“赤の魔術師”が「恋の予感」を形にしたら? 【BYREDO(バイレード)】のルチア・ピカにインタビュー

「待ってました!」 そのニュースが飛び込んできた時、SPUR編集部でも期待と喜びの声が上がった。“赤の魔術師”と呼ばれるメイクアップ アーティスト、ルチア・ピカが、バイレードのクリエイティブイメージ&メイクアップパートナーに就任したのは2022年の3月。この1月に発売された新メイクアップコレクション『First Emotions』も好評なルチアに、バイレードとの出合いや、クリエイションへの思いについて聞いた。

喜怒哀楽。全ての感情をクリエイションで表現したい

“赤の魔術師”が「恋の予感」を形にしたらの画像_1
バイレード クリエイティブイメージ&メイクアップパートナーのルチア・ピカ

——そもそも、バイレードでクリエイティブを担当することになったきっかけは?

「ベン(バイレードの創設者兼クリエイティブディレクター ベン・ゴーラム)から、直接コンタクトがあったんです。彼のクリエイションやデベロップには以前から興味を持っていたので、楽しいことができるんじゃないか、という予感は最初からしていました。実際に会ってみたら、すぐにお互いが分かり合える、共通の言語を見出すことができて。その予感は確かなものになりました」

——おふたりの共通言語とは?

「私もベンも“感情豊か”というところが、すごく大切な共通点。ビューティの業界に20年以上いますが、さまざまな感情を思い通りに表現するというクリエイティブに携われる機会は、なかなかないんです。でも、ベンはエモーションを重視するタイプだから。彼が率いるバイレードでは、存分に感情を形にすることができて、とても幸せです」

バイレード アイシャドウ
2023年春のメイクアップコレクション『First Emotions』。

——創作において、最も大切にしていることは何ですか?

「ストーリーです。例えば、コレクションのテーマを自分なりに掘り下げた時に、“こういうことだろうか?”と、いろんな角度から、深く追求します。色や質感はもちろん、パッケージにいたるまで、そのストーリーに沿う形に作り上げることを意識しています。あと、私の代名詞でもある“色”の使い方、とりわけ赤は重要ですね。人の肌にただの赤を塗っても馴染まない。私の赤は、必ず茶色がベースになっています。そのベースがあるからこそ、肌の色に馴染んで、美しい色を表現できるんです。そういった色の研究を重ねて、ストーリーと美しく共鳴させることを大切にしています」

ルチアが手がけた『First Emotions』のメージビジュアル
ルチアが手がけた『First Emotions』のイメージビジュアル

——今回のコレクションテーマ『First Emotions』のインスピレーション源は? 

「私自身、生きていく上で重んじていることは、人と会った瞬間に湧き上がる感情です。それは“ウマが合わない”と思うことかもしれないし、逆に、ドキドキしたり、ときめいたりすることかもしれない。いろんな感情が湧くということを、とても楽しんでいるんです。それを『作品に反映することができないだろうか?』と、ベンに話したことがきっかけで、『First Emotions』というテーマが決まりました。バイレードには『ミックスト エモーションズ』という香水がありますが、香りは手で掴めないし、体にまとっても、ビジュアル化はされないもの。今回はそのエモーションを目で見える形で表現したいと思ったんです」

自分の気持ちを、色で残しておくことも

“赤の魔術師”が「恋の予感」を形にしたらの画像_4

——感情を可視化することは、とても難しいですよね? どのように、形にしていくのですか?

「具体的に説明するのは難しいのですが……。例えば、今回のコレクションでとても気に入っている製品に、バーガンディのアイライナーとマスカラがあります。これを使えば、アイシャドウをつけなくても、誰もが見惚れてしまうような目もとになれるんです。それは、色が持っている強さや、エモーションな部分によるもの。でも、それだけでは感情の表現は完結しなくて。もっとハッピーな気分でナイトアウトしたい時にはゴールドのような煌びやかな色が、逆に泣きたい気持ちに寄り添うには、もっと淡い色が必要です。つまり、常にハッピーで、“こうありたい”という気持ちになれる色だけを詰めるのではなく、誰もが人生で感じるさまざまな感情、豊かな喜怒哀楽全てを表現したいと思っているんです」

“赤の魔術師”が「恋の予感」を形にしたらの画像_5
ルチアが気に入っているという、バーガンディのライナー。カジャール ペンシル アンビヴァレント ¥4,620〈限定品〉/エドストローム オフィス(バイレード)
“赤の魔術師”が「恋の予感」を形にしたらの画像_6
目もとに優しさを宿す、深いバーガンディ。マスカラ ミックスト エモーションズ ¥6,490〈限定品〉/エドストローム オフィス(バイレード)

「そんな、あらゆる感情を表現する方法は、生まれてから今まで経験したことと密接に関係しています。カフェでたまたま見かけた人からインスピレーションを受けることもあるし、素敵な花のブーケをいただいた時、自分の中に湧き上がる感情にヒントがあることも。だから、日常で感じるありとあらゆることを、常にいろんな形で書き留めるようにしています」

――いろんな形ということは、テキストだったりイラストだったり?

「はい、義務感ではなく、自然にそうしてしまっているんです。テキストで書き留めることもあるし、その時の感情を色で残しておくこともあります」

“赤の魔術師”が「恋の予感」を形にしたらの画像_7
グラデーションもつけやすい、クリーミーなテクスチャー。アイシャドウ 5 ステート オブ エモーションズ ¥9,790〈限定品〉/エドストローム オフィス(バイレード)
¥6,820/エドストローム オフィス(バイレード)
どんな肌のトーンにも似合うように計算し尽くされた色。リップスティック トランスポーテッド¥6,820〈限定品〉/エドストローム オフィス(バイレード)

——最後に、今回のコレクションアイテムの上手な使い方を教えてください。

「日本人は目のシェイプが特徴的ですよね。それをいかして、バーガンディのアイライナーで目尻を強調するようにラインを入れ、そこに濃いめの色のアイシャドウを重ねて陰影を出すと、より魅力的に見えると思います。ボルドーのリップは、きっちり唇の輪郭をとらずに指でラフに抑えるようにつけると、花びらが開いているような印象になって素敵です。それから、私は口紅をチーク代わりに使っているのですが、ぜひ、その方法もトライしてみて。指でトントンとのせると、色の強弱も調整しやすいですよ」

エドストローム オフィス
https://www.byredo.com/
03-6427-5901

ルチア・ピカプロフィール画像
メイクアップ アーティストルチア・ピカ

2008年より、フリーのメイクアップ アーティストとして、数々のファッション誌、広告キャンペーンなどでキャリアを重ねる。2015年から6年間、シャネルのグローバル クリエイティブ メークアップ&カラー デザイナーを務めた。2022年よりバイレード クリエイティブイメージ&メイクアップパートナーに。

FEATURE
HELLO...!