家で過ごす時間が増え、多くの人のライフスタイルが様変わりしたこの1年半余り。ただ置いておくだけで"絵になる"コスメティックスの需要が急速に高まっている。目を楽しませて心を豊かに満たす、化粧品の新たな存在意義を感じて
日本に初上陸するCOLEKTの革新
1 自然由来の抗炎症成分を採用し、目もとをエナジャイズ。
COLEKT クレススプラウト アイバーム(15㎖)¥15,950
2 ライスエキスが肌のバリア機能を高める。同 オークルート フェイスオイル(30㎖)¥30,800
3 大気汚染物質から肌を保護する効果が。同 エルダーツリー フェイスミスト(50㎖)¥14,520
4 エルダーベリーのエキスを配合。メイクオフしながら肌を活性化できる。同 ウィッチヘーゼル フェイスクレンザー(100㎖)¥12,650
5 バクチオールのエキスが肌荒れを予防。同 バクチオール フェイスバーム(50㎖)¥19,800〈すべて10月発売予定〉/エドストローム オフィス
「Acne」によるデザインがビューティとモードの架け橋に
「Acne Studios」を擁するクリエイティブエージェンシー、「Acne」社のデザインチームがパッケージを手がける「COLEKT」が、この秋日本に上陸する。アートやファッション、建築、北欧の風土から着想を得たヴィーガンスキンケアへの想いを、創業者のエレン・アフ・ピーターセンズさんとスザンヌ・ヴェナーストランドさんに聞いた。
「『Acne』のデザインチームとの仕事は2018年から。密な連携のもとに行なったのは、ブランドのアイデンティティを明確にして将来的なビジョンを再確認することでした。アーティスティックで遊び心のあるロゴと、サステイナブルで魅力的、かつエレガントなパッケージを目指しました。洗練されたライフスタイルを好み、ジェンダーフリーなマインドを持つ現代の消費者のニーズにこたえるデザインとなるはずです」
芸術性に優れたボトルは同時に機能性も併せ持つ。特徴的なマットグレーのカラーは光を遮断し、有効成分や処方の変質を防ぐことが可能だ。
「この“COLEKT Gray”は複雑な製法を経てつくられた、いわば自然由来の防腐剤。アウグスト・ストリンドベリによる、ストックホルム諸島の絵画にインスパイアされています。私たちのクリエーションの源は緑豊かなスカンジナビアの大地にある。その豊かな自然を守るため、環境に配慮した方法で天然成分を採取し、同じ思考のサプライヤーと協力してリサイクル可能なボトルをつくるなど、さまざまな取り組みを行なっています。クリエイティビティもサステイナビリティも自らの意志で選ぶことができる。そんなメッセージを込めて」
Ellen af Petersens & Susanne Vennerstrand
豊富なコピーライティングの経験を持つエレン・アフ・ピーターセンズ。150年以上の歴史を誇る寝具メーカー「ヘステンス」でPRを務めてきたスザンヌ・ヴェナーストランド。二人のクリエイティブディレクターが環境や社会に配慮した長期的なブランドの創造を目指し、「COLEKT」を創業した。
美容の常識を変えたBAUMの挑戦
6 樹木の貯水・成長・環境防御の3つの働きに着目。90%以上を自然由来成分で構成するスキンケアは、森林浴を思わせる香り。濃密な化粧水の容器には、一部植物性PETを採用。ハイドロ エッセンスローション(150㎖)¥7,150
7 オイルとエッセンスの2層で、ベタつかずしなやかな柔肌に。モイスチャライジング オイル(60㎖)¥8,800
8 メルティタッチのクリームが隙なく密着し、つややかな素肌に導く。モイスチャライジング クリーム(40g)¥8,800
9 リサイクルガラスを使用したコロンに新たな調べが登場。ローズマリーやユーカリのトップが、ローズやバイオレットの甘い花々へと移りゆく。オーデコロン 3シンフォニー オブ ツリー(60㎖)¥11,000/BAUM
新時代のスキンケアを考えた、木と化粧品のコンビネーション
水に濡れる機会の多いスキンケアボトルに木材を使う。無謀とも思える挑戦を成功させ、昨年の発売時に大きな話題を呼んだ「BAUM」。
「“樹木との共生”を掲げたブランドのコンセプトに加え、SDGsの観点から、レフィルを入れ替えて長く使える木のパッケージをつくりたいとのオーダーがありました。そこから家具製作の過程で出る木の端材を使うことを思いついたんです」
プロダクトデザインを手がけた熊野亘さんが目をつけたのは、愛知県の老舗メーカー「カリモク家具」。寸法が決まっている家具づくりにおいて、大量の端材が生まれることは避けられない。それらをうまく活用できたなら、デザイン性を追求しながら自然環境を守ることにもつながると考えた。
「ただ、湿気などで膨張しやすい木とプラスチックをどう組み合わせるかなど、課題はいろいろとありました。幸いだったのは、カリモク側もこのサステイナブルな試みに強く共感してくださったこと。通常の家具製作ではありえないレベルで工場の衛生管理を徹底するなど、全面的な協力のもとに課題をひとつずつクリアしていきました。含水率が低くて変形しにくい木の端材も、化粧品のボトル製作には適していた。これはカリモクの素材へのこだわりのたまもので、チームでなければなしえなかったプロジェクトだと痛感しています」
スキンケア直後の油分を含んだ手でさわっても、それが木になじんで自分だけの“味”になる。家具の世界では好まれない継ぎ目ですらも、ひとたび化粧品のパッケージになれば唯一無二の表情と捉えられて愛着が湧いてくるから不思議だ。
