで環境に対する意識が高いところも素晴らしいと思う。私は、ACCF(アフリカコミュニティ&保護基金)の大使として、野生動物や女性をサポートする活動をしたり、モード誌のサステイナビリティ特集に携わっているの。世界で起こっていることへの認知を高め、サステイナビリティを訴えることに手ごたえとやりがいを感じてる。
リエ サステイナビリティは、ファッションやビューティの業界も含め、地球規模で無視できないムーブメント。THREEでも、発表会で極力プラスチックを使わないようにしたり、ペーパーバッグの工夫をするなど、できることをするようにしているんだ。NYで仕事していても明らかに空気が変わっているのを感じる。仕事の香盤表に「撮影現場には、紙コップもペットボトルの水も用意しないので飲み物は持参すること」と注意書きがあるし、仕事場には、マイボトルとフォークとナイフ、マイ箸を持っていく。自分への愛も、世界への愛も大事だよね。

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ユーモアのセンスが合う二人は、トークも息ぴったり

エリカ・リンダーへの27の質問

SOURCE:SPUR 2020年4月号「これからの美しさって何だ?」
photography: Wakaba Noda〈TRON〉 interview & text: Anna Osada

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