「家で過ごす時間が増えると、化粧品を洗面台以外の場所で使う機会も出てくる。多様なライフスタイルに合わせ、リビングやダイニングにも溶け込むデザインを目指しました。デザイナーはものをつくるのが仕事ですが、商品が飽和状態にある今、新たなものを生み出すことには責任を伴います。末長く愛されて新たな価値観を導ける。そんなクリエーションを続けていきたいですね」
熊野 亘
ヘルシンキ芸術大学(現アールト大学)の大学院を卒業後、帰国し「Jasper Morrison Tokyo Studio」のアソシエイトデザイナーに。2011年にオフィス「kumano」を設立し、インテリア、家具、プロダクトのデザインを幅広く手がける。北欧での経験から自身もサステイナブルな暮らしを積極的に実践。
パッケージで選ぶベストデザイン
1 BYREDO
左右非対称で歪曲した彫刻のようなシェイプ。前代未聞のアイパレットがモードラバーの心を虜に。メタリックやグリッターが際立つ写真のカラーは、ミュージシャンのイヴ・トゥモアのアヴァンギャルドかつサイケデリックなスタイルへのオマージュ。開けても閉じても、"映える"ことは確実だ。
バイレード アイシャドウ サイオマンサー¥9,790/エドストローム オフィス
2 miu miu
4種ずつある上下のケースと香りを自由にカスタムできる画期的なフレグランス。過去のコレクションからアールデコのパターンや黄色いデイジー、小猫柄などをピックアップした。心ときめく組み合わせを見つけて。
ミュウミュウ レ ゾー アラモード オードトワレ 全4種(50㎖)¥10,780・同 トップケース 全4種 ¥2,310・同 ボトムケース 全4種 ¥2,090/ブルーベル・ジャパン
3 Hermès
「形がオブジェを機能的かつ詩的なものにし、日々手に取りつつ、そっとしまっておきたい、そう思わせるのです」。ピエール・アルディがプロダクトデザインを手がけたエルメスの口紅。それは何げないしぐさもドラマに変えるデザイン性と計算された機能性を兼ね備えている。メゾンの精神が貫かれた逸品。
ルージュ エルメス ルージュ ア レーヴル サティネ 85 ¥7,920/エルメスジャポン
4 OFFICINE UNIVERSELLE BULY
アンティークの蛇口のようなキャップは、ビュリーのひそかなベストセラー。チューブにつけると立てて置くことを可能にし、使い勝手や収納のしやすさを高めてくれる。写真のシアバター配合のフェイスクリームのほか、歯磨き粉やハンド&フットクリームにも取りつけできる。
ポマード・ヴィルジナル(75g)¥6,050・ロビネ・キャップ¥1,100/オフィシーヌ・ユニヴェルセル・ビュリー
5 ZARA BEAUTY
ファビアン・バロン率いるクリエイティブエージェンシー「Baron&Baron」がデザインを担当。「ZARA」のタイポグラフィ"Z"になぞらえた、詰め替え可能なパッケージを完成させた。写真のチークとイルミネーターのトリオのほか、6色のアイシャドウも同じ容器に収納可能。気分に合わせてコスメティックも衣替えを。
フェイスパレット ATURE BLUSH¥3,590(セット価格)/ザラ カスタマーサービス
6 hince
セミマットな薄膜仕上げを連想させるテクスチャーのボトルは、汚れや指紋がつきにくいのがうれしい。球体のキャップは手にぴたりとフィットし、人間工学的にも気持ちのいい形を追求した。汗や湿気はもちろんこすれにもめっぽう強い、マスクプルーフ処方。
SPF30・PA++。セカンドスキンファンデーション全5色(40㎖)¥4,290/hince
7 FRAMA
ホテルや商業施設のインテリア、家具や照明のプロデュースなどを行うデンマークのデザインスタジオ「FRAMA」。2016年に誕生したアポセカリーコレクションは、歴史的な薬局「St. Pauls Apotek」の佇まいに着想を得た。天然のエッセンシャルオイルを用いた香りのディレクションも特徴的。
(右)シャンプー(375㎖)¥7,040・(左)コンディショナー(375㎖)¥7,700/FRAMA JAPAN
8 SHAQUDA
江戸時代から受け継がれる熊野筆のクラフツマンシップとモダンなデザインを融合したブラッシュブランド。肌に適度な圧をかけて繊細に洗い上げる洗顔用ブラシや小鼻用のクレンジングブラシなど、かゆいところに手の届くプロダクトが続々。それらを見せながら美しく収納できるトレイとソープディッシュとのセットはおしゃれなインテリアの一部に。ソープは別売り。
シャクダ スーヴェ クレンジングブラシセット¥18,150/瑞穂
9 to/one
"花を育てるように肌を愛しむ"。そんな想いから生まれた、フラワーベースをイメージしたボトル。丸いフォルムとやわらかなブロッサムベージュの色合い、ソフトマットな質感はきめ細かな肌を想起させ、お手入れへのやる気を呼び覚ましてくれる。ローションとミルクもあるので、ラインで揃えて飾りたい。
モイスチャー クレンジングミルク(M)(150㎖)¥3,080/トーン
10 Waphyto
スキンケアとボディケア、ヘアケアのボトルは一品ずつ異なる色彩を持つ。けれどトーンが揃っているので、並べたときも美しく調和する「ワフィト」のプロダクト。再生プラスチックを優先的に使用し、使用済みの容器は店舗で回収するなど、環境に負荷をかけない取り組みを実施。フィトテラピーの進化を素肌で味わって。
(右)レジェナ フェイシャルミルク(120㎖)¥6,600・(左)同 トナー(145㎖)¥5,500/Waphyto
SOURCE:SPUR 2021年10月号「2021年、化粧品をインテリアにする」
photography: Yuki Saito 〈LATERNE〉 styling: Takashi Imayoshi edit: Yukiko Ogawa